待つ者達


 サリエラside.


 私達が異界の門の外に出てしばらくすると門が勝手に閉じて消えてしまった。

 みんなは向こうにまた行けないか為そうとしたが、すぐにカーミラが被りを振って言ってきた。


「向こうとこちら側の繋がりが完全に切れたから無理よ」


「……それじゃあ、キリクさん達はどうなるんですか?」


「わからないわ。けれど、きっと何か方法があるはず……」


「方法……」


 私はそう呟いた後に指輪を見てはっとする。

 それは指輪を通してキリクさんと繋がってる気がしたからだ。

 私は慌てて指輪に集中してみる。

 すると、間違いなくキリクさんを感じ取ることができた。

 しかも、キリクさんだけじゃなく、キリクさんを通してグラドラスさん達との繋がりを感じ、因果神ヒューリティを倒したのもわかったのだ。

 だから、私はみんなに向かって言った。


「キリクさん達なら大丈夫です!」


 私はそう答えるとみんな一斉に私の方を見たので、私は指輪を見せる。


「指輪を通してキリクさん達を感じるんです。しかも、因果神神ヒューリティを倒したのもわかりました!だから、キリクさん達なら大丈夫です!」


 私がそう言うと、ミナスティリアさんが私に聞いてくる。


「サリエラ、キリク達は戻って来れるの?」


「それが因果神ヒューリティを倒した後、キリクさん達は移動したらしくて、今はわからないんです……」


「でも、繋がりはわかるのね?」


「はい!」


「なら、大丈夫よ」


 ミナスティリアさんはそう言って頷くと、みんなの方を向いた。


「じゃあ、私達は彼らが帰って来るまでに加護無しが住みやすい世の中にしないとね」


「ええ、忙しくなるわ……。それに虐げられた人達も助けないと」


 ミナスティリアさんの言葉にメリダさんがそう答えると、火竜の伊吹のメンバーや雷帝騎士団と雪花隊も力強く頷いてくる。

 すると、アリシアさんが軽く手をあげて言ってきた。


「なら、中央も参加するわ。お兄様達のおかげで中央は異界の門の呪縛から解放されたんだから」


 アリシアさんがそう言って魔導兵団に鉄鋼騎士団、そして結界師達を見ると、私達に向かって頷いてくれた。

 そんな光景を見て私は嬉しくなってしまった。


 キリクさん達の活躍で大陸中が繋がっていってますよ。

 だから、早く帰ってきて下さいね。


 私は指輪に触れながらそう思っていると、聖人が私達に向かって言った。


「今、神々から信託があった。これからは加護を持って生まれてくる者は徐々に少なくして最終的なはなくすと言ってきた」


「加護をなくす……。それってどうなるの?最終的に魔法も使えなくなるってこと?」


「それだと魔導具はどうなるの?魔物や魔族はまだいるから危険……」


 聖人の言葉にファルネリアさんとリリアナさんが疑問を口にすると、聖人は微笑みながら答えた。


「加護がなくても魔法は使えるようになる。要は勉学や努力次第で加護持ち並になれるという事だ」


「なるほど。それならば、進みたい道にいけるという事ね」


「努力した者が評価される世界。納得」


 二人はそう言って頷くと、今度はサジさんとブリジットさんが疑問を口にした。


「それだと、加護持ちと加護無しでトラブルが起きませんか?」


「そうだよ。現状の加護持ちは不満を言ってくる奴がいるかもよ。いや、逆もありえるよ……。また世の中荒れちまうじゃないか……」


 ブリジットさんはうんざりした顔でそう言うと、聖人は被りを振った。


「心配するな。そこは、神殿や王家などにそうならないようにしっかり考えろと信託をする。それと、今後、加護を悪い事に使えば消えると仰っている」


「なるほど。それじゃあ、下手に悪い事はできないですね」


「でも、悪い奴ってのは加護が消えたら余計馬鹿なことをするかもよ?例えば魔族や死霊術師とかと組む連中も現れるかもしれないしね」


 ブリジットさんがそう言って目を細めると、ミランダさんとフランチェスカさんが手をあげた。


「なら、あたし達がそいつらをとっちめよう!」


「そうですわね。魔王も居なくなったわけですからね」


「なるほど、ならあたいらの次の目標は悪党退治も追加ってことか」


 ブリジットさんがそう言って拳を突き合わせると、ミナスティリアさんがみんなに向かって言った。


「じゃあ、やる事は決まったわね。ただ、その前に……みんな勝利よ‼︎喜びなさい‼︎」


 ミナスティリアさんが笑顔でそう叫ぶと、みんな一斉に歓喜の声をあげて叫ぶのだった。



◇◇◇◇



 その後、ローグ王国の国王アーデルハイドに報告しに行くと、ほっとした表情を浮かべた後、私達に頭を下げてきた。


「本当に感謝する。これで、やっと中央は長きに渡る呪縛から解放された」


 アーデルハイド国王がそう言うと、隣りにいたライラ王妃も胸に付けた花形のブローチを握りしめながら頭を下げてきた。


「私からもお礼を言います。本当にありがとうございました……」


 そう言ってきたライラ王妃だったが、その表情はとても悲しげだった。

 するとアリシアさんがライラ王妃に駆け寄り抱きしめながら声をかけた。


「兄様なら大丈夫よ。きっと戻ってくるわ」


「そうね……。今度こそ、あの子には幸せになって欲しいわ」


「それなら、大丈夫よ。兄様って凄いモテるのよ。後で彼女達から兄様の話しを聞きましょうよ」


 アリシアさんはそう言って私達を手招きしたので、私達は側に行くと、ライラ王妃は私達を見つめて嬉しそうに微笑む。

 そんなライラ王妃を見た私は指輪に心の中で話しかける。


 キリクさん、あなたのお姉様に会いましたが目元が凄く似てますね。

 だから、余計、キリクさんを思い出してしまいました。

 キリクさん……。

 今どこですか?

 無事ですよね?

 

 私が指輪を弄りながら心の中で話しかけると、微かに指輪が反応してキリクさんが何か答えたような気がしたのだ。

 だから、私は祈るように声をかける。


 キリクさん、ライラ王妃とアリシアさん、そして、みんなと一緒に待ってますからね。

 ずっと待ってます……。


 私は心の中でそう言うと、指輪を手で包み込み、キリクさん達の無事を祈るのだった。

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