第108話 ホワイトデー(1)

朝めが覚め隣にいるさやを10秒見つめる。

今日も可愛い。


まだ、だるい体を中和させて朝食の準備をする。


今日は昨日作ったガトーショコラが朝食のデザートにあるからめっちゃ軽め。


ガトーショコラならコーヒーより紅茶のほうがいいかな。

紅茶はちゃんとした知識もないからただのパック。


これでも普通に美味しいし、いいと思う。


さやがなかなか起きてこないので、起こしに行く。


「おはよ」


「んー」


どうやら、まだ寝ぼけてるらしい。


「朝だよ」


「まだ、眠い」


「朝ごはんできたし、紅茶さめるよ?」


「やー」


嫌なら、起きてください。


上半身を起こしてるものの、まだ起きる気がないのか俺のkらだに体を預けてくる。


「起きなさい」


「連れてって」


「はいはい」


さやを抱き上げて椅子に座らせる。


モソモソとパンを食べてる鞘を眺めながら紅茶をすする。


「ご馳走様」


食べ終わったさやに冷蔵庫で冷やしておいた、ガトーショコラを出す。


「はい、バレンタインのお返し。あとこれもね」


バスボムとネイルオイルをラッピングした箱を渡す。


渡すと急速にさやの目が開いた。


「…ありがと」


「どういたしまして」


「開けていい?」


「いいけど早く食べな?時間ないから」


「ん」


どっかの誰かさんがなかなか起きないせいで時間が押してる。


「美味しい」


「だろ?自信作だ」


「周は食べないの?」


「昨日作った時に食べたし、もう一切れあるから夜にでも一緒に食べよ?」


「ん。一口あげる」


フォークで一口分切ると俺の方へ差し出してくる。


「ありがと」


ありがたくいただいた。


お皿を片付けてる間にさやは、袋の中を確認している。


「バスボム?かわいい」


「気に入ってくれると嬉しいよ」


「ん。一緒に入ろ」


…ん?


「いや、そーゆーつもりじゃ」


「一緒に入ろ」


「…着替えて、学校遅れるよ」


「むー」



着替えて、家を出る。


「これは?」


「ネイルオイル。爪とその周りのケアにいいらしいよ」


「ん。かわいい」


気に入ってくれたようで何より何より。


学校に着くとニヤニヤしてる花音がいた。


余程優からもらったのが嬉しかったんだろうなぁ。


「おはよー!さやちゃん!」


テンションたっか。

教室に入ったばっかりのさやに花音が抱きついた。


「おはよ。花音…なんかいい匂い」


「気づいちゃったぁ?」


笑顔がにやけてる。


「香水もらったの。優から」


「ん。いい匂い」


「でしょでしょー?」


優は他の奴らにちゃかされまくってるっぽい。


「さてさてー、周くんや。持ってきた?」


「ええ、持ってますよ。だからがっつくな」


「いえーい。頂戴頂戴」


こいつ急かすなよ。こーゆーのって急かすものではないだろ?


「お菓子だからお昼ね」


「えー、でも周のだしー!期待しとこー!」


勝手にハードル上げられた。


自席に座りさっきまでみんなに茶化されまくってた優がやっと解放されたらしい。


「ふぅ」


「お疲れ様。花音に喜んでもらえてよかったね」


「ああ。まあひどい代償食らったけどな」


代償は、お金の方か茶化された方なのか、もしくは両方か…


「まあ、いいじゃない」


「お前はまだ渡してないの?」


「渡したよ。そしたら一緒にお風呂入ろうねって言われた」


「くっくく。よかったじゃねーか」


「よくねぇ」


…どうしたものか。


「でも、あの笑顔が見れたならいいと思わねえか?」


花音とさやはお互いのネイルオイル店あってキャピキャピしてる。


「JKしてんなー」


「だな」


「でな、朝から大変だったんだよ」


「はいはい。聞きますよ」


〜side優〜


「おはよ」


俺の上に跨ってくる花音に挨拶をする。


「おはよ」


襲いたくなってきた。


「おはよ」


そのポジションやめてほしい。


「その動きやめて?」


「何のことー?」


花音をどかす。


「はあ、朝からどした?」


「今日何の日」


「…ホワイトデー」


「うん!」


頂戴!って顔に書いてある。


「ほれ」


ベットのそばに置いておいた紙袋を渡す。


「どれどれー」


「わー!珍しく優のセンスがいい!」


珍しくっていらなくない?


「この香水優が選んだの?」


「そうですけど。ダメですか」


声が棒になる。


「んーん。すごくいい。良すぎてびっくりした」


何気にそれ失礼だよね。


「えへへ、つけちゃおー」


まあ、喜んでもらえて嬉しいよ。


「顔洗ってくる」


部屋に花音を残して、洗面所に顔を洗いにいく。


「…うわぁ」


鏡を見てから気づいた。

今の俺めっちゃニヤニヤしてる。

我ながら気持ち悪い。


冷たい水で顔を洗うことにした。


「ふぅ。顔落ち着いた」


寝癖も治してから部屋に戻ると花音が破顔してた。


おぅ。これは他の人には見せられない。


「どした」


「ぎゅー」


唐突に抱きついてきた。


「どう?」


「やばい。めっちゃいい匂い」


まあ、俺の好きな匂いの選んだし当たり前なんだが、

『いい匂い+花音=ヤバイ』

つまりはそう言うこと。


「2人ともー!はやく降りて来なさーい」


おっと、幸せに包まれすぎた。


「はーい」


俺が選んだのに間違えはなかった。


すでに朝食が準備されていた。


「いただきます」


俺が朝食を食べてる間。お母さんは花音の俺のプレゼント自慢をしていた。


「あ、そうだ。今日、お父さん出張だし急遽そっちいくことにしたから今日一日家開けるね」


…空気読んでくれたってことすか?


「了解」


「シーツはちゃんと洗って干しといてね」


確信犯…


「はーい」


お前が返事するんかい。


「今日泊まっていい?」


俺の耳元で花音が聞いてくる。


「どうぞ」


断る理由もない。


ちなみに、先日この前の怪我が完全に塞がりました。


ーside周ー


昼休みになった。


「早く早くー」


花音に急かせされて、ケーキをとってくる。


「おー!」


腐ったら困るので特別に、冷蔵庫で冷やしてもらってた。

持つべきは仲のいい先生。


「先に弁当食べろよー」


「へーい」


ケーキは花音と優の分二切れ。


「食べ終わった!」


はっや。


「はいはい。どうぞ」


「いやったー!」


まあ、ここまで喜んでもらえるとありがたい。


「俺もー」


「えー何で優ももらってんの?」


「昨日お願いしといたからなー」


「ずるー」


そんなジト目で見られましても。


あと、隣に座るさやから私も食べたいーってオーラがすごい漂ってくる。


「ほい。これ」


優がさやに、クッキーをあげた。


「バレンタインあげてない」


「いーよいーよ。せっかくだから貰っとけ」


「おいごら、うちのさやにただの安物クッキーって舐めとんのか?」


「いや、キレんなよ」


さやが美味しそうに食べてたから許した。


「んーーー美味しい!!」


「だな!めっちゃうめえ!」


「だろ?結構うまくできたんだよ」


「むー」


「さやのは家に帰ってからあるから」


機嫌を悪くしないでください。


ケーキを2人は十二分に満足してくれた。


ーside優ー


「ただいまー」


家の鍵を開けて家に上がる。

朝言っていた通りお母さんはいなかった。


ちなみに、花音は一旦帰って着替えとか必要なものを持ってくるらしい。


ふぅ、冷蔵庫を開けてお茶を飲む。

ふと、机の上を見ると長方形の箱とその下に何やら置き手紙がある。


『避妊はしっかりとしなさい』


…0.01


そういえば、今手持ちない。

的確すぎて怖い。


箱を持って部屋に戻る。

なんか片づけられてるし…


「…ありがたいような、ありがた迷惑なような」


「お邪魔しまーす」


早いな。


「はーい」


さっさと着替えて、リビングに降りる。


「早かったな」


「楽しみすぎて、早歩きできちゃった」


いや、可愛いかよ。


夕飯までの間。花音の提案で家で映画を見ることにした。


花音は汎用人型決戦兵器人造人間エ●ゲリオンを見たかったらしいが、旧劇のトラウマで俺が見れないから、他のにしてもらった。


「ちぇー見たかったのにー」


「いや、ほんとすいません」


たまたま見る機会があったから見てたら、トラウマになりました。

最後の方が特に…


「じゃあ、名探偵は?」


「いーよ」


「あ、ごめん。私この黒い犯人のやつトラウマなんだよねー」


「…わからんでもないけど」


「ふふ、嘘嘘。見よ見よ」


実際ちょっと怖い時あるもんな。犯人さん。


さすがは名探偵。安定の面白さを提供してくれた。


「はいこれ」


映画を見終わり、花音が飲み物を持ってきてくれた。


「ありがと」


一気に飲み干して一息つく。


「何これ、エナドリ?」


「ふふふふふ」


何その、悪の組織の笑いかた。


「まさか、変なものか?」


「大丈夫、花音も同じの飲んだから」


「お、おう」


やけに体が熱い。


「何これ、絶対変なもんだろ」


「正解は〜上に行ってからのお楽しみ」


そう言うと足早に花音は二階へと上がっていった。


「まじで、怖いんだけど」


花音も少し赤くなってたし…


ソファから立ち上がる。


…息子さんが元気なようだ。


…まさかな。たまにこーゆーことあるしね。うんうん。


自分の部屋に入ると花音がベットの上で少し乱れた格好になって座っていた。


「風邪ひくぞ」


「大丈夫だよ、これからあったかくなるから」


「んで、さっきの何?」


何でこの部屋、暖房ついてんだよ。


まだ、春始まったばかりなのに汗が出てくる。


「まあまあ、もっと本能の赴くままにー」


そう言われて、花音の方へと近づいていく。


花音の足の間に自分の足を入れて、顔を近づける。


「で?」


「正解は『び・や・く』」


俺の耳元でこっそりとそれでいてしっかりと伝えてくる。


「どーなっても知らね」


「…んふー。さあこい!」


ドヤ顔で手を広げてくる。


戦いの火蓋が切られた。







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