元勇者パーティー対神2
ヒューリティは胸の辺りを俺に刺されたが、全く気にする様子もなかった。
それは、刃先のロゼリア文明文字が輝いて確かにヒューリティの力を取り込んでいるのにだ……。
俺はそんな愚かな存在に心底呆れていた。
気づかれるかと思って内心焦ったが……。
そうなると、神とは特別な力を持っているというだけで俺達と対して変わらないのかもしれないな。
俺は神々や不死の住人、そしてアステリアを思い浮かべた後、ヒューリティを見る。
すると、ヒューリティは俺を蔑むように笑いだした。
「ぐはははははっ、馬鹿な奴だ。これだから下等生物は嫌なのだ。我がたとえ神殺しの剣で刺されようが微々たる力を取り込まれようが死ぬわけがないのにな……」
「神殺しの剣に刺されて余裕とは、もしかしてお前は本体じゃないと言うことか?」
俺はヒューリティが喋っている最中にカマをかけながらそう聞くと、急に黙ってしまう。
その為、俺は更に剣を深く差し込んでいきながら言った。
「やはり、当たりか。まあ、おおかたアステリア対策にそうしたんだろう。全く、神とは名ばかりの臆病者だな」
俺がそう言って笑みを浮かべるとヒューリティは仮面越しに俺を睨みつけてくる。
「……だとしても貴様らには何もできずに死ぬ。そして、次はアステリアが作り出した存在全てを滅ぼす。それで我が見た因果の果てに起きたことは防げるだろう」
「やれやれ、おめでたい頭だな。だから、こんな馬鹿なことをしたんだな」
俺はそう言いながら鎧に魔力を込め、鎧に込められた結界を発動して俺達とヒューリティを中に封じ込めた。
「結界だと?悪あがきを……」
ヒューリティは侮蔑を含みながらそう言っていたが、突然、ビクッとなった後に苦しみ出し、それと同時に剣で貫いたネクロスの書が灰みたいになった。
俺はそれを見て口角を上げる。
どうやら、ネクロスの書の力を取り込んだ剣がヒューリティとその急所部分を繋げたみたいだな。
さあ、後は我慢比べというところか……。
俺はそんな事を思っていると、ヒューリティは急に慌てた様子で叫んできた。
「き、貴様何をした!」
「さあな……」
「ぐぬうっ!」
ヒューリティは俺が答える気がないのがわかると、身体から黒い触手の様なものを出してきて俺達の方に向かってきた。
ゆっくり回復できないから無理矢理、腕の代わりを作り出したか……。
俺はすぐにブレドとオルトスを見ると、黒い触手がこちらに来ないように攻撃しだした。
そんな中、隣でグラドラスが口から血を吐いて膝をついた。
「グラドラス……」
「くっくっく、流石にこの膨大な魔力量を抑え込むのは僕でも参るね……」
「……わかった、俺も早く終わらせらる様に努力をしよう」
俺はそう言うと剣に魔力を流し始める。
その瞬間、身体にとてつもない衝撃がきて魔力をごっそり削られ出した。
くっ、これはきついな。
だが、おかけで繋がりが見える。
俺はヒューリティの心臓部分に向かって刃先が向かっていくのが理解できた。
「このまま魔力を流し続ければ届くはずだ……」
俺はそう呟くと、仮面にヒビが入りだしたヒューリティは焦った様子になった。
「ぐおおっ!な、何をした⁉︎なぜ、届いているのだ⁉︎」
「たぶん、お前に迷惑かけられた連中の怒りが届いたんだろうよ」
「ふっ、ふざけた事を言うなあっ‼︎」
ヒューリティはそう叫ぶと更に魔力を高めていき、黒い触手を更に増やして俺達を襲ってきた。
「くそっ、なんだこの量は⁉︎」
「数打ちゃ当たるってか!舐めやがって‼︎」
ブレドとオルトスは必死に向かってくる黒い触手の攻撃を防ぎ続ける。
しかし、徐々に押され始め二人は傷つき出した。
そんな中、グラドラスも吐血をしだし身体が痙攣し始めいた。
くそっ、どうにかならないか……。
後、少しで届くのに……。
俺は頭をフル回転させ、ある結論に辿り着き溜め息を吐いた後、グラドラス、ブレド、オルトスの三人に声をかける。
「悪い、お前らを巻き込むぞ」
俺がそう言うとグラドラスが血を吐きながら震える声で聞いて来た。
「何を……する気だ……い?」
「この剣に俺達の全魔力を一点集中して、奴の心臓を貫く」
「要は……無防備になるか……面白い……」
グラドラスがそう答えるとブレドもオルトスも頷く。
「それで奴を葬れる可能性が高まるならな」
「良いぜ!神の攻撃を防いだ拳聖より、神殺しをした拳聖の方が自慢できるじゃねえか!」
「では、やるぞ」
俺の言葉に三人は俺に触れて魔力を流し込んできた。
すると、一気に心臓部分に刃先が向かっていくのがわかり、それを同じくして、わかってしまったヒューリティは完全に焦りだして叫んだ。
「やめろやめろやめろやめろおおおーーーー‼︎」
ヒューリティは俺達に向かって黒い触手と、復活した狼と梟の顔が一斉に炎の玉を吐いてきた。
だが、俺達は全力で魔力を剣に流し込む。
そして、刃先が心臓部分にもう少しで届くところで、目の前に炎の玉が見えてしまい俺は苦笑する。
やれやれ、戻れなかったらみんなに怒られるんだがな。
俺はそう思いながらも、全力で魔力を注ぎこみ続ける。
そして遂に炎の玉や黒い触手が俺達を貫こうとした瞬間、その攻撃は何者かによって阻まれたのだ。
俺達は何が起こったのか、わからないでいると、俺達の真上から声が聞こえた。
「全く、この私が人を守る事になるとはな……」
そう言って俺達に不敵な笑みを浮かべてきたのはかつての俺達の敵である魔王を作り出した、頭に水牛の角を生やした女、魔神グレモスだったのだ。
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