第17話 解明のためのヒント
「……さて、どうしようか」
部屋に一人取り残された想推は、これからどのように調査をするのかを考える。
(先生の言葉の意味は、現在の九能貴幸もそうだが過去の彼についても調べろ、というものだろうな。現状推測でしかないけど、過去に彼が何かをしたから今の僕に聖痕が現れなかったのだろう)
現在の九能貴幸については調べるのはそう難しくないだろうが、過去の彼についてはどう調べようか、悩む想推。
(彼の出身校とかがわかれば、アルバムなどから過去が判明するかもしれない)
その手掛かりを得るために、まずは現在の九能貴幸について調べることにした。
とはいえ、闇雲に調べようとしてもわからないだろう。
だが今の想推には九能家に関しての情報源がある。
(歌非人さんなら、何か知っているかもしれないな)
まずは歌非人に連絡することにした。
連絡した結果午後なら予定が空いているとのことで、早速本日会う予定をたてた。
貴幸についての情報もある程度仕入れてくれるようなので、それを元に調査を進めることにした。
「これは案外早く調査が終わりそうか……?」
まだ歌非人からの情報も確認していないのに逸る想推。
「まだ油断するのは早いよな……」
気を引き締め直したところで、時間まで何をするか考える。
「とりあえず知理さんにも連絡しておくか」
これまで調査を手伝ってもらったので、今後も協力してくれるかは別として彼女にも連絡をしておくことにした。
するとこれ以降も迷惑でなければ手伝うという旨の返信が来る。
一瞬どうするか考えたが、ここは好意に甘えることにした。
そして時間になり、想推たちは歌非人と待ち合わせたファミレスへと向かった。
既に歌非人は席についており、テーブルに様々な資料を並べていた。
「やあお二人とも」
「本日はありがとうございます」
「君には僕の調査に協力してもらったからね、僕も君に協力しようと思うんだ。早速だけど調査した結果を並べてみたから順に確認してみてくれ」
想推は歌非人に貴幸が生まれてから現在に至るまでの経歴を調べてもらうように頼んでいた。
資料を確認してみると、確かに彼の出身校などが詳細に記されていた。
「すごいな、これは……」
有益になりそうな情報から知らなくてもいいのではないか、と思うような情報など様々なものがある。
ざっと目を通していた想推だが、ふと気になる項目を見つけた。
それは貴幸の女性遍歴についてだった。
決して貴幸がどのような女性と交際していたのかが気になったわけではない。
そこに書かれていた名前に見覚えがあったのだ。
「大学時代に北條美晴という女性と交際していたことがあった……?」
「この名前って、想推くん……」
想推も知理も、この名前に見覚えがある。
それもそのはず、二人の友人である北條美幸の母親だからだ。
「その女性とは大学在学中の半年ほど交際していたようだよ」
「……」
歌非人の言葉が耳に入っていたのかどうかはわからない。
それよりも想推にはある答えが頭の中に浮かんでいた。
「まさか、そんなことがあるのか……?」
想推は陣内に言われた通り、これまで得た情報を頭の中で整理し、考えてみる。
だが何度考えようと、辻褄があって納得がいく答えは一つしかなかった。
「歌非人さん、お願いしたいことがあるんですが、いいですか?」
「僕にできることならなんでも」
「ありがとうございます。知理さんにも手伝ってほしいことがあるんだけど、いいかな?」
「そりゃもちろん、じゃなきゃ一緒に来た意味がないからね」
二人とも想推に協力してくれるようだ。
「ありがとう。じゃあ早速行動開始だ!」
最後の詰めとして、想推たちは活動開始した。
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