到着する進軍メンバー

 翌日、進軍メンバーが迷宮都市ラビュントスに到着した。

 俺とサリエラは二つの勇者パーティーに会いに、進軍メンバーが拠点にしている屋敷に向かったのだが、皆んなの姿を見て驚いてしまった。

 何故なら皆んな包帯だらけでソファや床に倒れていたからだ。


「おいおい、大丈夫なのか……」


 俺がそう呟くと、ソファで横になっていたミナスティリアが目を閉じながらも答えてきた。


「まあ、短い期間しかなかったからかなり無茶をした感じね……」


「それで手答えは?」


「皆んな一ランクは上がったんじゃないかしら。特にミランダ達は目覚ましい成長をしたわよ」


 俺は折り重なる様に隅で倒れているミランダ達を見ると、ミランダが勢いよく立ち上がり俺に抱きついてきた。


「うわあぁーーん!キリク、聞いてよ!あたし達が強い魔物と戦ってる最中、先輩達が常に後ろから攻撃してくるんだよ!酷いよね!」


 ミランダは涙目で俺に訴えてくるが、俺は何も言えなかった。

 何故なら俺がミナスティリアにやっていたやり方だったからだ。


「……まあ、頑張ったな」


「ええっ⁉︎期待してた反応と違うよ!頭をよしよしして頑張ったねって言ってよ!先輩がそう言ってくれるって言ったから頑張ったんだよ‼︎」


 俺はミランダにそう言われミナスティリアを睨むと、目を閉じたまま黙り込んでしまった。


 やれやれ。


 俺は仕方なく頭だけは撫でてやるかと手をミランダの頭に乗せようとすると、リリアナがミランダの脇腹に頭突きをして吹き飛ばしてしまった。


「痛あーーい‼︎何するんだよ⁉︎」


「常に死角に気をつける。甘々ミランダはできてない」


「今は良いでしょ‼︎」


「ダメ、だから撫でられる権利は私のもの」


 リリアナはそう言うと俺の方に頭をぐいっと出してくる。

 だが、そんなリリアナの頭に呆れた表情を浮かべたフランチェスカが拳を落とした。


「ふぎゃあっ!」


「全く、まだ体力が余ってるみたいですわね。なら、二人とも庭に出て鍛錬再開ですわ」


 フランチェスカはそう言うと真っ青な顔で逃げだそうとしたミランダとリリアナをあっという間に捕まえると部屋を出て行ってしまった。


「進軍はすぐなのに大丈夫なんでしょうか?」


 サリエラが心配そうに三人が去っていった扉を見ていると、やっと起き出したミナスティリアが手をパタパタ振って大丈夫とジェスチャーする。


「あの子達は見た目ほどダメージはないから大丈夫よ」


「……それなら良いのですが」


「それよりも穢れた血縁者と魔王信者の件を聞いたけど相当厄介ね。キリクはグラドラスやオルトスと一緒に行動するのよね?」


「ああ、賢聖殿が良からぬこと考えてるみたいだから大丈夫だろ。正直、敵より味方の方が怖いぞ」


「ふふふ。まあ、グラドラスならきっと何か良い方法を考えてるでしょう。ただし、ダンジョンで魔王信者に会う様なら私達がやるからって伝えておいてね」


「わかった。後、進軍メンバーの方針は決まったのか?それも伝えておきたい」


「魔王ラビリンスは討伐するわ。ただし迷宮核は破壊しない方向よ」


「まあ、迷宮都市ラビュントスで取れる素材や魔石の量、それに住んでる人々の事を考えるとそうなるか……」


「ええ、それが進軍をする上での一番の許可条件だったからね。それでこの魔王討伐が終わったらなんだけど、お偉方がついに中央を調べはじめるみたい」


「やれやれ、賢聖殿はいったい何をやったんだろうな」


「でも、これで胡散臭い中央の実態が調べられるわね。あっ、中央といえばノリスがあなたの事を探してるわよ」


 ミナスティリアがそう言い終わると同時にノリスが、扉を勢いよく開けて部屋に入ってきた。


「キリク、お前レスターの研究ノートを持ってるらしいな」


「……ああ、一応報告書には要点をまとめて出してるがノートを見たいなら出すぞ」


 俺は収納鞄からレスターの研究ノートを出すと、ノリスはあっという間に俺の手から引ったくり顔を押し付けるように読み始めた。

 

「うおおぉー!レスターの奴め、面白い事をしておるわい‼︎」


「そのレスターだが、現在行方不明だ。居場所を知ってるか?」


「奴なら大丈夫じゃ。魔王信者に狙われたから、今は何処ぞの貴族に匿われてると手紙が来た。それで研究ノートを見つけて欲しいと書かれていたんじゃ」


「なら、そのままノートは取っといてくれ」


「わかった。ところでキリク、ノートを見て疑問に思ったんだが、魔族じゃなく魔王が魔核を取り込んだらどうなるか想像できるか?」


「魔王が魔核を?」


「そうじゃ、魔王は強力な力を持つ魔族に魔神グレモスが力、つまり魔核を与えて魔王に進化させたって事じゃろう」


 ノリスはそう言ってレスターの研究ノートを軽く指で叩く。

 どうやらレスターの研究ノートを少し読んだだけでそう結論づけたらしい。

 流石だなと俺が感心していると再びノリスが話し始めた。


「じゃあ、またその魔王に魔核を与えたらどうなるんじゃ?耐えられなくて破裂?更に力が増す?暴走?それとももっと他のものに進化?考えただけでわくわくせんか?」


「……いいや。余計な心配が増えただけだな。だが、その考えだと魔王信者の行動は魔王ラビリンスにとってはどうなんだろうな?」


「魔王ラビリンスが望んでないなら迷惑かもな。なんせ魔王自身で実験しようとしてるんだからな」


「なるほど、まあとりあえず連中を魔王ラビリンスに近づかせてはいけない事は確定だな」


 俺がそう言うとノリスと話しを聞いていたサリエラにミナスティリアも大きく頷くのだった。


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