不謹慎な奴
ナイフラッドを使った作戦は思った以上に上手くいった。
俺は黒く萎れて誰だか判別できなくなったダッツの死体を見て溜め息を吐く。
……相変わらずやばい剣だな。
これなら、グラドラスの考えている通りにいくかもしれないが……。
まあ、あれを探すのはあいつに任せて俺はやれる事をやろう。
俺はそう考えサリエラの方を見るとバナールとの戦いは拮抗している状態だった。
あいつも闇の力の所為でかなり強くなっているな。
やはり今のうちにやらないと後々、サリエラに付き纏って最悪なパターンもあるかもしれない。
それなら……。
「アリス、俺を守ってくれよ」
「わかりましたああぁ!」
俺はアリスを連れてサリエラ達の方に向かうと、バナールは俺に気づいてサリエラから距離を置くと俺を睨みつけてきた。
「貴様はまだサリエラを縛るか!」
バナールは俺にそう叫んでくるが、無視してサリエラに話しかける。
「サリエラ、奴には勝てそうか?」
「戦うたびに強くなっている様で……」
サリエラはそう言うと困った顔をしてくる。
そんなサリエラを見て、やはりバナールは危険だと俺は再認識する。
「おそらく、ここでケリをつけないと後々、面倒になる。だからこの戦いで倒すぞ」
「はい!」
サリエラは力強く頷くと再びバナールに向かっていく。
しかし、バナールは攻撃を受け止めながら、隙きあらばサリエラを捕まえようとしてきたのだ。
そんなバナールの行動を精霊が邪魔していると何故か俺を睨んできた。
「貴様が何かしているんだろう!」
俺はそれに答えず、バナールに矢を射る。
なんせ答えても会話にならず俺がひたすら罵倒するだけだから喋るだけ時間の無駄なのだ。
するとバナールは俺が無視してるのが気にいらないのか、サリエラから俺の方に向かってきた。
「サリエラを解放しろ!このクズ野郎!」
バナールはそう叫ぶと俺に向かって剣を突き出してくるが、その剣は途中でアリスのナイフによって防がれた。
「ざんぬええぇーーん!」
「貴様何者だ⁉︎」
「私はあぁ、ただのおぉ、メイドでええす!」
「ちっ、お前闇人か!」
バナールはアリスを睨むと攻撃をアリスに切り替えようとする。
しかし、俺は牽制も兼ねてバナールに矢を射るとバナールは矢を避けた後、俺とアリスを交互に睨んできた。
「くそっ!多人数とは卑怯な!絶対に許さんぞ!」
バナールは急に動きが速くなり、アリスを蹴って吹き飛ばすと、俺に憎悪の目を向けて襲い掛かってきた。
だが、バナールの前にサリエラが立ち剣を向けると悔しそうな顔をする。
「何故、こいつを守るんだ⁉︎」
「守りたいから守るんですよ!」
「くそおおぉーーー‼︎心を操るなんて、なんて最低な奴なんだ‼︎」
バナールが叫んだ後、歯軋りしながら俺を睨みつけてくる。
そんなバナールを見てサリエラは心底呆れた顔をした。
「はあっ、本当に疲れます……」
「安心しろ。もう終わらせる」
俺はそう呟くと力のアミュレットを使用し、バナールに向かっていき力を込めて剣を振り下ろした。
突然、スピードが上がった俺にバナールは驚いた顔をしながらなんとか剣を受け止めると、怒りの形相を浮かべてくる。
「また卑怯な事をしたな!お前は絶対に殺してやる!」
「そっくりそのまま返そう」
「なんだと?」
「闇の力を使ってる卑怯なお前に言われたくない。それにサリエラの為にもお前には消えてもらう」
俺は威圧を最大限バナールに向けて更に攻撃をしていくと、バナールは冷や汗を垂らしながら徐々に恐怖の表情を浮かべていく。
「な、なんだ、この恐怖感は⁉︎お、お前か⁉︎」
「ああ、そうだ。お前は俺を少し怒らせた。しっかり俺の怒りを身体に刻んでくれ」
俺はそう言うとひたすら威圧を込めながら、攻撃し続ける。
案の定、バナールは段々と萎縮をしてしまい動きが緩慢になっていく。
そして遂に隙が出来た瞬間、サリエラが飛び出してきてバナールの脇腹を斬り裂いた。
「ぎゃあああっーーー!」
「これで終わりにしよう」
俺はバナールに向けて剣を振り下ろすが、当たる直前で止めて溜め息を吐いた。
バナールの首筋をナイフラッドが掻っ捌いてしまったからだ。
「アリス……」
「やれそうぅなのでええ、やっちゃいましたあああぁ!」
アリスは倒れて動かなくなったバナールを足で小突きながら、目を見開きニタァっと笑う。
それを見た俺は、倒せたのでよしと思ったが一言だけは言っておくことにした。
「チャンスがあっても俺をやろうとするなよ……」
俺がそう言うとアリスはニタァっと笑うだけだった。
「やれやれ、とんでもない奴を俺に付けてくれたな」
「でも、おかげであの人を倒せましたよ。アリスさんありがとうございます」
「はあぁぁいいぃ!」
「ふう、とりあえずは他に行くか……」
そう思い周りを見ようとしたらグラドラスに声を掛けられた。
「キリク、こっちに来てくれ」
「どうした?ピエロに苦戦してるのか?」
「いや、あれは逃げられた。それより魔王ラビリンスが死んだんだ。君にやってもらいたいことがある」
「まさかそっちの魔核でやるのか?」
「ああ、上手くいけばこの戦いは終わるはずだ」
「わかった」
俺は頷くと倒れている魔王のところに行く。
こいつが魔王か……。
俺は魔王ラビリンスと言われていた者を見る。
頭に水牛のような角を生やしている以外、外見はほとんど魔族と変わらないような姿だった。
そんな魔王だが、肩から腹まで引き裂かれていてグラドラスが言っていたように既に死んでいた。
「味方の魔族には説明してるからいつでもやってもらって大丈夫だよ」
グラドラスがそう言うと、周りにいた魔族が俺を見て頷く。
「同族や人との戦いを我々は望んでいない。魔核を破壊できれば終わると聞いた。なら早く終わらせてくれ」
魔族は無念そうな表情で言ってくるが、そんな後ろでグラドラスは口元を手で抑え、目を瞑って同情する様なポーズをとっていたが、俺に口元がニヤついているのがわかってしまった。
全く、あいつは実験ができて嬉しいぐらいしか思ってないんだろうな。
なんて不謹慎な奴だ。
しかも、失敗しても実行犯の俺の方が皆んなに恨まれるんだからな。
俺はグラドラスを睨みながら頷く。
「……わかった。やってみよう」
俺は心の中でグラドラスを罵倒しながらそう言うと、剣を魔核部分に向かって振り下ろすのだった。
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