第14話 捨てられた理由
「仮に僕が九能四家の子供だったとして、どうして捨てられたんだと思いますか? 生まれたばかりの子を捨てるなんて、余程の理由があるとしか思えなくて……」
「確かに、これまで調べた限りだと、経済的に子育てができないというわけでもないもんね」
知理も疑問に思っているようだ。
「その理由は多分これだよ」
歌非人は鞄から一枚の写真を取り出した。
そこには何かの文様のようなものが映っている。
「これは?」
「これは九能家当主に必ず顕現する聖痕だ。九能家の当主となる人物には、この聖痕が体のどこかに現れるようになっている。君にはこの聖痕が体のどこかにあるかな?」
「いや、ないですね……」
「やはりそうだったか。恐らく君が九能家の子供だったと仮定した場合、捨てられた理由は第一子なのに聖痕が現れなかったからだと思う。そんなことは九能家の歴史が始まってから一度も起こらなかったからね」
「そんな理由で子供を捨てるんですか……?」
信じられないといった表情の知理。
「封建的な世界の九能家では、聖痕がない第一子が生まれたとなると今後の面子に関わる、と考えたんだろうね。まあその判断を現当主である貴幸さんがしたのかはわからないけど。もしかしたら周りの人間がアドバイスしたのかもしれない」
「……」
自分が住んでいる世界とはまるで別物のようだ、と想推は思った。
「ところで、歌非人さんはどこに聖痕がついているんですか?」
「僕は太ももについているんだ。ちなみに娘の詩衣歌も同じ。その一家の当主は同じところに聖痕が現れるようになっているんだ」
「ちなみに、先ほどの九能四家の当主の方の聖痕はどこにあるんですか?」
「貴幸さんは、確か首の裏筋だったかな」
「どれどれ……」
知理は想推の首の裏筋を確認してみた。しかし聖痕はどこにもなかった。
「うーん、やっぱりないね」
「いや、さっきないって言わなかったっけ……」
「念のため確認してみたんだよ」
「他に聞きたいことはないかな?」
考えてみたが、今のところ思いつかなかった。
「とりあえず今はないですね」
「わかった。ではまた結果が分かり次第数日後に連絡する。それまで待っていてくれ」
「わかりました」
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