連合会議

 私達、白鷲の翼はあれからレオスハルト王国に戻っていた。

 現在、各国から要人を呼んで第一回目の会議を行っていたのだが、皆んなカーミラ達の事で頭を痛めていた。

 もちろん、私の横に座っていたレオスハルト王国の国王バラハルトも、先程から何度も難しい顔をして報告書を見ている状況である。


 きっと、皆んなどうして良いのかわからないのよね……。

 なんせ、中央との連携は期待できないから。


 私がそんな事を思っていると、スノール王国の国王ブレドが眉間に皺を寄せながら私に聞いてくる。


「この、キリクという冒険者が魔王になったと書いてあるが本当なのか?」


「ええ、そうよ。しかも、あの時に感じた気配は魔王クラスはあったわよ」


 私がそう言うとブレドは無念そうな表情を浮かべる。


 やっぱり、この人もキリクがアレスだとわかっていたようね。

 まあ、元勇者パーティーだから当たり前か。


 私がそんな事を考えていると、アルマー領の代表として来たアルマー公爵が太い腕を組みながら重い口を開く。


「……こうなれば、脅してでも中央に掛け合うしかないな。他が嫌なら我々が先陣をきってやっても良いぞ」


 アルマーがそう言うとブレドは首を横に振る。


「アルマー公爵だけに美味しいところは持っていかせん。我がスノール王国も共に行くからな」


 そう言ってニヤッと笑うブレドにアルマーも不敵な笑みで返す。


「ふっ、流石は我がアルマー領の王、アレス様の仲間だな」


 アルマーとブレドは立ち上がり拳を突きつけあう。

 それを見ていたバラハルトは脳筋共めとボソッと呟くと、私の方を見て言ってきた。


「ミナスティリアよ、そのキリクだが、助けられるとの話しだが、詳しくはまだわからんのだな?」


「はい。おそらくキリクを助ける為の鍵である冒険者サリエラもギリギリまで知らされてませんからね」


「では、そちらはサリエラどグラドラスに任せるしかないか。では、我々がすぐにすべき事を纏めよう」


 バラハルトがそう言うと早速、皆んながそれぞれ意見を言いだす。

 そんな中、私は南側の代表の一人として来ていたメリダを見る。


 間違いなくミランダより強いわね。

 流石はオリハルコン級冒険者というところかしら。


 そんなメリダに会議が始まる前、私は呼び止められたのだ。

 しかも、キリクがアレスだとわかってるらしく、手伝える事があればなんでも言って欲しいと。

 その瞳の奥には恩人を助けたいという気持ちが込められていたので、ありがたく頷いた。


 ただ、そういうのは危険なのよね……。

 もう、これ以上はライバルを増やすわけにはいかないのよ。


 私はキリクの周りにいる女達を思いだす。

 圧倒的に強い女サリエラ。

 正直、彼女の事はいいわ。

 次に女狐ファルネリアね。

 あれも論外ね。

 後はマルー。

 この子は危険な匂いがするわ……。

 そしてミランダにリリアナ。

 まあ、まだ中身も子供だし本人達も半分は理解してない感じだものね。

 ただ、一番の強敵はあの不死の住人よ。

 キリクのやつ、何、人外までたらし込んでるのよ!

 これじゃあ、二番の座が危ういじゃないの!


 私は頭を抱えて唸っていると、バラハルトが心配そうな顔で見つめてくる。


「だ、大丈夫か?」


「黙っててよ、お爺ちゃん。今、将来何番目の妻になれるのか悩んでる最中なの!」


 私はそう言った後、今はプライベートでない事を思い出し、ハッとして周りを見ると皆んな驚いた顔で私を見ていた。


 やってしまった……。


 私がおろおろし出すと、お爺ちゃんじゃなくバラハルトが何事もなかった様に話しだしてくれたので、なんとか助かったのだった。

 結局、中央ローグ王国に今回の件を報告して我々外周で作った連合部隊が入る許可を取りつける。駄目ならカーミラ達が動いたと同時に精鋭部隊を侵入させるという話しに落ち着いた。

 今は第一回の会議も終わり、バラハルトと私に白鷲の翼で紅茶を飲みながらゆっくりしていた。


「ミナスティリア、あなた会議でやらかしたらしいわね」


 ファルネリアが嫌味ったらしい口調で言ってくる為、私はバラハルトを睨む。


「わ、わしが言ったわけではないぞ。後ろにいた息子か宰相あたりだろう」


 私はそう言われてあの時、口元を押さえていた二人を思い出しイラっとしてしまった。


「なら、後でお二人の奥様に挨拶しに行かなきゃね」


「やめなさい。また、二人の肩身が狭くなるでしょ」


「ファルネリアがいけないんでしょ!全く……。それで、マルーはどうだった?」


「なかなか、良い筋してるわよ。ねえ、サジ」


「はい、黒魔法はもちろんのこと、既に大半の回復魔法も使えますから治療師としてもかなり優秀ですよ」


「そう……、後はマルーのパーティー、紫の角笛の仲間はどうかしら?」


 私がそう聞くとブリジットが答えてきた。


「魔法剣士のシャルルは文句なく使えるね。それに商人のマリィと修道士のルナも頭の回転が早いから欲しい人材だよ」


「なるほど。じゃあ、雇い主のファレス商会に許可をもらって今回の件に参加してもらいましょう」


「それなら、既に雇い主のナディアから貰ってるよ。なんせレオスハルト王国に一緒に来てるからね」


「それなら、こちらの準備はほぼ終わった様なものね。お爺ちゃん達の方はどうなの?」


「レオスハルト王国領にある各町には、いつでも結界を張れる様にしてある。他の国々も冒険者やクランに騎士団を分散して配置するそうだよ」


「そっか、レオスハルト王国領以外は少し心配ね……」


 私がそう言うと、突然、光る蝶が現れアンクルの姿になりバラハルトに向かって貴族特有の挨拶をしてきた。


「始めましてレオスハルト国王、私はアンクル、よろしくね」


「……ああ、よろしく」


 バラハルトはいきなり現れたアンクルに若干の動揺をしたが、すぐにいつもの国王の顔になった。

 そんなバラハルトにアンクルは微笑みながら喋りだす。


「各町に被害が出ないようには私がするわ。だから、あなた方、代表者はその時が来たら住人達に安心するよう伝えてね」


「ふむ、その件、しかと承ろう」


「ふふふ、お願いね。それと中央からそろそろ話しが来るわよ」


 アンクルはそう言ったと同時に扉がノックされ、ローグ王国から伝令が来たと報告があったのだった。


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