第13話 九能四家にて
歌非人に案内され、想推たちは九能四家へと辿りついた。
(ここが九能家……)
想推にとっては実家かもしれない家となると、自然と体がこわばる。
「あ、そうだ。想推くんはこの帽子を被ってくれないか」
「これをですか?」
歌非人に渡された帽子を被る想推。
「なぜこんなことを?」
「まあ、ちょっとしたサプライズだよ」
そう言って歌非人がインターホンを押すと、中から使用人と思わしき人物が顔を出した。
「これは歌非人様。ようこそいらっしゃいました」
「話は通ってますよね?」
「ええ、こちらへどうぞ」
三人は応接室へと案内された。
待つこと数分、応接室に二人の夫婦が入ってくる。
歳は40前後、といったところか。
彼らは応接室に入るなり、歌非人を鬱陶しそうに睨んだ。
「今日は何の用かな、歌非人くん」
「貴幸さん、お久しぶりです。今日は大事な用事がありましてね」
「用事? それにその二人は何なんだ」
貴幸が想推たちに目を向けると、歌非人はニヤリと笑った。
「彼らはその用事に関係があるんですよ」
歌非人が想推の肩を叩いた。
「なあ、想推くん。君の顔を二人に見せてあげてくれ」
「は、はい」
想推が帽子を取ると、対面していた二人は驚愕の表情を浮かべた。
「!!!!」
「貴幸さん、奥さん。あなたたちはこの顔に見覚えはありませんか?」
「あ……」
「僕は今日こそ決着をつけに来たんですよ、16年前の事件のね」
歌非人が力強く語ると、貴幸が反論をしてきた。
「そ、その少年がどうかしたのか」
「とぼけないでください。先ほどの二人の表情ですべて察しましたよ。彼は16年前にあなたたちが捨てた赤子だ」
「何を馬鹿なことを……。私たちが自分の子供を捨てただって?」
そのようなことはありえない、といった表情を浮かべる貴幸。
「証拠はあるのか、その少年が私たちの子供だという証拠が」
「それはあなたが出すんですよ、貴幸さん」
「何?」
「あなたと想推くんでDNA鑑定をしてもらいます。あなたには自身のDNAを提供してもらいたい」
「断る。私がそんなことに協力する義理はない」
「義理はなくとも、協力する理由はありますよ」
歌非人は手に持っていた鞄から一枚の書類を取り出し、貴幸に見せた。
「これが何か、あなたにはわかりますよね」
歌非人から書類を受け取った貴幸は顔を青ざめた。
「これは宗家からの命令書です。元々九能四家死産事件を怪しく思っていたのは僕を含めて数人だけですが、もう16年もずっと未解決のままこじれています。いい加減九能家としてもこの問題に蹴りをつけたいと考えているようです」
「……」
「故に僕は九能宗家からの使者として、この事件を解決する役割を与えられました。宗家からの命令とあれば、我々分家の者は従わなければならない。それがどんな理不尽な内容であろうと。それが、我々が引き継いできた九能家の伝統ですよね?」
「……あの小僧に入れ知恵をしたのか?」
「まさか。あの方に何か意見ができるほど僕の地位は高くありませんよ」
二人が何の話をしているのか、ついていけない想推たち。
「さあ、協力してもらえますね、貴幸さん」
「……宗家からの命令とあれば仕方ない」
観念したかのように貴幸は声を漏らした。
その後、歌非人は貴幸からDNAを預かり、少し話をして想推たちと共に九能四家から出た。
「ありがとう想推くん。君のおかげでようやくこの事件が解決できそうだよ」
「はあ、お役に立てたのなら幸いです。でももしDNAが一致しなかったらどうするんですか?」
「それはできれば考えたくないな、まあ大丈夫だろう。結果が出たら君にも報告するよ」
想推は歌非人と連絡先を交換した。
「最優先で鑑定させるから、多分数日あれば終わると思う」
「わかりました。それまで待ってます」
「そういえば君は九能家について調べているんだったな。調査に協力してくれたお礼だ、僕がわかる範囲でいろいろ教えてあげるよ」
「本当ですか!?」
想推はこの機会にどうしても聞きたかったことを聞くことにした。
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