第16話 最後の謎

 翌日、歌非人から鑑定の結果が届いた。

 想推はそれを元に報告書を作成し、ちょうど今日帰ってくる陣内に提出する予定だ。


(これで僕の出生については証明できるはず……)


 DNA鑑定結果まであるのだから、揺るぎない事実であることは確実だろう。

 どこか胸に不安を抱きながらも、想推は陣内の帰りを待ち続けた。


 そして夜になり、陣内が探偵事務所に帰還した。

 既に水野は退勤しているので、出迎えるのは想推一人だ。


「おかえりなさい、先生」

「おう、ただいま。それでどうだ、調査結果の方は」

「はい、これです」


 想推は報告書を提出した。

 陣内は帰宅早々その書類に目を通し、内容を確認する。


「なるほどな、これがお前の出した結論か」

「はい。以前先生は答えを知っていると言っていましたね。僕の調査結果は先生の答えと一致していますか?」

「うーん、まあ概ね正解ではあるが、大事なところが欠けているな」

「大事なところ?」


 それは一体何なのだろうか。


「ああ、お前が九能家の子供だったとして、ではなぜお前には聖痕が現れなかったのか、その理由がこの報告書には書かれていない」

「いや、そんなのわかるわけないじゃないですか。神のみぞ知るってやつですよ」

「そんなことはないぞ。少なくとも、現代の科学で証明できる理由がある」


 その口ぶりから、どうやら陣内は想推に聖痕が現れなかった理由を知っているようだ。


「……先生は答えを知っているですね?」

「当然だ。でなければお前に調査をさせはしない」

「それは僕でも頑張れば解明できる理由なんですか?」

「ああ、お前の身の回りを見てみろ。ヒントは何気ない日常に落ちているぞ」

「日常……」


 想推は考えてみるものの、心当たりはない。


「まあ、今すぐに答えを出せとは言わない。また明日からゆっくり考えるといいさ。私も疲れたからもう寝るとしよう」


 そういって陣内は部屋から出ていった。




 翌日、陣内は再び想推に尋ねた。


「で、どうだ? やる気になったかな」

「……本当に僕に解明できるなら、やりたいです」

「よく言った。では少しヒントを上げようか」


 陣内は一枚の写真を取り出し、想推に見せた。


「九能貴幸を調べてみるんだ。謎を解く手がかりはここにある」

「九能貴幸……」


 彼は想推の父親とされている人物だ。

 陣内曰く、彼を調べることで想推の秘密が判明するという。


「では幸運を祈っているよ」


 陣内は手荷物を取って出かけていった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る