再会
サリエラside.
あれから二年経った。
ネイダール大陸には魔王は居なくなったが、魔族と魔物は今だに人々の生活を脅かしている。
死霊術師に関しては召喚してアンデットを呼び出せなくなった為、衰退してしまったらしい。
そんな、少し変化があった世界で私はソロ冒険者として活動しており、現在、私は村を襲おうとしている武装集団の前に立っていた。
最近は悪いことをして加護を失った連中が徒党を組み、小さな村や町を襲う事件が増えてきている。
だから、私は最近こういう連中を捕まえる仕事を多くやっているのだ。
「もう、逃げられないですよ」
私は武装集団にそう言うと、リーダー格の人物が不適な笑みを浮かべて言ってきた。
「おいおい、一人で何ができるんだ?」
「一人じゃないので大丈夫です」
「はっ、どこだよ?」
リーダー格の人物は何かを探すような仕草をした後、ニタニタ笑ってきたが、私が手をあげると同時に沢山の精霊が現れると、武装集団は顔色を変えてあっという間に逃げだしてしまった。
「うわぁ!」
「やべえ、精霊使いだ!」
「逃げろ!」
「全員逃がしませんからね」
私はそう言って、精霊達に指示すると、精霊達は爆発する魔法を大量に撃ち込んでいき武装集団を全員吹き飛ばして気絶させる。
私はそんな気絶した連中を見て溜め息を吐いた。
「はあっ、鉱山労働者、漁船、舗装工事の働き手を大量確保したけどまだまだ減らないわね。加護を失っても真っ当に生きれるのになんですぐに犯罪に手を出すのかしら……」
私は文句を言いながらも、倒した武装集団の首に次々と隷属の首輪を付けていく。
これで五百人近くは送ったわね。
はあっ、これじゃあ、奴隷製造機とかあだ名を付けられちゃうわ……。
私はそう思いながらも作業を続けていく。
そして、全員の首に隷属の首輪を付け終わり、一息入れていると、遠くから白髪の若い女性とアリスさんが手を振って駆け寄ってきた。
「サリエラさん!」
「ああ、ミラさん」
私はそう答えて手を振る。
ミラさんはカーミラが使っていた身体の持ち主である。
あれから、しばらくしてカーミラは眠りにつくと言って、ミラさんに身体を返したのだが、彼女は一人で生活するのは無理だった為、教養があるアリスさんに日常の知識を学びながら、現在、南側で一緒に生活しているのだ。
ちなみに私も定期的に顔を出すようにしている為、二人とはとても仲良くなっている。
そんな二人がなぜ私のところに来たかというと、今日は特別な日だからだ。
「もうすぐですね、キリクさん」
私がそう言うと指輪が微かに光る。
その光りを見たアリスさんが微笑みながら言ってきた。
「やっとですね」
「ええ、グラドラスさんも今のアリスさんを見たらびっくりしますよ」
私はそう言って、闇の力を完全にコントロールしたアリスさんを見る。
今の彼女はどこからどう見ても立派な淑女である。
「ありがとうございます。これも、南側に住んでる魔族の方々のおかげですね」
「ふふ、アリスさん自身の頑張りもありましたからね」
私がそう言ってアリスさんに微笑んでいると、ミラさんが私に抱きついてきた。
「サリエラさん、そろそろ行きましょう。みなさん、もう揃ってますよ」
「わかりました。じゃあ、この人達を送ったら行きましょうか」
私はまだまだ精神的に幼いミラさんの頭を撫でると、そう言って微笑むのだった。
◇◇◇◇
「遅いわよ、サリエラ」
私達が中央の異界の門があった場所の近くに転移すると、仁王立ちして緊張した面持ちのミナスティリアさんが駆け寄ってきた。
すると、一緒に駆け寄ってきたファルネリアさんが口元を手で押さえて笑う。
「ふふふ、ミナスティリアったら、朝からこんな感じなのよねえ」
「う、うるさいわね!」
ミナスティリアさんがファルネリアさんに突っかかって行こうとすると、慌ててサジさんが間に入った。
「まあまあ、ミナスティリアさんもブリジットさんを見習って静かに座っ……」
「ブリジットは緊張しすぎて座り込んでるだけでしょ!」
「うえ、腹が痛い……。サジ、回復を……」
「えっ、は、はい……」
サジさんは慌ててブリジットさんに駆け寄り治癒魔法を使う。
私はそんな白鷲の翼を見てほっとする。
魔導具で定期的に会話はしていたが、この一年は会ってなかったからだ。
それは、ミナスティリアさん達が火竜の伊吹と共に、虐げられている人々を保護したり、悪い連中を捕まえたりと、大陸中を駆けずり回っているからである。
みなさん、元気そうで良かった。
私は少し離れた場所にいる火竜の伊吹に手を振り挨拶していると、蒼狼の耳が駆け寄ってきた。
「サリエラさん、今はどんな感じ⁉︎」
「ミランダさん、もう、いつ来てもおかしくないですよ」
私はそう言って背が伸び身体つきも変わったミランダさんを見る。
二年経ってミランダさんはずいぶん成長して綺麗になった。
そんなミランダさんの横で二年前と変わらない姿のリリアナさんが私に聞いてくる。
「声は聞こえた?」
「聞こえますが相変わらず何を言ってるかは……。けれど、なんとなくわかるんです」
「大丈夫、信じてるから。そう、やっと帰って来れるのね」
リリアナさんは考え深げにそう言うと、フランチェスカさんが首を傾げながら聞いてきた。
「なぜ、こんなに先生達は帰るのに時間がかかってしまったのですか?」
「なんだか、時間軸がどうのこうのと、後、色々と寄り道してたみたいです……」
「はあ、相変わらずあの人達らしいですわね」
フランチェスカさんが呆れた様子でそう言うと、いつの間にか側にいたアンクルが微笑みながら言ってきた。
「きっと大切な事をしてるのよ」
「アンクルは何か知ってるんですか?」
「いいえ、でも、みんなを待たせてする程の事だから、きっとそうでしょう」
「ふふふ、確かにそうかもしれませんね」
私はそう言ってアンクルに微笑むとマルーさん達が駆け寄ってきた。
「サリエラさん、キリクはまだかな?」
マルーさんはそう言ってしきりに着ているおしゃれな服やセットした髪型を気にする。
そんな、マルーさんを後ろの方でシャルルさん、マリィさん、ルナさんが微笑んで見ている。
きっと三人がコーディネートしたのだろう。
「まだですけど、早くその可愛い姿を見てもらえると良いですね」
「う、うん!」
マルーさんは誰もが見惚れるほどの笑顔を見せる。
そんな笑顔に周りにいる私達は癒されていると、アリシアさんとライラ王妃がやってきた。
「兄様がやっと帰ってくるのね」
「私、緊張してきてしまったわ……」
「もう、姉様は王妃でしょう?しっかりして!」
「だって、キール……今はキリクだったわね。私にとって長年会えなかった家族よ……。結婚式や子供を産む時より緊張するわよ」
ライラ王妃はそう言って胸に手を当てて深呼吸していると、みんなにも伝染してしまいみんなそわそわし始めてしまった。
もちろん、私もであり、心臓がバクバクしていると突然、扉が現れてオルトスさんが飛び出してきた。
「よっしゃあーー!俺が一番だ!お前ら俺に酒を……って、うおおっ⁉︎」
オルトスさんはそう言って周りを見て驚くと、次にブレド国王とグラドラスさんが出てきた。
「くそおっ、負けるとは私の特製ジュースを……って、戻ったのか!」
「どうやら、上手くいったらしいね」
二人は周りを見回し頷くと振り返って扉を見る。
すると、そこから私が一番会いたかった人がゆっくりと出てきたのだ。
そして、呆れた様子でオルトスさん達を見た後、私達に自然な笑顔を向けて言ってきたのだ。
みんな、ただいまと……。
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