第6話 半年経過
半年後。彼らは優秀な使用人へと変貌を遂げました。後は繰り返し訓練をすることと、経験が必要だと思います。
食事もお茶の時間も彼らが経験を積めるようなものに変更致しました。護衛たちは語学には苦戦しつつも、筆記試験に合格しました。
私が家庭教師からこの国について学ぶことも終了したのですが、相変わらず殿下の訪れもないので、好きに過ごしております。
離宮に関わっていない方で、この国で私の顔を知っているのは出迎えた方々とあのご機嫌損ねだけなので、余裕が出来た時間を町で有意義に過ごしております。護衛の経験にもなりますしね。
父からの密命で私はこちらで商売を始める予定ですので、その為の情報収集を行っております。
手っ取り早く稼ぐなら貴族向けのお店の方が良いのでしょうが、この間の混乱で国内有数の裕福な貴族たちが多額の慰謝料や賠償金の支払いで、買い物を控えている情報は得ております。
私の得意な一般向けにした方が良いでしょう。
一般の方は装飾過多な料理を特別好んでいる訳ではないこと、特別な日にだけそう言った料理を楽しむことを知りました。美しい装飾料理は高価なので当然かもしれません。
『芸術の国』らしく、花屋が多い事にも気が付いたのですが、母国と似たような普通の品揃えであることを知りました。
花屋の店員に尋ねてみると、普通の家に大輪の花は浮くと笑われてしまいました。大輪の花などはプロポーズや記念日などの特別な日に奮発して買うそうです。
それと、一番驚いたのは化粧品がどれもとても高価だったことです。
『芸術の国』では、自国で化粧品の生産をしておらず、全て『スローライフの国』からの輸入に頼っているそうです。
母国もそれはあまり変わりませんが、母国は様々な面で『スローライフの国』とは協力関係にあります。
ですので、一部輸出入に関しては関税がかからない条約を結んでおります。
『芸術の国』は関税を支払い、最初から高価な瓶に詰め替えて輸入していて、かなりの輸送費もかかり、とても高価な物になっていました。
後は『芸術の国』らしい可愛らしい雑貨を見て回り、職人と会うことも出来ました。
見た目を重視するあまり、実用性に欠けていることに悩んでいる職人にも出会えました。
これらの情報で、私のこの国での商売の方針が決まりました。
次は売る商品の用意です。空いた時間で使用人と作成を始めました。
女性使用人は四人。一人はカレン。彼女は面白い発想をしていて、私と趣味もあったので、本格的にデザインの勉強をさせてみました。お店のロゴも彼女に任せます。
一人はとても器用で上手に髪を結えるヴァルハラ。アイデアも豊富で裁縫も好きだと言うので、デザインはカレンと相談して貰い、布小物を作って頂きました。勿論実用性のある物です。
ヴァルハラはとても器用なので、新しい物でも作り方の基本とコツを教えると一人でせっせと作るようになりました。
カレンと一緒にアイデアを出しては作るので、陛下が訪ねてくる時以外も、わたくしの髪は毎日とても華やかです。この髪飾りも販売してしまいましょう。
アリーナも器用でしたので、ヴァルハラ監督の元、同じ様に小物を作って貰っています。
マーガレットは若干飽き性で大雑把なタイプでしたので、直ぐに完成するような籐かごや、あまり数量を用意しない予定の様々な物に浮気しつつ作成して貰い、飽きない様に工夫しました。
男性使用人は九人。常駐の文官カーマインには商会の運営に必要なことを覚えてもらい、実質店長のような仕事をして貰う予定です。
庭師には化粧品作成に必要な、ハーブや薬草を育てて貰っていましたが、料理人の要望もあって野菜も育てています。
今では庭師と言うよりは農家のようです。観賞用の花は人通りがある場所のみで、それ以外は実用重視の庭になってまいりました。
『芸術の国』ではありえない庭になり過ぎて、笑えます。けれど、そこは庭師の本領発揮とでも言うのでしょうか。
ハーブや薬草を生かした、自然に近い和む庭も出来上がりました。
その奥にはナス、トマト、キュウリなどが艶々と実っております。次は果樹にも手を出したいそうです。
この庭は何処へ向かっているのでしょうか。化粧品にも転用できるものがあるので、賛成です。
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