第105話 交換(1)

テストが終わった。さやも無事進級できそう。


終わったからには、気分転換に何かしたい。

と、言うことで4人で話し合ってるわけだ。


「そうだ!」


花音が何か思いついたのか、椅子から立ち上がった。


「お互いに彼氏を1日交換するの!」


…何それ。めっちゃ面白く無さそう。


「ん。おもしろそう」


何で女子2人は乗り気なんだよ。


「え、まじで?」


「そんなにさやちゃんとデートやなの?」


「そゆわけじゃねーけど」


「いやって言いなさいよ」


バシッ


女ってのは理不尽だと思う。


「お前が言わせたんだろ」


問題はそこじゃない。自分の彼女を他の奴に貸すようなことをするのが怖い。たとえ親友であっても。


「んーじゃあ、ルールを決めよっか。奢らない奢られない。プレゼントもだめ」


そーゆー問題なのか?


「ねーいいじゃん。やーろーおーよー」


「「はぁ」」


花音のしつこいお願いに俺も優も折れた。


「手出したら殺すぞ」


「てめぇもなぁ?」


明日土曜はさやと優。日曜に俺と花音がデートをすることに決まった。



ーside 優ー


土曜ウにも関わらず、ちゃんと起きて着替えて身支度を整える。

これが花音とのデートなら勝手に俺の家に乗り込んできて無理やり起こしに来るから、わざわざアラームなんてかける必要もなかった。


「行ってらっしゃい」


一階に降りると花音がいた。


「何で、いんだよ」


「他の女の子とデートする彼氏を見送ろうと思って」


彼女に見送られて他の女子とのデート…なんかやだな。


「惚れちゃダメよ?」


「当たり前」


ちゅっ


花音がほっぺたにキスをしてきた。


「印つけとかないとね」


「今更、成瀬に惚れるわけないだろ。惚れるならもう惚れてるっての」


かわいいとは思うけど、タイプじゃないし。目の前に超絶かわいい奴いるしなぁ。惚れたくても惚れられない。


「ふーん。ならいいけどー時間、遅れるよ」


「行ってきます」


「はい。行ってらっしゃい」


彼女の可愛らしい。笑顔をしっかりと頭の中に保管し家を出る。


待ち合わせ場所で待っていると成瀬が来た。


やっぱスタイルいいなぁ。


胸ないけど。花音こそ至高。


「失礼」


「ごめんなさい」


バレてた。


「えっと。どこいく?」


「任せる」


…そういや、いっつも花音に振り回されてるだけだからなぁ。


成瀬も多分。連れて行かれる側だもんな。

この組み合わせ…きつい。


「とりあえず、どっかいくか」


ここにずっといるわけにもいかないので都会にきた。

そんでブラブラ歩くことに。

いつもは花音に振り回され走り回ってるけど、こうやってゆっくり歩くのも悪くない。


「なんか気になるお店とかある?」


「あそこ、行きたい」


成瀬が指差したお菓子のお店に入る。

店の中には、いろんな種類のお菓子が陳列されており好きなお菓子を好きな分だけ取れるコーナーもある。


「あれやろーぜ?」


「ん。気になる」


どうやら成瀬も乗り気なようだ。

よかったよかった。

あーゆーのよく映画館とかに、あるけどやったことなかったんだよなぁ。


んーこれと、あとこのグミもうまそう。


っと、すっかり自分の世界に入ってしまった。


成瀬の方を見ると、袋の中には有名なクマの形の組がたくさん入っていた。


「それだけ?」


「ん。美味しそうだから」


「せっかくだしいろんなの入れろよ。もったいねーなー」


「じゃあ、そうする」


めっちゃ流されやすいじゃん。


お互い会計を済ませて、お菓子を食べながらブラブラを続ける。


パクパクとグミを食べる成瀬の姿はさながらハムスター。

可愛らしい。


まあ、花音の方が可愛いけどね。


「花音のこと考えてる」


「何でわかった?」


「ニヤニヤしてたもん」


んー気づかなかった。


「そーゆー成瀬も、周のことだろ?」


「何でわかるの?」


「俺の顔見て残念そう」


「ふふ」


楽しそうに笑った。


…これは落ちるわぁ。どんな男でも落ちるわぁ。

花音いなかったら落ちてたわぁ。


「顔、赤いよ?」


「な、何でもないよ」


危ない危ない。花音というものがありながら…俺は。


「いくぞ」


「ん」


その後、いろいろとお店を回ったりして楽しんだあと、成瀬と別れた。


…はー無駄に緊張したって言うかづーがーれーだー


まじでずーーーーーっと気張ったままだったからなぁ。


ため息を吐きながら家のドアを開ける。


「はぁ。ただいま」


「おかえり。優」


玄関には花音が立っていた。


「一日中いたの?」


「…さっき来たの」


あ、嘘ですね。その間は。


「よく帰ってきたのわかったな」


「褒めていいよ?雰囲気で帰ってきたのわかったから」


犬かよ。



くっそ、かわいいな



「いくぞ」


「んー強引」


嬉しそうに、手を引かれる。


部屋に戻り、花音を抱きしめながらベットに倒れる。


「どうだった?さやちゃんとデート」


そんなの、決まってる。


「やっぱお前がいい」


花音を抱きしめる力は緩めない。


「そこまで言われると照れるなー」


「大好き」


「しーってる」



ーside さやー


疲れた。


優の前で変なことしないようにとか、2人きりだからとか疲れた。

結局話振ったりはできず仕舞いだったけど…


シュウニウムが足りない。


周の家の扉に手をかけようとしたとき、ドアが開いた。


「おかえり」


周が出てきた。


「どっか出かけるの?」


「いや、帰ってきたと思ったから」


何でわかるんだろう。


それよりも


「ただいま!」


周に抱きつく。


無性に周に触れていたくなった。


「どした?優になんかされた?」


「違う。周と一緒に痛くなっただけ」


「なら、いいけど」


…この匂い好き。


「とりあえず、家入ろっか」


「ん」


周の手を引いてソファに座って向き合う。


「血飲む」


何だか、顔が火照ってる気がする。


熱い。


「いーよ」


少し嬉しそうに見てくる。


何だろ。


「いただきます」


「どーぞ」



かぷ



ちゅぅーー


美味しい。


体に周の血が染み込んでいく感覚。

体がポカポカして気持ちい。


「花音の言った通りだったなぁー」


ん?


ぷはぁ


「美味しかった」


「お粗末さまです」


周が頭を撫でてくる。


「ん。好き」


「俺も言おうと思った」


「言って」


「大好きです」


「ん」


満足





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