第2話 十二歳ですが結婚します
王族が外交を面倒臭がると言う理由から、他国との交流はあまり多くありません。
最近では訪れる人も少ない上に、国土の大半に人避けの魔法をかけてしまっています。
『魔法の国』を訪れたことのある人でないと、足が自然に国土の外へ向かいます。
余程の強運が無ければ人が住む場所に辿り着けなくなっています。極まれに強運に恵まれる方がいますが、その場合は大歓迎されます。
そもそも、国土全体に張り巡らされた結界で、我が国や人に対して悪意のある人は入って来られないからです。
出るのは自由ですが、大陸の魔法使いの九割は『魔法の国』所属で、魔法は門外不出扱いです。
魔法や国に関係することは、出国時に話せなくなるよう契約魔法が施されます。
魔法や魔法具は扱いによっては戦争に利用できることもあり、厳重に魔力なしの方々が管理してくれています。
その為、『魔法の国』は謎に包まれた閉鎖的な国と認識されています。
過去には我が国の乗っ取りや魔法使いを誘拐しようと考えたり、魔道具を盗もうとして訪れた他国の王族や外交官もいたそうです。
結界に阻まれて誰も入って来れなかったそうですが、そういう方々は慌てることなく問答無用で追い返したそうです。
そんなこともあったりして、謎に包まれた国扱いなのだそうです。
まぁ、言えませんよね。国同士の外交にかこつけて訪れた国で、乗っ取り計画とか人さらいの計画が入国前に発覚し、入国も出来ずに追い帰されたのですから。
今もちゃんと付き合いのある国には、そうは思われてはいないそうです。
自由人が爆発している国だと思われているそうです。
これでよく国としてやっていけるな……と後に出来た他国の友人にも言われました。
前世の知識があるだけに、私もそう思います。
但し、魔力なしの人々がいなければ、絶対に国としては成り立っていないと断言できます。
途中からは学校に通い始めました。生活に必要な必修科目もありましたが、学びたいことがあれば学びたいだけ学べる学校でした。
学校には私と同じ様な転生者が何人もいたので楽しく通うことが出来ました。
そこで気が付いたのですが、私程度の浅い前世の知識では、この国で新たにできることは無さそうです。
今でも役立ちそうな知識は、販売などの商売に関係するものでした。
という訳で、八歳にして商売を始めるべく、情報収集を始めました。
店舗の開店に必要な事、商品の仕入れ、利益、商品開発、新人研修、どうすれば商品が売れるかなど、聞かなくても知っておりました。
知識と経験は本当に素晴らしい財産です。父へ計画書を提出し、投資をして貰えることになりました。
私は語学も得意だったので、将来は国を跨いで商売をすることになりそうです。
転生者は国王には向かない人が多いので、私の希望もあり、既に候補からは除外されています。
自由人の面倒を見るのに、真面目で常識人な人はノイローゼになりやすいとか。自由人の対策は自由人がするのが一番いいそうです。
今のままですと、私のはとこが程よい自由人なので、国王に向いているとひそかに期待されております。
言ってしまうと逃げられるかも知れませんので、秘密です。
兄と姉を見て気が付くかも知れませんが、逃げられない為には絶対に秘密です。
父からは好きな職業に就けば良いと言われておりますし、この国での成人である十八歳になるまでは、色々なことに挑戦してやってみたいことを探したいと思っております。
国もそういった体制が整っており、職業訓練制度があります。
必要な勉強が早く終了したので、職業訓練制度を利用して、商売の傍ら様々な職業を体験しています。
予備知識のない職業も興味深くとても楽しいですし、物作りにも嵌りつつあります。
そんな十二歳の春に父に呼ばれ、『芸術の国』の、今年十八歳になる愚かな王太子と結婚してくれないかと頼まれました。
本来なら十五歳の姉が年齢的に適任だと思いますが、父は私に頼んできました。
父が私を選んだ理由を聞いて、面白そうだとも思いました。
この国で過ごすうちに、神経まで図太くなってしまったようです。
我が国と北の国境を接する『芸術の国』は、現在進行形でおかしなことになっています。
侯爵令嬢と婚約を結んでいた王子が、在学中に男爵令嬢と浮気した挙句、卒業パーティで侯爵令嬢に婚約破棄と国外追放を命じたのです。
侯爵令嬢はその場で男爵令嬢による魅了を証明して、事なきを得ました。
事前に侯爵令嬢に助けを求められた我が国の外交官が事情を聞き、魔法使いを派遣していたのです。父もあまりのことに呆れていました。
『芸術の国』には身分制度だけでなく、少なからず男尊女卑の風潮があります。
女性には貞淑が求められますが、男性が愛人を囲うことは公然の秘密として容認されているそうです。
男爵令嬢に魅了された令息にはそれぞれ婚約者がいたのですが、婚約者の訴えはほとんどの大人たちが許容すべきと取り合わなかったそうです。
実際『芸術の国』では政略結婚と言うものが幅を利かせており、身分が高い人ほど物心がつく前から婚約者がいることが多いそうです。
目的は家同士の利害関係であったり、高貴な血筋を保つことにあるそうです。
『魔法の国』では考えられない発想です。利害関係を結びたければ契約すればいいことですし、血筋を保つと言う考え方も一切ありません。
男爵令嬢に魅了されていた人々は正常な状態に戻されたましたが、本来そのような事に対処するべき大人たちの怠慢が問題となりました。
当然ですね。僅か十七歳の少女一人に救われなければ簡単に操られ、乗っ取られる国だなんて、笑ってしまいます。
ただ、怠慢が問題とされたのは、私が考えたような理由では無く、権力争いの為だったと聞き呆れてしまいました。
自分たちが空いた地位に就くべく、関わっていた令息の親たちを要職から引き摺り下ろしたかっただけのようです。
関わっていた令息の親たちは責任を取る為、国王は王弟に王位を譲り、宰相、騎士団長は職を辞し、国内随一の商会は与えられていた特権を国に返還しました。
多額の慰謝料や賠償金も発生し、政治、国防、経済に少なくない打撃を受け、国力は明らかに衰退しています。
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