09
その男の子はリーダーと呼ばれていた。
「整列!」
リーダーはそう指示をする。それに答えて二人の子供が横に並ぶ。
「残り二人はどうした!」
リーダー達はいつも五人で行動していた。
「一人はお腹を壊して、もう一人は風邪でお休み!」
二人の内の一人が答える。
「ふん、だらしない奴らだ」
リーダーは偉そうにふんぞり返って言う。
「いいかお前ら、変なものは絶対食べるなよ。そして体調管理は大切だ。よく寝ろ。そして野菜を食え!」
元気よく子供二人が返事をした。
「よしそれでは二人のお見舞いに行くぞ!」
リーダーは口調こそ乱暴だけど結構優しい。
リーダー達はさっそくお見舞いに向かった。その道すがらで一人の少女の後ろ姿を見つけた。
「あ、ネイナおねえちゃんだ!」
リーダー達はワーワー騒ぎながらネイナに群がる。ネイナは微笑んで言う。
「おはよう子供たち! どこかにいくの?」
「今日休んでる奴のお見舞い!」
「おおそれは偉いね!」
ネイナはいい子いい子と言いながら子供たちの頭をなでる。
「だから、今日の訓練少し遅くなっちゃうかもしれないけどいい?」
「もちろんいいよ。まっててあげる」
「ありがとう。ネイナおねえちゃん! じゃあ行ってくる!」
そういってリーダー達は駆けていった。ネイナはその背中を手を降って見送った。
リーダー達はお見舞いを終えて、訓練に向かった。
訓練には他の子供達も集まっている。リーダー達が到着してすぐ訓練は開始された。
「それじゃあはじめ!」
子供たちはカタハネの力を一斉に使いはじめる。
今日は物を持ち上げる訓練だ。子供たちの前には一つの小石が置いてある。みんながんばってはいるが、小石はプルプルと震えるだけでうかびあがらない。その中で一人だけ小石を浮かびあがらせている者がいた。リーダーだ。
「もうこんな石じゃ楽勝だよ!」
子供たちはそれを見て驚嘆する。ネイナは拍手を送る。
「さすがだねー! じゃあ次はもう少し重い石にしてみようか」
ネイナは先ほどの小石より一回り大きい石をリーダーの前においた。
「この俺様にかかれば楽勝だね」
リーダーは調子に乗りまくっていた。リーダーは再度カタハネを使う。しかし、石は持ち上がらない。先ほどの子供たちのように震えるだけである。リーダーは思い切り歯を食いしばってカタハネに集中する。すると石は少しだけ浮いた。
「はいストップ!」
ネイナはリーダーを止めた。石はすとんと落ちる。
「無理は禁物だよ。無理したら無理しただけ疲れるし、翼がにごりやすくなっちゃうからね。みんなも覚えておくように!」
リーダーはぜえぜえと肩で息をしていた。翼も少しだけ濁っている。
「頑張ったね。君は良い使い手になるよ。ちょっと休んでな」
そういってネイナはリーダーの頭をなでた。
それからしばらくしてこの日の訓練は終わった。
ネイナの周りには訓練が終わったにもかかわらず、人だかりができていた。
「先生文字教えて!」
大樹の塔にカタハネの訓練以外の教育機関はまだない。なので学術は家庭でか、ほかの年長者から教えてもらう。その年長者はカタハネの先生が選ばれることが多い。人に教えるという仕事を担っているからだろう。
リーダー達は今日はその輪に加わらず、その場をあとにした。
「さて今日は何して遊ぼっかなあ」
リーダーたちは道すがら考える――とそこで前方に少年が歩いているのをみつけた。
「ハネナシ……」
それはレイトだった。
リーダーはレイトのことが嫌いだった。その理由は単純。いつもネイナと一緒にいるからだ。ようするにヤキモチだった。
リーダーは思う。ネイナおねえちゃんはあんな奴のどこがいいのだろう。ハネナシだし、マヌケヅラだし、いいとこなんてないじゃないか。
ネイナはレイトのことを好いているようにリーダーには見えた。そしてレイトと一緒にいる時のネイナはなんだか安心したように自然に笑うのだ。それがなんだかリーダーは悔しかった。そして負けたくないと対抗意識を燃やした。
「なまいきだ。馬なんて飼いはじめやがって」
レイトは馬――イブニルを連れてあるいていた。
「よし決めた! 今日は俺の馬を見つけにいく!」
リーダーはそう宣言した。
「おまえら森階層にいくぞ!」
「えーでも子供だけで行ったらダメだってパパもママも言ってたよ?」
「ネイナおねえちゃんも言ってたー」
子供二人はそういう。
未熟な子供達だけで森階層にいくことは禁じられていた。ネイナもそれは特にきつく言っている。
「未熟な子供だけでって話だろ? 俺はもう未熟じゃない! みろ!」
そういってリーダーはカタハネを使い、小石を持ち上げてみせた。子供二人は感嘆の声を上げながら拍手をする。
「これだけカタハネがつかえるんだ。もう未熟じゃないだろ。それにハネナシは森階層に行ってる。そして、そのハネナシよりカタハネを使える俺のほうが上だ! なら俺も行っていいだろ!」
なるほどたしかにと子供二人は納得してしまう。
リーダーは普段はしっかりものでよく言うことを聞くいい子だったが、レイトとの事になると少々熱くなりすぎてしまうのが傷だった。
「よし、それじゃあ早速森階層にいくぞ!」
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