第109話 ホワイトデー(2)



ーsideさやー


学校が終わり、家に帰りソファに座って周に背中を預けて早速ネイルオイルを塗ってみる。


爪だけじゃなくて、爪の周りにも塗っていいらしいので、普通のネイルよりも簡単らしい。

けど、ネイルやったことないからわかんない。


今度、花音と一緒に買いに行く約束をした。


「できた」


「いんじゃない?爪綺麗だし買ってきてよかったよ」


「ん」


爪綺麗って言われた。


「さてと、夕飯何食べたい?」


「周が作ったのなら何でもいい」


「んー何でもいいかー」


何でもいいは一番困るらしいけど、本当に何でもいいときはどうすればいいだろうか…


「んじゃま、タコライスでも作るかな」


タコライス!あれ美味しい。

レタス、トマト、お肉、アボガドいろんなものが混ざり合ってできるハーモニーが最高に美味しい。


「ん。タコス好き」


「じゃあ、そうしよう」


「ちょっと部屋行ってくる」


「ん?了解。作るのそんな時間日間ないから30分くらい」


「ん」


ご飯を作ってる周を邪魔できないから、シュウニウムをベットで吸収する。


「んー周の匂いー」


今日一緒に寝てたからか、周の匂いがあんまりしない…


「むー」


周の匂い。シュウニウム他にどこあるかな…


「あった」


今日学校できてたYシャツが脱ぎ捨てられていた。


「…」


着てみることにした。


「おっきい」


萌え袖どころか、手が出てこない。


でも…


「ふふ、周の匂いいっぱい」


これきてるだけで、何だか周に抱き締められてるみたいな感じがする。


「えへへ」


堪能する。


「何やってんの」


ドアが開き周が中を覗いる。


「…」


ど、どうしよう。


「夕飯できたよ。おいで」


「ん」


何も言われなかった。


Yシャツを脱い…このままでいいや。


Yシャツを脱がずにリビングへと出た。


「えっと、何で着たまま?」


「…だめ?」


「…汚さないようにね」


「ん」


許されちゃった。


今日の夕飯はさっき言ってた通り、タコライス。


「「いただきます」」


美味しい。お肉や、野菜、チーズの織りなす素敵なハーモニー。


「おいひい」


「だろ?美味しいよなタコライス」


「「ご馳走様でした」」


夕飯を食べ終わったら、お待ちかねのガトーショコラの時間。


「ガトーショコラ。食べるか?」


「ん!」


お皿に乗ったガトーショコラが自分の前に置かれる。


「飲み物は紅茶でいいよね?」


「ん」


ケーキのお供は紅茶に限る。


周が紅茶のため湯を沸かす姿を見る。


…食べちゃおっかな。


目の前にあるガトーショコラが私を食べてと言わんばかりに、見てきている気がする。


「んー」


パク


我慢できずに、一口口に入れる。


お、おいしい。


たまらず、もう一口。


ここまできたらもう止まれない。


「紅茶入ったよって、もう食べちゃたの?」


「美味しそうすぎるのが悪い」


「それはひどい言われようだな」


そう言いながら、ほっぺについたケーキの残りを指で掬って口に入れる。


「まあ、確かに美味しいからな」


「ん」


まだ、お皿に手のつけてないガトーショコラの一切れが周の前にある…


「そんなに、見ててもあげないよ?」


「むぅ」


「さやのほうが大きかったんだから」


「むぅ」


「…はぁ、ほれ」


周はフォークで切ったケーキを私の前に差し出してくる。


「いいの?」


「いらないなら俺食べるけど」


口を開けて、食べるふりをする。


「いる!」


自分でもわがまま言ってるのはわかってる。


「はい、あーん」


「あーん」


んー美味しい。

周の手から食べさせてもらったおかげか、さっきよりも美味しかった。


「んー我ながらうまい」


じー


「しっとりした甘さにほろ苦い感じ。たまらん」


じー


「…これ最後だよ?」


「ん」


自分でもわかる。嫌な奴だなぁって。


「ごめんなさい」


「何が?」


周は不思議そうに見てくる。


「いっぱい貰っちゃって」


「いんだよ、元々さやのために作ったものだからな」


「…ん」


「せっかくうまいもの食ってんだからそんな顔しないで?」


周は私のほっぺたを持って目を合わせてくる。


「うん」



ーside周ー


さっきの落ち込んだ様子はなく、今もいい笑顔で笑ってる。


俺のケーキのせいで彼女を落ち込ませるなんて我ながら自分の腕が怖いぜ。


「お風呂」


ちょうど、お風呂がわいた音が鳴った。


「ん?入ってきていいよ?」


「んーん。一緒に入ろ?」


あ、ヤッベ。そういえば、朝そんな話してたっけ。


「えっと、本当に1人で。ね?」


「いーやーだー」


今日のさやはやけにわがままな気がする。


まあ、こう言うさやも可愛くて嫌いじゃないんだが…

お風呂は…


「…せめて、水着かなんか着よ?」


「……ん」


なんか、やけに間があったな!


「先入ってて」


「…おう」


はぁ。水着を取り出し、脱衣所で着替えてお風呂に入る。


シャワーで軽く体を流しているとさやが入ってきた。


「…おい」


「何?」


「水着は?」


「えっち」


恥ずかしそうにタオルで前隠した。


…俺悪い?


「これ、入れていい?」


さやが持っていたバスボムを差し出してくる。


「いいよ」


湯船の中に入れたバスボムは泡を噴きながら溶けていく。


「おー」


「入ったら?」


「ん」


軽く体を流してから、さやは湯船に浸かった。


「おー綺麗」


溶けたバスボムはお湯をピンクっぽい紫色に染め、不透明液になった。


少しは助かった。


さてと、俺も頭洗うか。


シャンプーを手に取り頭を洗い始める。


「あ、洗ってあげる」


「え?いいよ、浸かってて?」


まじで、そうじゃないと困る。


「いい、いつものお礼」


「えっと…じゃあお願いします」


あんなに、真面目な顔で言われたら断れない。


シャンプーが入らないように目を閉じる。

シャンプーが入らないようにだ。


人に頭洗ってもらうのってめちゃくちゃ気持ちいんだよなぁ。

美容院とかで洗ってもうらの好きなんだよな。


「痒いところありませんかー」


「大丈夫です」


さっきからちょこちょこ当たる背中の幸せな感覚が下半身が大変なことになりそう。


「流すからシャワーとって」


「ほい」


髪を流してもらう。


「体も洗う」


「いやいやいやいや。体はいい」


今絶賛不味いことになっております。


「やるの」


「じゃあ、背中だけな」


「ん」


さやは、ボディーソープを手にとる。


「ぎゅー」


さやが、後ろから抱きついてくる。


「…な、ナニシテンノ」


「背中洗う時は、こーするって花音が言ってた」


…花音!!ナイス!けど、やばい!


上下に体を動かし、さやの体で俺の背中を洗う。


「っん。あ」


…色っぽいさやの声が浴室に響く。


「ストップ、もう大丈夫だから。ね?」


「ん?もういいの?」


「うんうん」


危ないっての。本当に。


先にさやの石鹸を落とさせて湯船に浸かっててもらう。


入浴剤のおかげでいい匂いのお湯を堪能してる間に体を洗いきる。


泡を洗い流す。


「えっと、体とか洗っていいよ」


「周がやって、さっきやったから」


あれー?いつものお返しとか言ってた気がしたんだけど…


まあ、いっか。


さっきから、湯気先生がいい仕事をしてくれてる。さやの前にある鏡も湯気で曇って鏡の役割は果たせていない。


シャンプーを手に取り、丁寧にさやの頭を洗っていく。

女の子らしい、小さな頭。


「うーきーもーちー」


自分で頭洗うと手の感覚がどうしても優先してきちゃうからこの気持ちよさが来ないんだろうなぁ。


頭を洗い、髪も軽く洗いシャワーで流す。


髪に染み込ませるようにリンスをつけて流す。


「えっと「体も」


「まじ?」


「まじまじ」


随分と強気に出てくるなぁ。

耳真っ赤だけど。


めっちゃ可愛い。


そっと、肩に手を置くとビクッとさやがはねた。


「嘘嘘。体は自分でどーぞ」


そう、さやに伝えて湯船に浸かる。


何とか回避した。と思ったものの、体洗ってる姿って、妙にエロいな…


ドクン


まずいまずい。


色付きのおお湯で隠れてはいるものの、おさまってた奴が元気100倍で帰ってきやがった。


雑念を取り払う。


必死に2の累乗を考える。


8192


「入っていい?」


いつの間にか、体お洗い終えていたさやが片足湯船に入れていた。


タオルで隠してはいるものの、隠してるからこそのエロさが漂ってる。


これはよくない。

せっかく、治ったのに。


「どーぞどーぞ」


そう声をかけるとおもむろに俺に背中を預けてお湯に浸かる。


「へ?」


「ん?」


「何でも…ないです」


まさか、ぴったりくっついてくるとは…


さやの柔らかい肌が俺の体を刺激してくる。


耐えろ。耐えろ俺。


さやも恥ずかしいらしく、プルプル震えてる。


まあ、俺だけじゃないか。


さやの腕の間に手を通し、いつものようにお腹の前で手を組む。


上下に行きすぎないように細心の注意を払って。


「い、いい匂いだな」


「ん。気持ちい」


「だね」


お互い緊張しすぎて会話もつながらない。


ちなみに、俺は上を見ている。

前を見てるとついつい体をこっちに倒しているさやの双丘が目に入ってしまう。


しばらく、無言でお湯に浸かった。


ヤッベ、のぼせてきた。

頭がフラフラしてくる。


「そろそろ上がるか」


「ん。頭フワフワ」


さやものぼせてるっぽい。


湯船から出るさやに手を貸す。


「あ」


のぼせて平衡感覚がちゃんとしていないのか、俺の手をかすめて倒れる。

幸い、床にぶつかる前に支えあげたものの倒れる時にさやが俺の水着に指を引っ掛けたせいで完全に脱げた。


神の悪戯か、ちょうど自分の体を支えようとさやの手が握ったもの…それは。


「…あぅ」


「…さや?」


急速な形状変化によってそれに気づいたさやは、肩まで真っ赤に染めて、頭から湯気を出しながら気絶した。


気絶したさやの手をそっと離させる。


「はぁ」


気絶したさやを運び、着替えさせベットに横に寝かせた。


「周…」


水を汲んでくると、さやが目を覚ました。


「お、おう」


「さっき、夢でなんかすっごく大変なものをみた気がする」


頭に手を当てて思い出そうとするも出てこないらしい。


「無理に思い出さなくていいと思うよ」


水を渡して飲ませてから俺もさやの横に寝転ぶ。


「今日はもう寝よ?」


「ん。そうする」


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