20
しばらく様子を見ていると奴らは二手にわかれた。片方は神殿の入口で見張りを、もう片方はそのまま奥に進んでいった。
レイトたちは奥の方に注視する。長老が何かをやっているようだった。すると、大きな地鳴りのような音が響いて、開かなかったはずの大きな扉が開いていくのが見えた。
長老と、ネイナを抱えた隊長がその奥に進んでいく。
「やるなら今しかないな」
ラゴリがそう判断する。
「チビ達、たのんだぞ」
「わかった」
子供たちはそう答えて移動した。
「レイトも。一人は頼んでいいんだよな?」
「うん。多分いける」
「よし! じゃ首尾よく行こうぜ」
レイトとラゴリも移動を開始した。
「うわー! たすけてー!」
子供たちがそう言って茂みから飛び出す。
見張りは反応しすぐに戦闘態勢をとったが、相手が子供たちだとわかるとその警戒を解いた。
「なんでこんなところに子供が……」
「うわーん。こわかったよー」
子供たちはそうやって嘘泣きしながら見張りの片方の足元に群がる。
「いったいどうやってはいったんだ。だめだろこんなところに来たら。それで何かあったのかい?」
見張りの人は優しく言う。どうやらこども好きらしい。
「危険種がいた!」
子供たちは口々にそういう。見張りはそれを聞いて表情をこわばらせる。見張りはもう一人の見張りの方に視線を送る。するともう一人の見張りは子供たちの出てきた森の方に向かって、慎重に足を進めだした。
「どうだ! いたか!」
「なにも! もう少し調べてみる!」
そういってさらに神殿から離れていった。
その時、子供たちの目が怪しく光る。
「いまだかかれー!」
それを合図に見張りの体中に子供たちが抱きつく。
「いったいなにを!」
困惑する見張りの後ろでラゴリが飛び出す。
「わるいけど寝ててもらうぜ」
ラゴリは見張りの首をがっちりと締めた。
見張りは抵抗しようとするが、子供たちに手足を塞がれていて何もできない。カタハネも子供たちを巻き込む可能性があったので使えなかった。見張りはすぐに意識を失った。
「お前何をしてる!」
当然すぐにもう一人の見張りが反応してラゴリに向かって戦闘態勢をとる。
その後方で今度はレイトが飛び出す。すぐさま見張りは反応してそちらを見た。
しかし、距離は結構開いていた。
レイトはトップスピードから後方抱え込み二回宙返り三回捻りからバク宙二回ひねりの全体重をのせた蹴りを放った。見張りはちょっとありえない吹っ飛び方をした。
レイトが走らずに無駄に回転して近づいたのはただの撹乱だったが、それが効いたらしい。見張りはレイトが回ってくる間、ただ唖然としていた。
「……おまえどんな鍛え方したらそうなんだよ」
ラゴリたちも唖然としていた。
「ねえ。あの人ほんとにハネナシなの?」
「やべえ。おれもわかんなくなってきた」
残るは一人。しかしもう不意打ちはできない。ミギと真正面から戦って勝つのはかなり難しいだろう。
レイトは気合を入れなおした。ここからが本番だと。
レイトたちは扉の奥へと歩みを進めた。
そこは大きく開けた場所になっていた。神殿内部と同じくなにもなく、そして先ほどと同じように大きな扉があった。その前で長老がひざまずいて何かを唱えていた。
「何か騒がしいとおもえば君たちが犯人か。よくミギ二人に勝ったものだ」
隊長がレイト達を見ていった。
「長老、さがっていてください」
隊長はそう長老にいって、ネイナを床に下ろした。
「チビ達は下がってろ」
そうラゴリが言って、子供たちはその場を離れた。
二対一。普通なら有利なのはレイトたちだ。しかし、相手はミギ。しかも、アポストロスの隊長。実力も半端ではないだろう。
「君たちはなんでここに来た」
隊長が問いかける。
「ネイナを助けるためだ」
レイトが答える。
「たすける?」
隊長は大声を上げて笑い始めた。
「なにがおかしい」
「いや悪かったよ。君たちは何も知らないんだったね。君たちはこの子を助けて、その後どうするつもりだい? 大樹の塔をずっとにげまわるのか? この狭い世界で?」
「そんなことは助けた後に考える」
レイトはきっぱりといった。
「若いね。君たちは大樹の巫女のことを何もわかっていない」
「お前は何を知ってる」
レイトが問う。
「さあね」
「馬鹿にしやがって」
ラゴリが飛び出す。レイトも続くように駆ける。
ラゴリはカタハネを使い腕力を底上げする。そしておおきく振りかぶって渾身の一撃を叩き込む。しかし、いともたやすくその一撃はかわされる。そのまま隊長は膝をラゴリの腹に決め、回し蹴りでラゴリをふっとばす。そこにレイトが踏み込み素早い一撃を放つ。攻撃はあたったが腕で防御された。
「君は結構やるみたいだね」
レイトを見て隊長が言う。
ラゴリはようやく体勢を立てなおして隊長に向かう。
「だけどきみはちょっと実力不足だ」
隊長は向かってきたらラゴリの腕を掴んでそのまま投げた。ラゴリは受け身を取れず、そのまま地面に倒れこむ。
「ラゴリ!」
ラゴリは意識を失っていた。
「さあここからだよ」
隊長はカタハネを使った。おそらく身体能力を上げている。
「くそ!」
レイトはラゴリが心配だったが、今はそれどころではなかった。
「君はカタハネを使わないんだね」
「……使えないだけだ」
レイトはそう正直に応える。
「ああ。君があれか例のハネナシ」
隊長はそのことを知っていたようだ。
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