魂の悲鳴、未だ消えず

◎いままでのあらすじ◎

パーフェクト・リバティは産まれた時からノーバディ・ノウズと一緒にいる。彼女が軍学校卒業式の時に暴走したノーバディ・ノウズに巻き込まれて決死部隊プレデターに加わることになる。プレデターは恐るべき能力者集団であり、パーフェクトは彼らと共に帝国のアームヘッドと戦うことになる。

  


「ソウルスクリーム」

  


"こころの悲鳴、未だ消えず"

  


アラクネアサルトのカメラが砂塵の向こうのカブトムシを捉えた。神聖プラント帝国の新兵器、弥生だ。アームヘッドと呼ばれるそれはカブトムシのような特徴的な角を持つ。その角がもたらしたバリアはあらゆる射撃兵器を無効化し戦いは格闘戦の時代へと移行した。その為アームヘッドは人の形をとる。

  


アラクネはアームヘッドのせいで時代遅れの兵器と化した。戦車を一方的に狩る捕食者プレデターだったアラクネは逆にアームヘッドに狩られ歩く棺桶と揶揄された。冗談ではない。プレデターはこちらだ。カブトムシなど蜘蛛アラクネのエサに過ぎない。「その通りだ。パフェ。俺達はニューアニマルだ」ノウズが同調する。

  


魂の悲鳴が近づいて来るのがわかる。敵もまたこちらのアームヘッドに怯えているのだ。リズ側もアームヘッドの生産に成功し我々は用済みとなった訳だ。こちらは数機のアラクネと申し訳程度のヴァンデミエールが二機。「緊張しているのか?」マインド・スパークが聞く。「声に出さなくてわかるだろうよ」

  


ヴァンデミエール七号機シャルドネに乗るマインド・スパークもまた魂の悲鳴を聴くことが出来る。彼がアームヘッドに乗り、私達がアラクネなのは単純に与し易さであろう。暴走するニューアニマルは戦場で処分したいのだ。「俺が守ってやるよ」ヴァンデミエール八号機に乗るバードヘッドが言った。

  


「余計なお世話だ」ノウズが無下に断った。「可愛くないお嬢ちゃんだ」バードヘッドは笑った。「お前らにはわからないだろうよ」「それはお前の・・・」「余計なことは言うなマインド・スパーク。他のやつらまで知る必要はない」「ふん、じゃあ二人で頑張れ」「二人・・・?」バードヘッドが訝しんだ。

  


「来たぞ」ノウズの言葉でバードヘッドの疑問は中断される。「迎撃だ!」飛び出したのはアーリー・デッド。「おい先行するな!」突出するアーリー・デッドをコラテラル・ダメージが追う。「おいお前ら!」バードヘッドのヴァンデミエールが跳躍!「無駄だ・・・私の記憶によれば・・・」爆発!

  


ロストメモリーの言葉通りだ。先行した二機のアラクネを見た弥生カブトムシは敵がアームヘッドでなく弱体のハンティングの獲物に過ぎぬと理解し恐怖心が薄れた。こぞってアーリー・デッドのアラクネを狙う。弥生の鈍器がアラクネの薄い側面装甲に突き刺さり爆発を起こした。コラテラル・ダメージも狙われる!

  


「アーリー・デッドがやられた!」バードヘッドが叫ぶ!「見ればわかる」マインド・スパークのヴァンデミエールはすたすたと歩き、敵に迫った。アームヘッドもいる!敵の魂の悲鳴が聴こえた。それでもなおアームヘッドの数は向こうのほうが上だ。弥生のカスタムタイプも見受けられる。

  


マインド・スパークのヴァンデミエール、シャルドネは膝のブレードを展開した。「楽しいうちに死ね」「舐めるな!」二機の弥生が同時にシャルドネに殴りかかる!マインド・スパークは両腕を敵に向けた。その瞬間、シャルドネに向かっていた二機の弥生のパイロットの魂の悲鳴が麻痺した。「さようなら」

  


シャルドネが精神が死んだ二機の敵を同時に切り裂く。鮮血と共に敵のアームヘッドは地に伏した。マインド・スパークは敵の精神を一時的に停止させられるニューアニマルだ。白兵戦において一方的に戦うことが出来る。「コラテラル・ダメージがやられた!」バードヘッドが叫ぶ!弥生改だ!

  


「調和か?あるいはもっと厄介なモノかも知れぬ」弥生改はシャルドネに対し距離をとる。「おいおい、近づいてくれなきゃ困るぜ」マインド・スパークが手招きする。「俺はベテランだ。リズの怪しい奴らだって知っている。それに獲物の質に興味はない」弥生改は反転する。「貴様!」シャルドネが追う!

  


そこを弥生改が後ろから得物の槍で突いた!「来ると思ったよ!」「貴様も心が読めるのか?」マインド・スパークは狼狽えている!「お前の行動は読めたよ」槍の穂先が爆発!シャルドネが怯む!「今度は君がさようならだな」弥生改の追撃!「させん!」バードヘッドが妨害!弥生改は後退する!

  


バードヘッドは弥生改に膝の剣での追撃を行う。「お前はさっきの超能力は使わないんだな」弥生改が槍で受け止める!そして爆発!ヴァンデミエールの膝の剣が折れる!何度も爆発する槍!「あれが噂の調和とやらか」ノウズは呟いた。「おっとこちらにもお客さんが来たようだぜ」弥生!

  


「なるほどなるほど、味方が厄介なアームヘッドの相手をしているうちにハンティングを楽しもうってことか。それじゃあ楽しませてやるか。獲物の恐怖をな」ノウズのくちもとが歪んだ。アラクネアサルトは戦車を狩る捕食者だ。それがアームヘッドを狩るようになったに過ぎぬ。「セオリー通りだな」

  


敵のアームヘッドはこのアラクネアサルトの横を狙いそのまま僕達を倒そうという算段らしい。わかりやすい。心が読めなくてもわかる。魂の悲鳴のほうをアラクネは向いた。「お前らの悲鳴を消してやるよ」敵の恐怖が伝わる、殺意を持ったアラクネにあったことが無かったらしい。アラクネが糸を吐いた。

  


アラクネから糸のように吐かれたワイヤーは弥生の足に絡み付いた!そのパワーはアームヘッドを引き摺るほどではないが弥生を転ばすこと位は出来る。「うわあああ!」遂に口から魂の悲鳴がこぼれた。倒れた弥生の上に蜘蛛のごとくアラクネが覆い被さったのだ。「やめろ!やめてくれ!」魂の悲鳴が口からこぼれる!

  


アラクネは砲口にくくりつけたブレードで弥生のコクピットを刺した。「もうお前の魂も悲鳴をあげる必要はない」弥生はもはや動かず悲鳴も聞こえてこない。「まるでリジアンサムライだな」弥生改だ。「本当に戦車で格闘をする奴がいるとはな」リジアンサムライは戦車と戦車で格闘戦をした男だ。

  


「俺ともやってみるか?」弥生改が正面より迫る!自分の能力に絶対の自信か?あるいは狂っているのか?敵の魂の悲鳴に恐怖はない。「まるで悲鳴ではなく魂の雄叫びだな」ノウズがぼやいた。蜘蛛の糸はもうびろんびろんだ。アラクネはバルカンを放つ!「そんなモノは効かん!」「知っているよ!」

  


狙ったのは地面だ。砂ぼこりが大きく広がり視界を奪う。蜘蛛の糸を切り離し横へ逃げる!「効かんと言っただろうが!」弥生改はこちらを正確に追う!砂ぼこりの中から弥生改の槍の穂先が現れる!「こいつは効くかな?」アラクネの砲口ブレードだ!槍の穂先が爆発する!「無駄だ!」ブレードが爆発!

  


「ち、逃げられたか」弥生改は爆発の晴れたあと周りを見回した。アラクネの姿はそこに無かった。「・・・あいつらは蜘蛛どもを狩れたのか?」弥生改は後ろを向いた。「油断したね?」弥生改はもう一度振り向く!だがアラクネの姿はない。「・・・なんだお前はッ!?」「ニューアニマルだよ」

  


僕達は弥生改から離れ様子を見ていた。「テレパシーか、面妖な・・・」そんな甘いものではない。全部聴こえるのだ、この星のあまたの声が、故にノーバディ・ノウズは壊れた。「来るぜ・・・お友達がよ・・・」弥生改の前にゾンビのように弥生が現れる。「おい、お前たちどうした?」「死ね!」

  


ブレイン・ウォッシャーだ。精神を覗き操ることが出来るニューアニマルだ。弥生改を襲うゾンビ弥生!「法廷だぞ!」弥生改が槍で弥生を突き刺し爆発!だがまだゾンビはいる!操られた弥生は弥生改を敵だと思い込んでいるのだ。「ぎゃー」弥生改が叫んだ。「ウフフ、君も痛いだろう、そうだよね?」

  


イマジナリ・ペインだ。彼は任意の相手との痛覚共有が出来るニューアニマルだ。「おのれおのれ!」弥生改は怒りに任せゾンビ弥生に槍を振り回す。そこへ蜘蛛の如くブレイン・ウォッシャーとイマジナリ・ペイン、ノーバディ・ノウズのアラクネが近づく。「お前の魂の悲鳴を消してやるよ」

  


「よくやった!」ベンデルが称賛した。フンバルト・ベンデルは踏ん張ると・・・まあいい。普通の人だ。「あー・・・あー・・・」ロストメモリーは喘いでいる。「どうした?」ベンデルは露骨に不愉快そうだ。「結局皆、ブリーチに殺されるのだ・・・漂白されたアームヘッドに」「よく知っているな!」

  


ベンデルは笑った。「ただし我々が奴を倒すのだ!セイントメシアと双璧を為す白いアームヘッド、漂白者ブリーチをな!」正しいのはロストメモリーのほうだった。

  


"魂の悲鳴、未だ消えず"


終わり

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