本当の敵
俺達はカーミラの話を聞きやっとこの世界の真実に辿り着いた。
ロゼリア文明時代に神殺しを行おうとした愚か者が、半神を殺して神に戦いを挑んだが、逆にやられてしまい、人は怪物にされてしまったということか……。
「……じゃあ、ロゼリア文明はどうして今いる世界からなくなったんだ?」
「神殺しなんて考える元凶だから、ロゼリア文明の全てと、怪物になったあいつらが一生苦しみ続ける様に領域を作ってその中に入れたのよ」
カーミラはそう言って両手でかき集めるような仕草をして、手にまとめて投げる仕草をする。
もし、本当にカーミラがやったようなやり方で文明が消えたのなら、その当時に生きていた人々は驚いただろう。
いや、もうその時は既に怪物になっていたのかもしれないが……。
「……なら、なぜ、他の神々の領域まで破壊したんだ?」
「それはねぇ、神々の誰かが神殺しを唆したと判断したからよ」
カーミラはそう言って俺の背負っている大剣と槍を睨む。
俺達はその言葉を聞き顔を見合わせてしまった。
おそらく、一番、理解していると思われているグラドラスさえ、驚いた顔をしているのだ。
だが、カーミラからは冗談を言っている雰囲気はなかった。
なんせ、実際、神々の領域に攻め入ってるのだからな。
だが、俺が会った連中には唆すような奴はいそうになかった。
グレモスなんかは特にないとはっきり断言できる。
俺はカーミラを探るように見ながら質問した。
「……そういう証拠が残っていたのか?」
「ええ、アステリアの背中を見て」
カーミラはそう言ったので、俺達は少し移動してアステリアの背中を見る。
そこには大人の背丈はあるだろう柄のない短剣が刺さっていた。
「神殺しの牙と呼ばれるアズートという短剣よ。これは神しか持てないものなの。アステリアはこの世界に降りた時、これをいきなり背中に刺されたのよ。だから、文明を滅ぼし、人を怪物に変えた後、神々の領域を破壊しにいった。けれど何故かこの空間に戻って力尽きたのよ……」
俺はカーミラの話を聞き、驚いて聞き返してしまう。
「まさか……アステリアはとっくに死んでいたという事か?」
「ええ、ここに来てアステリアの記憶の欠片を見て、部分的だけど理解したのよ。本当、馬鹿みたいよね……一番殺しかった相手がとっくに死んでたなんてね……」
「……なぜ、半神であるお前がアステリアを憎む?」
「当たり前でしょう。元々、この世界を作ったのはアステリアなのよ⁉︎自分は被害者面して暴れまわってさ!言ってやりたかったのよ!あんたも加害者だってね‼︎」
カーミラは叫ぶようにそう言うと荒い呼吸をしながら、俺を見てくる。
そんなカーミラに俺はどう反応していいかわからなかった。
聖女として生きて献身的に世界を支えていた。
だが、神になり代わりたい連中の手により惨殺された後、見せしめにされたのだ。
殺した連中も恨んだが、この世界を作ったアステリアも恨んだか……。
こいつもまた、グレモスと一緒か……。
俺は溜め息を吐き、カーミラに言った。
「なら、一番の目的は達した……もういいだろう?」
「そうね。もう疲れたわ……。アステリアが死んでいても世界は壊れないみたいだしね。けどね、最後の加害者が残ってるのよ」
カーミラはそう言ってゆっくり俺に近づいてくる。
それで、俺は理解する。
「……アステリアの欠片であるお前だってことか?」
「そうよ。後はその神殺しの武器で刺せば終わり。あなた達の完全勝利よ。良かったわねぇ」
「……何が良かっただ。何も良くないだろう」
「何よ?勝ててあなた達は帰ってハッピーエンドでしょう?」
「やれやれだな。お前自分で話しておいて忘れたのか?アステリアを殺した奴がいるんだろう?そいつの目的を知らなければまた何が起きるかわからないだろう」
俺がそう言うと、カーミラは足を止めて驚いた顔をする。
「……見つける気なの?」
「当たり前だ」
俺はそう言うとカーミラは俯いてしまう。
そんなカーミラに俺はどう声をかけていいか黙っていると、ブレドが声をかけてきた。
「龍神ドラゴニクスは怪しくないか?なんせ急に居なくなったのだろう?」
ブレドに言われ俺は考えるがすぐにカーミラが顔をあげて被りを振る。
「龍神ドラゴニクスは違うわよ。だって、彼はアステリアに攻められた時に言ったのよ。我らは誰かに嵌められたのかもしれないってね。一番警戒心があり知性がある龍神ドラゴニクスがそう言ったのよ。まあ、怒り狂ったアステリアは聞かなかったけれどね。ああ、私はこんな事も忘れていたなんて……」
どうやら、色々と記憶が戻り始めているカーミラはそう言った後、肩を落とす。
その姿はもう俺の知るカーミラとは別人に見えてしまった。
そんな俺達の側に体力が回復したサリエラが駆け寄ってきた。
「キリクさん、みなさん、どうなったんですか?」
「俺達がやろうとしてた事は済んだ。だが、新たな問題が発生した」
俺はそう言ってサリエラに説明する。
その横でオルトスがたまに頷いていたが、絶対に理解できていない顔をしていたが突っ込まないよう我慢していると、サリエラが頷き言ってきた。
「あの、私達が知っている神々じゃなくてアステリアと同列の神っていますか?」
サリエラはそう言ってカーミラを見ると、考えるような仕草をした後に頷く。
「私が知ってる聖母神アステリアと同列な神は時空神クロノアと因果神ヒューリティだけのはずよ……。でも、まさか……」
カーミラはそう言ってアステリアの背中に刺さる短剣を見る。
おそらくこの時、オルトス以外のみんなは同じ事を思っていただろう。
この二神のどちらか、または両方がアステリアを殺したのだろうと……。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます