否定される神々

 あれから、俺達はグラドラスの泊まっている宿に向かった。


「おい、なんでここにこいつがいんだよ⁉︎」


 オルトスは心底驚いた顔でアリスを指差すと、グラドラスは手を叩きながら笑い出した。


「くっくっくっ、オルトスがそんな顔をするなんて良い仕事をしたじゃないか、アリス!」


「ああありがとうぅーーございまぁあす‼︎」


 アリスは満面の笑みを浮かべながらオルトスに近づいていくが、オルトスが拳を構えるとすぐに俺の後ろに隠れてしまう。

 しかし、オルトスは今だに構えるのをやめず、むしろ俺の後ろを睨みつけ歯軋りしだしていた。

 おそらくアリスが挑発しているのだろうが、俺も巻き込まれたくないので、気づかないフリをながらグラドラスに声を掛ける。


「どうやら、進軍は二、三日後らしい。俺達はそれでどうするんだ?」


「僕らはダンジョンに入り込もうとしている、ネイア、ブルドー男爵、闇人のステフ、そして穢れた血縁者……纏めて魔王信者でいいね。連中がやろうとしている何かを阻止して魔核を手に入れるのが目的だ」


 グラドラスがそう説明するとブリジットがすぐに反応した。


「待っておくれよ。そんな大事なことならあたい達でやれば良いじゃないですか?」


「勇者パーティーが動くと目立つだろう?逃げまわってる魔王信者はそれこそ手の出せない所まで逃げ込んでしまうよ」


「……な、なるほど」


「だから勇者パーティーには気づいてないフリをして正攻法で挑んで欲しいんだよ。まあ、それでも来たいなら来ても良いけど、そもそも難解なダンジョンに挑む戦力を割いてまでやる必要ある?それとも元がつく勇者パーティーの僕ら如きじゃ無理だと?」


「そ、そんなことは……」


 ブリジットはグラドラスの言葉に思わず何も言えなくなってしまうが、今度はサリエラがグラドラスに話しかける。


「でも、キリクさんも参加するんですよね?危険じゃないですか?」


「ああ、それなら安心したまえ。この僕やオルトスにオリハルコン級が在籍するクランが参加するから進軍メンバー並みに安心安全な環境だよ。それにキリクにはアリスを専属に付けるから更に万全だ」


 グラドラスはそう言ってアリスを見ると、アリスは俺に満面の笑みを浮かべ覗きこんでくる。

 正直、闇人を俺に付けるなと言いたいところだが、アリスの実力はダマスカス級はあるのでいないよりはマシなのである。

 俺はアリスに方を見ると目をギョロギョロ動かしながら茶葉が入った缶を俺の頬に押し付けてきた。


「熱々のおぉぉ、紅茶飲みまああす?」


「……あの髭もじゃに入れてやれ」


 俺がそう言うとオルトスはギョッとしながら今度は俺を睨んできた。


「てめえ、何言ってんだ⁉︎闇人の入れたもんなんて飲めるかよ!」


「安心しろ毒なんて入ってないぞ」


「そういう問題じゃねえ!」


 オルトスは相当、アリスの入れる紅茶が飲みたくないのか遂にはブリジットを連れて部屋を出て行ってしまった。


「残念でえぇーーす‼︎」


 アリスは全く残念そうな顔をせずにそう言うと、俺達を見てきたので、グラドラスは人数分の紅茶を頼むとニタァッと笑って紅茶を用意しに部屋を出て行ってしまった。


「やれやれ、それで連中の動きはどうなってるんだ?」


「今は迷宮都市ラビュントスの空き家に潜伏中だよ。多分、ダークエルフ待ちって感じだね」


「それもアリスからの情報か?」


「ああ、彼女の加護は魔獣使いで今、小型のスパイダーを使って監視してるんだ」


「居場所がわかってるなら、さっさと捕まえれば良いんじゃないか?」


「それだと連中の知ってる裏道がわからなくなるだろう?」


「なるほど、裏道ってのはそういうことだったのか。だが、魔王がいる場所まで案内させるのは危険すぎないか?」


「当初、気をつけるべきはピエロの闇人ステフぐらいだったからねえ。今は、強さが未知数のダークエルフがいるから早めに対処するつもりだよ」


「その方が良いだろう」


「ちなみに魔王ラビリンスにあったら色々と聞くつもりだからよろしく頼むよ」


 グラドラスはそう言って自分の胸の部分を指で軽く叩く。

 要は俺の呪いの解き方を聞くつもりなんだろう。

 まあ、進軍メンバーでない俺達が魔王のいる所まで行けるとは思ってはいないので俺は適当に頷いておく。

 するとグラドラスは満足そうな顔をした後に、テーブルに積まれている古びた本を一冊取ると俺に渡してきた。


「目を通しておいてくれ」


 俺はそう言われてタイトルを見て目を細める。


「旧ラドニア文字、千五百年以上前の本だな。しかし、神々の嘘……ね、中々問題になりそうなタイトルだな」

 

「でも面白いよ。なんせ、ロゼリア文明をあると言っちゃてるんだからね」


「勇気がある作家だな」


「まあ、その当時はロゼリア文明の話しは禁止されてなかったみたいだよ」


「そうなると色々と面白そうな事が書いてあるだろうな」


 俺がタイトルをなぞり、早速読もうとすると、サリエラが興味深そうに覗きこんできた。


「あのう、ロゼリア文明って何ですか?」


「ロゼリア文明の話しをするのは良いが、聞いたら後悔するかもしれないぞ」


「えっ、どういう事ですか?」


「サリエラの信仰する精霊神オベリアを場合によっては否定するかもしれないんだからな」


「ええーー⁉︎」


 驚くサリエラにグラドラスはニヤニヤしながら声を掛ける。


「くっくっく、エルフのお嬢さん。一度深淵を覗いたら戻れなくなるよ」


「深淵……」


 サリエラは不安そうな顔で俺を見つめてくるが、自分で考えろと首を振るとしばらくして口を開いた。


「……お願いします」


 サリエラがそう言うとグラドラスは仲間が増えるのが嬉しいのか、狂気じみた笑みを浮かべるのだった。



以上です

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