第9話 偽商人? を撃退

 しばらくして、母国からまとまった量の入荷がありました。それを完売させることができたので、まとまった現金が手元に残りました。

 父からの手紙で、支店を出すようにせかされていたので、これと父からの融資を元手に支店を出そうかと思います。


 陛下が訪れるのは月に一度、一週間前には知らせてくださいますので、王都を散策しながら場所探しに時間を使いました。

 離宮近くのお店は王宮正面から少し離れているので、王都の一等地に小さなお店を出すことにしました。ここは貴族用のお店にして、容器などにお金をかけようと思います。


 母国で培った伝手を最大限に使って、信用できる店長を任せられる人材を呼び寄せました。

 彼もビジネスチャンスとばかりにウキウキしているようで何よりです。新しく雇う従業員の教育などでとても忙しくなりました。


 貴族向けのお店が軌道に乗った頃、元々のお店はこの機会に閉鎖して、私たちは卸しに徹することにしました。

 騎士たちから、同じ商品が安価で買えると噂が出てしまったのです。


 貴族は見栄を張る生き物だと聞いていたので問題ないと思っていたのですが、一号店で商品を大量購入して、見た目だけ豪華な粗悪な入れ物に入れ替えて転売する人たちが出て来たのです。


 元々のお店は庶民的な商店街にありますので、周囲のお店にそっと置いて頂けることになりました。庶民のみの限定販売です。

 これらが他所の店内にあると、貴族の方々や転売目的の方は気が付かない事でしょう。


 また高貴(笑)な方が来られても困りますので、今までの庶民のお客様は、これまで通りご購入いただけるように致しました。

 利益は減りますが顔見知りが来ては大変だとわかりましたし、知名度も充分確保できました。


 ご厚意で時々お店の方に部屋を貸して頂き、取り扱い店からの注文の受付などはそこですることにしました。


 ある日、身なりの良い二十歳くらいの青年が商談に来ました。

 そのような方たちの相手は店長に任せ、普通では私にはたどり着けないはずですので、なかなかの情報通のようです。


 私を見て非常に驚いているようですが、すぐに冷静になり彼の商会での独占販売計画を持ちかけて来ました。

 内容を聞く限り、こちらに全く利点はありませんでした。本当に商人なのか疑わしいです。騙せるとでも思っているのでしょうか。


 最終的には女だからと幼いからと下に見て脅しをかけてきたので、護衛に追い払ってもらいました。今は常に護衛付きです。

 利にならない商売を商人がするわけありませんのに。一体何だったのでしょう。


 後日、元最大手だった商会の元締めが訪ねてきて、息子の非礼を詫びて頂きました。

 彼も男爵令嬢に骨抜きにされた方でした。再教育として自分で商売を始められるだけの資金を渡したが、上手くいかずに焦っていたそうです。


 私と同じ時期に化粧品や雑貨を売るお店に挑戦していたそうです。残念ながら、彼に商人としての才能はなさそうです。

 従来品で貴族とのコネを利用して店の利益を上げるつもりだったようですが、貴族には元から贔屓にしているお店があるのです。


 しかも、そのコネさえ自分の失態で消失しているも同然です。認識の甘さと市場調査が不十分であったとしか言いようがございません。

 私に辿り着けたのも、父親の伝手を利用しただけのようです。なるほど納得ですね。


 父親は今回の件で彼を放逐すると言っていましたがどうなることやら。この方自身はまともな大人だったので、何かあった時には頼りましょう。

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