級長との日直当番
「おはよう!って、お二人さん今日もラブラブだねー」
「もうー!!雫ったらそんなんじゃないってば」
教室に居た中山が二人で登校しているのを茶化してくる。少し距離を取っていたが中山は俺らが一緒に登校していることを唯一知っている。
「ごめんってー」
全く仲のいい二人だな。
「そいや。一条~今日、日直だぞ。おつかれ」
「……えっ、まじか」
日直表で確認すると俺の順番が回ってきていた。
くそっ!不覚だった。今日休めばよかった。
面倒くさい教室掃除と黒板消しなんて引き受けたくない。
俺の学校の日直は二人。クラスメートは四十人なので一ヶ月に出席番号が早いため二回、回ってくる。
分かっていても、もう一人に負担は掛けれないから、結局俺は学校に来ていただろうけど。
循環式はいいのだが、クラスメートが偶数だから相手は変わらないのだ。
俺の相手はまさかの学級委員長である
まあ、言わずと知れた名家の娘で無論、成績優秀、スポーツ万能と完璧超人のような人物である。
何度か放課後、日直で一緒に片付けなどはしたことがあるが、完璧故に結構遅くまで残される。
ニート性がある俺は一刻も早く帰宅したいのだが、そうはいかない。
「まあ、いいか」
自分の席に着いて今日授業で必要な事物を引き出しの中に収納する。
「おーい。かずやー、昨日の『俺の幼馴染がこんなに可愛いわけがない』の最終回見たか?」
「まあ、一応見たけど。原作と話が違いすぎて微妙だったな」
「確かにな」
御門みかど真也しんや。俺の一番の友達と言っても過言ではない。
こいつが話かけてこなければ俺は間違いなくぼっち学校生活を送っているようになっていただろう。お陰で俺の周囲には数人の友人がいる。
過度なアニメヲタクで毎回アニメを薦められ、家で見るように促されている。
どうせ、家ですることも無いし暇潰しには丁度いいのだがな。
真也の他己紹介はこの辺にしといて、とりあえず親友という事だ、学校一の。
「席につけー、ホームルーム始めるぞ」
先生の号令と共に、みんな一斉に席に戻る。
「来週は定期試験だ。この一週間体調を崩さないように。他の業務連絡は特にない。以上」
『おいっまじかよ』『もう来週?』などとみんなの感嘆する声が教室中に響き渡る。
中学生はぼっちの極みで暇を持て余していた身であった俺は高校内容までの予習を済ませておいたので、定期考査は造作もない事だが、今からまた始まるのか。
『質問責め』が。
最初の定期で上位層に食い込んでしまった為、勉強出来ない奴の宛になってしまったのである。
特に葵の周辺の友達から。
「なあ。一条さんや~勉強教えてくれよー」
ほら、見たことか。ホームルームが終わった瞬間にすぐに来やがったぞ。
定番のようなものだ。もう慣れている。
俺はこの現状を受け入れるしかないのだ、皮肉なことに。
「まあいいけど、前みたいに寝るなよ」
「努力します!」
敬礼ポーズを取るが、心配だ。
前回、『勉強絶対するから!』とか言いながら開始五分で寝た中山が今回も寝ないとは限らないからな。
授業は淡々と進んでいき、今日の日程は全て終了した。
「今日はここまで、解散」
『今日どこ行く?』『カラオケとか行かね?』日直ではないクラスメートは直ぐに家に帰れるのか、羨ましい。
ダメだ、ニート性を少しでも緩和しなければ。
ただでさえ人見知りで困っているのに……これ以上弱点を増やす訳にはいかないな。
「一条君、黒板やってもらってもいい?」
「も、もちろん」
おどけた返事になってしまったが、言われた通りに黒板消しを手に持ち黒板を隅々まで綺麗に掃除する。
まだ教室には数人の人影があるが、級長は用事があるのか今日は急ぎめだ。
教室内の掃除を一人で始め、四十個ある机を後方へ運んでいる。
「流石まじめだな。重そうだし、早く終わらせて手伝うか」
この量の机を運ぶのは一人では困難である、置き勉しているやつもいるしな。俺を含めて。
一人でやらせるのは申し訳ない。
スピードを上げて残りの分を全力で終わらせる。
「手伝うよ」
「うん!ありがと。……うわぁっ」
俺の方に一瞬視線を向けたからか、踵に落ちていた教科書に気づかず、つまづき後方へ倒れる。
「危ない!」
咄嗟に級長の背中を押し止めて転けるのを回避するが机を持っていたため実際かなり重く、全力で押し耐えるのが精一杯だ。
別に級長が重い訳じゃないぞ、置き勉してる机が重いんだからな、勘違いするな。
「だ、大丈夫か?級長」
「う、うん、ありがと」
級長を起こして再び級長と掃除を行うが、ちらちら視線を感じるのだが。
気のせいか、徹夜の一日後だからきっと疲労が蓄積されて疲れてるんだよな。
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