第10話 九能家について
図書館に着いた想推たちは、早速九能家について調べるためにパソコンを利用して検索を始めた。
その結果、少量ではあるが九能家について書かれた文献がヒットした。
知理がその文献を持ってきて、二人で読み始める。
その文献にはこう書かれていた。
『九能家とは、四世紀頃に権威を示していた家系である。三世紀末頃に九能の巫女と呼ばれる人物が存在し、彼女の持つ特殊な力で民の生活を支え、地方の豪族たちをまとめ上げ、一大勢力を築いていた。その後彼女の子孫たちが九能家として能力の一部を引き継ぎ、九能の巫女の影響力を保つことで長年の間権力を維持していた』
他にも、九能の巫女と思われる絵画も載っていた。天を掲げる彼女の周りに、何人もの人間たちが跪いている。
九能の巫女がその能力を駆使して民たちを導いている様子を描いているのだろう。
「四世紀って、だいぶ歴史が古いんだね」
資料を見た知理が感想を述べる。
「四世紀の日本は資料がほとんど残っていないから、『空白の四世紀』とも呼ばれている。でもこの資料が本物なら当時の日本を知ることができる貴重なものだよ。俄かには信じがたいけどね」
歴史的資料がほとんど残っていない四世紀頃に活躍した、というのが都合が良すぎる、と想推は思った。
「いずれにしろ、もっと調べてみないと」
それから二人は色々な文献を漁った。
調べてわかったのは、九能の巫女の子孫たちがその後九つの家系に分かれ、それぞれの地域で権威をふるっていた、というものくらいだった。
現在の九能家がどのようになっているのか、それを記述している資料は見当たらなかった。
「うーん、昔はすごかったみたいだけど、今はどうなっているのかを書いている文献はないね」
「見当たらないってことは、今はたいしたことがないのか、それとも残せなかったのか……」
思考する想推を尻目に、知理は窓の外を見る。
「もう暗くなってきたよ。そろそろ帰った方がいいんじゃない?」
「……そうだね。流石に連続で泊まるのは気が引けるし。一旦家に帰ろう」
本日はこの辺で調査を打ち切り、また翌日再開することにした。
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