神を取り込む剣


 俺達はしばらくアステリアの亡骸を見つめていたが、グラドラスがボソッと呟いてきた。


「神に近づいてしまった人々を恐れたのかもしれないねえ」


「なら、普通はその事を警告なりしないか?それともアステリアはそんなに会話が通じない神だったのか?」


 俺はそう言ってカーミラを見ると被りを振った。


「私が言うのもなんだけど、アステリアは聖母神と言われるぐらい優しい神よ。話せばきっと理解してくれたわ。そうよ、話せばこんな事にならなかった……」


「つまりは時空神クロノアと因果神ヒューリティのどちらかに嵌められた可能性があるのか」


「けど、その二神と接触しようにも僕らじゃねえ。魔女殿はアステリアの欠片なのだろう?できないのかい?」


「無理よ。半神はあくまでわざと人に近い存在にしているから、他の神を見つける力なんてないわ……」


「そうなると、アンクルに聞いてみるしかないのかな……」


「……いや、方法ならあるかもしれない」


「本当かい?」


「ああ、アステリアを使う」


 俺がそう言った瞬間、みんな上に浮いてるアステリアの遺体を見た後に俺を見てきたので、腰に下げてる剣を抜いてみんなに見せる。


「こいつには、斬ったものの力を取り入れる事ができるんだ」


 俺が剣の刃先を軽く叩きながら説明するとブレドが腕を組みながら頷いた。


「なるほど、それでアステリアの力も取り入れて二神を探すのか」


「そういうことだ」


 俺はそう言った後、カーミラを見ると再び上を見上げながら言ってきた。


「良いんじゃない。それで二神を探せるならね。そのかわり、もしどちらかが嵌めたのなら、私はそいつを殺すわ」


「構わない。どっちみち俺もそうするつもりだからな」


 俺はそう言うと剣を構えて飛び上がり、アステリアの遺体に剣を突き刺そうとしたのだが、身体に当たる前に持っていた剣が弾かれてしまったのだ。


 遺体でも駄目なのか……。


 俺は地面に着地してアステリアの遺体を見ているとカーミラが声をかけてきた。


「やはり、神殺しの武器じゃないと傷はつけられないみたいね」


 カーミラがそう言うと、グラドラスが俺に聞いてきた。


「どうする?傷がつけられないとそれの効果は発動しないよ」


「なら、斬れるようにすればいい」


 俺は槍を地面に突き刺し、槍に向かって剣を振り下ろす。

 そして刃先が神殺しの槍に当たると同時にキーンという頭に響く音が響いた。

 だが、その瞬間、剣が激しく揺れ始めヒビが入り始めた。

 その為、俺は聖人からもらった賢者の石を剣に当てると、剣の振動がなくなりヒビも消えロゼリア文明文字が輝きだしたのだ。


 賢者の石の力で剣に込められた力を高める事ができたようだな。

 後はこのまま神殺しの槍の力を取り込めば……。


 俺はそう思っていると神殺しの槍と賢者の石が突然、砂の様になってしまう。

 だが、俺はそれで剣が神殺しの槍の力を取り込んだのを理解できた。


 上手くいったぞ。

 これならいけるはずだ。


 俺は再び飛び上がり、アステリアの遺体に向かって剣を突き出すと今度は深々と突き刺さった。

 すると、アステリアの身体が淡く輝き、遂には光りの塊に変わり徐々に剣に吸い込まれ始めたのだ。

 その勢いは激しく思わず手が痺れてしまいそうになる。

 その時、俺の手を上から握りしめる者が現れた。


「ミナスティリアか」


「なんなのこの凄まじい力は⁉︎」


「神アステリアの力をこの剣に取り込んでいる」


「全く、またとんでもない事をして!それで、取り込んでどうするのよ?」


「アステリアを嵌めた神がいるからそいつを探す」


「はあ……わかったわよ」


 ミナスティリアがうんざりしながらそう言うと同時に、光りの塊が全て剣に取り込まれて辺りには何もなくなった。


「半神も神殺しの短剣も取り込んだか。全くとんでもない剣だな……」


 俺は地面に着地した後、剣を眺めているとみんなが集まってきた。

 そんな中、俺は怪我をしているようだが無事だったメリダ達、火竜の伊吹を見る。


「ベネットを退けたんだな」


 俺がそう聞くとメリダ達は頷く。


「身体に無理があったみたいで、途中で力尽きたわよ……」


「やはり、最初から死にに来てたか……」


 俺はそう呟くとメリダが覚悟を決めた表情で言ってきた。

 

「キリク、私達これが終わったら加護無しが虐げられない世界を作ってくつもりよ」


「……そうか、なら各国に相談してみろ。きっと力になってくれるぞ」


 俺はそう言って白銀の騎士の格好をしているブレドを見ると力強く頷いた。


「差別のない世の中にしないとな」


「ああ、だか、その前に問題を片付けるぞ」


 俺はそう言うと剣を地面に突き刺すのだった。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る