11
レイトはまだ子供たちを探していた。
「どこいったんだあの子ら……」
「もういいじゃねえか。そんな危険なことも別にないだろ」
ラゴリはそんな楽観的なことを言う。
「まあそうなんだけどさ」
レイトは自分でもよくわからなかったが放っておくことができなかった。何か胸騒ぎがしていたのだ。
「おーい! 君たち!」
突然、そういって知らない大人の人がレイトたちのもとにかけてきた。
「よかった。無事なようだな。君たち、はやく帰りなさい」
レイトたちはどういうことなのかよくわからなかった。
「なにかあったんですか?」
「危険種の生き残りが発見されたらしい。森階層から逃げてきた人から報告があった」
危険種。そうきいてレイトの背筋に悪寒が走った。
直後それはレイトたちの耳に届いた。子供の悲鳴だった。
「まさか……!」
ラゴリが言う。
「イブニル!」
レイトが呼ぶとイブニルが駆け寄ってくる。レイトはすぐさまその背に乗る。
「ラゴリも! はやく!」
「おう!」
ラゴリもその背に乗った。
レイトは声のした方向にイブニルを走らせた。
昔。それはレイトたちが生まれる少し前のことだ。森階層の更に上の階層――神殿階層に聖獣と呼ばれる種の生き物がいた。聖獣はその神殿階層を守る聖なる生き物とされていた。
聖獣は人々の信仰の対象だった。だから何人にも侵されないよう神殿階層への立ち入りは禁じられていた。そうやって聖獣と人間はうまく住み分けをしていたはずだった。しかし、聖獣はその境界を超えてきてしまった。
聖獣は下の階層に降りてくるようになったのだ。そしてなんと人を襲い始めた。人は最初、なにかの間違いでたまたま人を傷つけてしまったのだと思った。しかし、聖獣からの被害は後を絶たなくなった。次第に聖獣は信仰の対象から外れ、畏怖される対象になった。そしてついに死人がではじめた。
聖獣の存在をもう放ってはおけなくなった人間は、ある決断を下した。聖獣を人間という種の存在を脅かす危険種とすること。そして、その殲滅。
すぐさまそれは開始され、そしてあっという間に終結した。カタハネの、ミギの圧倒的力によって。そうして、聖獣という種はいなくなった――はずだった。しかし、生き残りがいたのだ。
レイトは昔、ルシカから危険種のことを聞かされていた。
レイトは想像する。その生き残りの心境を。きっと恨んでいるだろう。憎くてしかたがないだろう。当然だ。人は報いを受けるべきなのかもしれない。
でも、だからといって子供が傷つけられるのを放っておける訳がない。
「どうか……間に合ってくれ」
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