10
リーダー達はこそこそと隠れながら森階層に向かった。もし人に見られて森階層に行こうとしているのを知られたら咎められる可能性があるからだ。
「なんだか楽しいね」
いけないことをしているというスリルがリーダー達を高揚させていた。もう、言いつけを破るという罪悪感はない。
リーダーたちは問題であった螺旋階段でもだれともすれ違わず、難なく森階層に到着した。
「それじゃあ馬を探すぞ!」
おー!とリーダーたちは声を合わせる。
それから数分、あっけなくそれは見つかった。
「馬! 馬いたよ!」
馬の群れだった。それは広く開けた場所で、馬たちは野草を食べていた。しかし、リーダーは浮かない顔だった。
「いやこいつらじゃだめだ。もっと大きいやつじゃないと」
馬たちはどれも普通のサイズだった。イブニルのサイズには到底及ばない。
リーダーはイブニルよりも大きいサイズの馬にすると決めていた。そうでないと負けた気になるからだ。リーダーはレイトの鼻を明かしてやりたかったのだ。
「もっと大きやつを探そう!」
リーダー達は引き続き馬の探索を続けた。
それからも馬の姿は時々見受けられたが、サイズは小さいのばかりだった。リーダー達が少し疲れて、川にでもいって休もうとした時だった。
「あれ? なにしてるの?」
リーダー達はレイトと鉢合わせてしまった。レイトは釣り道具を手にしていた。どうやら川で釣りをしていたらしい。
すぐ近くにはイブニルの姿も見えた。やはり、リーダー達が見てきた馬とはサイズが違う。
「子供だけじゃないか」
レイトはリーダー達を見ていった。
「だめだろう。子供だけで森階層にきたら」
レイトは努めて優しくいう。
「うるせーハネナシ! 誰がテメーの言うことなんて聞くか!」
対するリーダーは敵意むき出しだ。
「兄ちゃんが一緒に行ってあげるから。居住階層にお帰り」
レイトはその刺々しい言葉にも表情を崩さずいう。
「いやだね! ぜってー帰らない!」
リーダーは断固として譲らない。
「まいったなあ」
そういってレイトは頭をかく。
「おーいレイト。どうしたんだー?」
その声を聞いてリーダーはピクリと反応する。その声の主はラゴリだった。
「やばい! ラゴリだ! にげろー!」
リーダー達は一目散に逃げ出した。
ラゴリ。こいつはやばいとリーダーは思っている。その凶悪な面。ガラの悪い服装。でかい体。おそらく性格も極悪非道なのだろう。ラゴリには関わるな。そう本能が囁いている。
「あ、こらまって!」
リーダー達は無事逃げることができた。レイトはしつこく追ってきたが、背の高い草の中に隠れることで撒くことができた。
「ふう危なかった」
リーダーは汗を拭いながらそういった。
「とりあえずまずは休憩だ」
リーダー達は念のため大きな木の上にのぼって休むことにした。枝分かれし太く育った幹の上にリーダー達は寝そべる。案外寝心地はいいようだ。リーダーはおもわずまぶたが降りそうになったが、頭を降って眠気を覚ました。
「しばらくしたら再出発だ。これからは人に合わないようにより気をつけること!」
それからたっぷりと時間をおいて、体力の回復したリーダーたちは馬の探索を再び始めた。
しかし、一向に大きな馬は見つかる様子はなかった。
「ねーリーダー。さすがに疲れちゃったよ」
「もう普通の馬で良くない?」
子供たちはもう諦めかけていた。体はくたくたで足取りは重い。リーダーもそれは同じだったが、諦めきれないでいた。
「もうすこし、もうすこしだけ探すぞ」
「えーもうかえろうよー」
リーダーはその言葉を無視して歩き出す。子供二人はしょうがないといった様子でその後を追う。
――その後ろを付け狙う影があった。その影はにやりと笑った。
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