卑怯者の戦い

「これはどうなってるの?」


「わからないが興味深いね」


「で、どっちにつけば良いんだよ?あいつら魔王側についてるが操られてんのか?」


 後ろから続いて入って来た連中も中の状況を見て迷った顔をしだしていると、倒れてる魔族わわ介抱していたノリスが俺達に向かって怒鳴ってきた。


「おい、お前らさっさと突っ立てないで来てわしらを助けんか!」


「うわあっ、ありゃ、ノリスのじじいだわ……」


「どうやら操られてはいないわね……」


 俺達はノリスの方に向かうとノリスが聞いてもいないのにすぐに説明しだした。


「魔王バーランドの考えに賛同した魔族が引き起こした反乱じゃ。目的は魔王ラビリンスの魔核と魔王バーランドの魔核を使って、魔王を超える化け物を作ろうとしてるようじゃぞ」


「魔族も一枚岩じゃないってことか。しかし、死んだ後も面倒な事をしてくるな……」


「本当はもっと詳しく聞けそうじゃったが、突然、ダークエルフの女が魔王に一撃を入れて今はあの状態じゃよ」


 ノリスが不満そうに魔族に介抱されている魔王ラビリンスらしき人物を見る。

 すると話しを聞いていたミナスティリアが皆んなに向かって指示を出した。


「皆んな、私達はまず魔王信者と巨人の右腕を倒すわよ!」


 ミナスティリアがそう言うと皆んな頷き、武器を魔王信者と巨人の右腕に構える。

 するとカタリナが話しを聞いていたらしく仲間達に下がれとジェスチャーし、俺達と距離をとりだした。

 しかも、下がった後に俺達が入ってきた扉と別の扉から魔族が大量に現れ、魔王信者と巨人の右腕の横に並んできたのだ。


「おいおい、魔族の区別はつかねえぞ……」


 オルトスは味方の魔族と敵の魔族を見て頭をかいていると、近くにいた魔族の一人が俺達に大声で声を掛けてくる。


「魔族は魔族同士でやる!だから、我らには手を出すな!」


 魔族がそう言うと向こう側の魔族も味方に斬られたくないのか端に寄りだした。

 そんな中、サリエラが俺の方に駆け寄ってきた。


「キリクさん!」


「サリエラ、大丈夫だったか?」


「はい、ただあの人がかなりしつこくて……」


 サリエラは嫌そうな顔でフードで顔を隠したバナールを見る。

 そんなバナールは俺を見つけるとフードの下からでもわかる程、俺を睨んできた。


「やれやれ、ここで決着をつけなければダメか……」


「いえ、あの人は私が戦います。どうやら闇人化してるようで力が上がっているんですよ」


「そうか。では俺はもう一人を相手にするか……」


 バナールの隣りで同じく俺を睨んでいる闇人化したダッツを見る。

 それから各々、戦う相手を決めようとしている中、メリダが巨人の右腕の先頭にいた壮年の男に向かって叫んだ。


「ベネット!何で仲間を裏切ったのよ!」


「お前には俺達の気持ちはわからんよ……」


「言わなきゃわからないでしょう!」


「……知りたければ俺達を止めてみせろよ」


 ベネットはそう言うと、持っていた剣を突然床に突き刺したのだが、その瞬間、ベネットの前の床に穴が開き、中から虫系の魔物が大量に現れ巨人の右腕を守るように囲った。


「ちっ、虫野郎まで現れたか。なら、虫は俺達が引き受けるぜ」


 ガラットがそう言うと、風の乙女と蒼狼の耳がガラットの側に立ち武器を構えた。


「仕方ないからうちも手伝ってあげるわよ」


「それにあたし達、勇者パーティーがいれば百人力だね」


「そりゃありがたいね」


「じゃあ、僕はピエロの闇人を相手にするよ。アリスはキリクのフォローを頼むね」


「はああぁぁい!」


「それじゃあ、私達、白鷲の翼でダークエルフをやるわ。残りはフォローと魔王を守って」


「わかったわ。全く魔王を守る事になるなんて思わなかったわよ……」


 マーズは呆れたような顔でいつも行動してるトランゼルを含むメンバーと下がっていく。

 そして準備が整うと同時にどちらともなく動きだしたのだが、早速ダッツが俺に向かってきた。


「この嘘吐き野郎があ!」


 ダッツはそう叫びながら俺の首目掛けて剣を振り下ろしてくるが、そのスピードは前と比較にならないぐらい速かった。

 そんな攻撃を俺はなんとか避けると反撃する為に、ダッツの間合いに踏み込んでいく。

 すると、ダッツは凄い勢いで後ろに飛ぶと警戒するように距離をとった。

 その為、俺は再び向かっていくが何故かダッツは距離を取りつづける。


「……ダッツ、何を警戒しているんだ?」


「卑怯なお前は何をしてくるかわからないからなあ‼︎」


「何度も言うがそれは間違いだぞ」


「うるせえ、悪い奴は皆んなそう言うんだよ!」


 そう叫んで睨んでくるダッツを見て俺は内心驚いていた。


 相変わらずだが、会話が成立しているとなるとダッツは闇の力に耐えきったのか?

 まあ、考えてもしょうがないし、さっさとケリをつけよう。

 俺は後ろで不気味に笑っているアリスの元までいき、ある事を小声て伝えると再びダッツに向かっていく。

 そんな俺の行動にダッツは警戒度が上がったのか戦ってる最中、ちらちらと視線をアリスに向ける。

 それを見て俺は気づいた。


「お前、闇人化したは良いが臆病な部分が上がったのか?」


「なっ⁉︎ふざけんな!」


 ダッツは慌てて否定するが、俺がポケットに手を入れ対魔族薬を取り出すと目を見開いて後ろに飛んだ。


「当たりか」


「ふ、ふざけんな!卑怯者め‼︎」


「卑怯者ね……。要は何をされるか怖かっただけなのか」


「ふ、ふざけるなああ!お前は最低の卑怯者なんだよ‼︎」


「やれやれ、そんなに卑怯者にしたいならなってやるよ」


「はっ?」


 ダッツはそう言った瞬間首に激痛を覚え、手で痛みのあった首を触ると血が大量に付いていた。

 その瞬間、ダッツは力が抜けてふらついてしまう。


「がふっ(なんだ?)」


 更に胸に痛みが走ったので見ると剣が突き刺さっていた。

 それがダッツが見た最後の場面だった。

 俺はダッツの胸に刺さった剣を抜くとアリスに声を掛ける。


「アリス、見事だったな」


「ありがああとうぅぅござああぁいまああす!」


 アリスはそう言い腕に抱いたナイフラッドを撫でるのだった。


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