第1話 村人Bのルール

学校で意識調査のアンケートを受けた事があるだろうか。


「学校は楽しいですか?」


やら


「授業の復習はしていますか?」


といった、聞いて何になるのやら。と思う学校生活の質問から、


「夕食は家族で食べていますか?」



「朝食は毎日食べていますか?」


といったプライベートな事まで聞いてくる。正直に言うと、こんなの僕からすれば時間の無駄だ。


そうなれば、やる事は1つ、答えは決まりきっている。




実は、常に3択から5択程度の選択肢が用意されているアンケートだが、これらは忖度なのだ。


テストや試験と違って、アンケートは回答者の協力があってのもの。そのため出題側は、YES or NOではない、曖昧な選択肢を提示する事がある。すると、回答者側の問題への抵抗感を緩和する事が出来るとともに、テストなどとは違う、言わば妥協点を提供する事ができるからだ。


だがその一方で、デメリットも生じている。


「どちらとも言えない」


と言うのは結局、考えを放棄しているだけで、見ている側は一瞬


「その人にしか理解出来ない何かなのか? 」


などと想像してしまうが、そうでは無い。大半が


「選ぶの面倒くさい」


と言う理由から選択されている。

つまり、問題の趣旨とは関係の無い私情が入ってしまう。その為、本来の"回答"を望むのなら、


YES or NO


この2択に絞るべきなのだ。


だから回答者側は、そういった出題側の意図をくんで、あえてあの2択で答えるのがベストだ。





そして、これだけ熱弁しておいてなんだが、僕が選ぶのは


「どちらとも言えない」


この1択なのだ。


言っていることがあべこべなのは申し訳ない。回りくどく話してしまう、僕の悪い癖だ。

では、結局何が言いたいのか。結果から言おう。


僕は、全てを天秤にかける。


より自分にメリットが生まれる方をとる。今回も、僕にとってアンケートは時間の無駄だった。

ので僕は、いかに時間をかけずに済むかをまず考える。そうすると自然に"選択"という行為を削減する必要があった。

そのため僕は、より考えずに済む


「どちらとも言えない」


をとる事にした。


先程までの熱弁は全て一般論であって、"ふつう"ならそのようにするべきだ、と言う理想論だ。でもそれに僕が遵守する必要はなく、それは僕以外の誰でも同じ事なのだ。だから自身のもつ選択肢の中から自身に合う最善のものを選ぶのだ。


誰にでも自分のルールが存在する。それは時に自分を解放し、時に自分を抑制する。だからいかにそれが極端でも、もっとも重視しなければいけない事だ。


そして僕は、


「自分を好きでいられるのなら、自分の全てを肯定する。」


と言うルールを掲げている。



45分間で取り組む予定のアンケート。

カツカツ、と言うシャーペンの芯を出す音や、

カサカサ、と言う紙が擦れ合う音が静かに鳴る教室の中で…


開始から約5分、全問題の真ん中だけをシャーペンの2Bで強く塗りつぶし、さも満足げな表情を浮かべる1人の男は、ゆっくりと机に頭を下げ、軽い睡眠をとる事にしたのだった。



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平凡のフィロソフィー カボスん @kabosun

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