27
二人は再び距離を詰める。ネイナは前進しながらカタハネを放つ。それを悪魔は宙で回転しながら飛び越える。そして回転を活かして蹴りを放つ。それをネイナはかがんでさける。そしてそのまま足払いをする。悪魔は体勢を崩す。チャンスと見るやネイナはそこに懇親の蹴りを放つ。悪魔は片腕でそれを防いだが、そのまま押し切られた。悪魔はすぐさま体勢を立て直したが、少しふらついていた。
「いまのは効いたよ」
悪魔はすぐさま攻勢に移る。異常な速さだった。レイトの身体能力にカタハネが合わさるとかなりの脅威だ。ネイナはカタハネで補助しながら何とかそれをさばいていく。ネイナは防戦一方だった。ネイナはなんとか流れを変えようともう一度足払いをする。しかし、それは予期されていたかのようにジャンプしてかわされ、同時に蹴りが放たれた。ネイナはその一撃をまともに食らってしまった。そして回し蹴りで吹き飛ばされる。ネイナから血が飛び散った。
「もう限界かな?」
「……まだまだ」
ネイナは血を拭う。
ネイナは二つ同時にカタハネを放つ。その二つで悪魔を誘導し、距離を詰める。まず左蹴りを放つ。それは受け止められるが、その足を軸に飛行で体を回転させて後ろ回し蹴りを放つ。防御されたが、少しだけ足をよろめかせた。さらにネイナは追撃する。しかし決定的な一打はなかった。
悪魔はレイトの身体能力で畳みかけるように攻撃を仕掛ける。ネイナはそれをぎりぎりで避け続ける。悪魔はところどころ体を回転させて威力をあげた攻撃を放つ。まともに受けると危なかった。悪魔はカタハネで牽制する。ネイナはそれを掻き消す。その隙に悪魔は攻撃を放つ。しかしネイナはきっちりと防御し、威力の高い大振りな攻撃は避け続けた。なかなか決定的な一打には届かない。
二人の攻防はめまぐるしく変わっていった。カタハネで隙を作っては、攻撃を仕掛ける。息をつく暇もほとんどなかった。二人の息はかなり上がっていた。しかし、その攻撃の手を休めはしない。二人の体力はどんどん減っていく。
両者とも決定的な一打が決まらないまま、しばらく攻防が続いた。二人の体はみるみるボロボロになっていった。
「いい加減終わりにしないかい」
何とか荒い息を整えて悪魔が言う。
「ええそうね。次で――おしまいにしましょう」
ネイナも荒い息でそういう。
二人の体力は底を尽きようとしていた。
――勝負は次できまる。
ネイナは叫んだ。そして、カタハネを悪魔の一歩手前に放つ。それは土埃をあげた。その中からネイナは浮遊して飛び出し、悪魔に突っ込んだ。悪魔の体が浮きあがる。ネイナは悪魔の両手をがっちりと掴んでいた。ネイナはそのまま高度を上げ、そして落ちていく。
「一体何を。このまま一緒に塔に突っ込んで心中でもする気かい?」
「……そんなことはしない」
ネイナはそのまま悪魔にくちづけをした。そしてネイナの翼が大きく揺らめいた。
すると悪魔はもがき苦し始めた。悪魔はネイナを引き剥がしにかかる。しかし、ネイナは離れなかった。
ネイナは浄化をおこなっていた。内側から悪魔の魂に向けて、もてるすべての力を集めて。
悪魔の力は浄化することができる。それは暴走で知っていた。なら悪魔そのものも浄化できるのではないかとネイナは考えた。その考えはあたっていた。現に悪魔は苦しんでいるのだから。
ネイナは力を注ぎ続ける。そして二人が地面に叩きつけられようとしたその瞬間、何かがこわれる音がした。
土埃が舞う。それは長い間そこに漂っていた。そして土埃は徐々に晴れていく。そこには地面に座り込むネイナと抱き起こされているレイトの姿があった。
「……レイト。返事をして」
レイトは返事をしなかった。
「おねがい。目を覚まして……」
レイトは目を覚まさなかった。
「おねがい。お願いだから……」
人の魂は脆い。時間は限られていた。
ネイナはレイトを強く抱きしめて涙を流し始めた。
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