作り話しの可能性

 ロゼリア文明の話しはアリスが戻って来てから始まった。


「まず、前に神々の話しはしたがあれは作られた話しの可能性があるんだ」


「えっ、そうなんですか?」


「ああ、そもそもあの話しは聖霊神イシュタリアがこの世界に送ったエルフ以上に長寿で、背中に羽が生えてる聖人がこの世界に広げた話しなんだ」


「そうだったんですか……。でも、その聖人が広げた話しが何故作り話しの可能性があるんですか?」


「それは旧ロゼリア文明の存在にある。旧ロゼリア文明は実際に文字や魔導具の一部などが発見されていているから、その存在は間違いなくあるんだ。しかも書物を調べた結果、神々が介入する前だということがわかっている。この時点で聖人は嘘をついている事になる。なんせ神々がこの大陸に介入する前は、ここに住んでた連中の知識は低かったと言っているんだからな。何故そんな事を言ったと思う?」


 俺はサリエラに疑問を投げると、しばらく考えた後、眼を見開き俺を見つめた。


「……まさか、神々がロゼリア文明を滅ぼしたからですか?でも、どうして……」


「書物を見た限り神々を脅かすぐらいの文明力を持っていたから……というのが俺の考えだな」


「そうなると神々って悪い神様なんですか?あっ、だからキリクさんは場合によっては神々を否定すると……」


「まあ、そういう事だ。だがな、これはあくまで俺の考察ってだけだ。他の連中の考えはまた違う」


 俺はそう言ってグラドラスを見るとニヤッと笑って喋り始める。


「僕の考えはキリクと逆で旧ロゼリア文明は何か悪さをして、神々の怒りを買ってしまったんじゃないかと思っているんだ。まあ、結局どっちでも神々にとっては危険という理由で隠す意味はあるんだけどね」


「……なるほど。ちなみにその旧ロゼリア文明の技術はどれくらいの事ができるんですか?」


「少ない資料を読み解くと、天まで届くほど高い建物が建っていたり、空を鉄の船が飛んでたらしい。特に魔導具は今なんかより比較にならないぐらい進んでたみたいだよ」


「それは確かに神々も気にするかもしれませんね。でも、空飛ぶ船ですか……乗ってみたいですねえ」


「ああ、乗ってみたいし是非構造をこの目でみたいよ。ちなみに中央はその技術の一部が使われていると言われているんだよ」


「中央がですか⁉︎」


「そう、だからこそ早く僕は行きたいんだけどね」


「あれ?グラドラスさんならもう中央に行けるんじゃないですか?だって立派な功績を残してるわけですし」


「普通に行くならもう行けるんだけど、それだと僕が見たいものが見れないんだよ。だから今回、ちょっと偉い人と取り引きしててね」

 

「それが、今回のダンジョンに潜るのと関係してるのか……」


「当たりだよキリク。まあ、今は詳しく言えないが色々やってどれか一つでも成功すれば中央の……いや、旧ロゼリア文明への道は切り拓ける。だから、二人とも旧ロゼリア文明をもっと知りたかったら頑張ってくれたまえよ」


「はい!」


 サリエラは勢いよく答えるが俺は怪しんだ目でグラドラスを見る。

 なんせグラドラスの笑っている顔があまりにも胡散臭い顔をしていたからだ。


「そんな尊敬するような目で見つめないでくれよ。照れるだろ」


「……やれやれ、とりあえず旧ロゼリア文明がどういうものかはわかっただろう」


「はい、でも今度は中央の事が気になってしまいましたよ」


「まあ、それに関しては前にも話したが、実際行って確かめないとわからないってやつだ。なあ、賢聖殿」


「そういうことだね。ところで今の話しを聞いてサリエラ嬢は神々への考えは変わったかな?」


「……正直、まだなんともですね。けれど私にとって精霊は家族みたいなものですから、その親である精霊神オベリア様が悪い方だとは思えません」


「なるほど、どうやら僕よりの考えらしいね」


 グラドラスはそう言うと俺に向かってドヤ顔をしてくる。


「……別に俺以外がどう思おうが関係ない」


「でも、君ぐらいだよ。神々が悪だって言ってるのは」


「別に悪だとは言ってない。差別される様な加護を作ったり、必要な時には何もしてくれない役立たずだと少しだけ思ってるだけだ」


 俺がそう吐き捨てる様に言うとグラドラスもサリエラも黙ってしまった。

 そんな中、アリスはニヤァッと笑いながら俺の近くに顔を寄せると大袈裟に匂いを嗅ぎ出した。


「んうううぅっ!闇の芳しい香りがしまああぁす!良い匂いですう!」


「……やれやれ。これ以上いると俺も頭がおかしくなりそうだ。俺はもう帰るぞ」


「わかった。また連絡するよ」


 俺とサリエラはそれから宿に戻ったのだが、その夜、俺は久しぶりにあの夜の日の事を夢に見てしまった。

 燃え上がる城と町に大切な人達……。

 そして嫌でも理解してしまうのだ。

 加護がなければ本当の役立たずは自分一人だけなのだと。



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