第102話 スケート
「スケートに行かないかい?」
花音が唐突にそう言った。
「何で?」
「ここにチケットがある」
そう言って2枚のチケットをピラっと出した。
「カップル専用無料券である」
めっちゃ偉そうですね。
「俺はパース」
「んじゃ、俺も」
「周が行かないなら」
…
「…いこ?いいじゃん。いこーよぉ」
さっきの上から目線とは打って変わってだいぶ下からになった。
優と目配せをする。
「いいよ」
「仕方ねーなー」
「ん」
「やったー!今週末でいい?」
「いいよ」
「ん」
と、言うことで今週末行くことになった。
「ちなみに、ローラー、アイス?どっち?」
「アイスの方だよー」
「へー、まだできるところあるんだな」
「室内のところだから」
なるほど。それなら納得。
それにしてもスケートするなんて何年ぶりだろうか…
最後に行ったのは確か小学生の時になんかイベントみたいなので行ったような記憶がある。
「花音経験者だから何でも聞いてよ」
胸を張っていった。
「ん。初めてだから教えてもらう」
「俺も初めてだなー」
俺と花音はやったことあって、さやと優はやったことないと。
「どーんとまかせなさい」
すごい自信だな。
「よくやるの?」
「結構前だけど、やったらうまかったもん!」
なるほど。
「ちなみにいつ?」
「小3くらい?」
…大丈夫だろうか。
まあ、俺も人のこといえないけど。
俺以外の2人も苦笑い。
たのしみだな。
ー週末ー
プルルルルル
んぁ?何だ今日は休みの日だぞ。
目を開きスマホをとる。
「花音…寝よ」
隣でもぞもぞ動くあったかい物体を抱きしめながら眠りの世界に戻る。
プルルルルルル
うるせぇ。
ポチ
「ナンダヨ」
寝起きなせいか少し声に機嫌の悪さが出てしまっている。
「何やってんじゃゴラァアアア」
鼓膜破れるんだが…にしても、めっちゃ怒ってんなぁ。キンキンする。
「寝てた。俺の安眠を邪魔するな」
「寝てたじゃねーよ。今日スケート行く約束だったろ」
声が優に変わった。
…あ
「あ」
隣からも声が聞こえた。
「今日。スケートの日」
さやは覚えていたらしい。今の今まで寝ていたが。
「今から行きます」
「昼奢れ」
「うす」
出費が嵩むぜ。
急いで着替えて準備をする。
「こっちはできたよ」
ジョガーパンツにパーカー。動きやすい服装にはした。
「ん。あと少し」
まだ、髪ボサボサですけど。
「髪は?」
「ポニーテールにするから多少は大丈夫」
実際にポニーテールにしてみると。
ボサボサしていたのが、結んだ先の髪だけ少し広がっていて逆におしゃれ。
寝癖も味方につけるとはやりおる。
「っと、いくよ」
「ん」
ゆったりしたサイズのトップスにだぼっとしたデニムのパンツ。上に大きめのカーディガンを羽織っている。
お洒落したさやの破壊力はやばい。
急いで駅に向かうと2人は優雅にスタバで飲み物を飲んでいた。
「悪い遅れた」
「飲み切っちゃったよ」
ズズズズと空だったボトルのストローを吸う。
花音は、パーカーにジャケットに黒のスキニーパンツ。
スキニーパンツのせいで、上のボリュームが強調されててよろしくない。
トップスが少し大きめなのは言わずもがな。
優曰く、キャラクターとかの柄のtシャツを着れないとか何とか。大変そうである。
ちなみに、優はトップスにマウンテンパーカーに黒のスキニーパンツ。俺同様動きやすそうな服だ。
電車に揺られ数駅。
電車に揺られ数駅
「ついたー!」
ちょっと遠かった。
チケットはちゃんと使えて本日無料。
まあ、交通費はかかってるんですけどね。
スケート靴を借りて履いて靴紐を締める。
「うおっとぉ」
一番早く履き終わった花音はすでにテンションマックス。
刃のついた靴で立ってるのはなかなか大変。
頑張って立とうとしているさやの手を取って引き上げる。
「ありがと」
「さーいこー、ってうおっとー!」
花音を先頭にアイスリンクに出る。
「気を付けろ」
アイスリンクにでた習慣花音が足を滑らせた。
いや、滑るのは当たり前なんだが…
「おっとっと。ありがと」
優が受け止めたおかげで何とか転ぶのは避けられた。
「さてと、俺らもいこーか」
「ん」
慎重に降りていく。
「おー」
無事氷の上に立つことはできた。
んで…
「うわぁ。えっとおわっと!ぐわぁ!」
花音が全くと言っていいほど、できてない。
あんなに自信満々だったのに。
いっぽうの優は、すでにコツを掴んだらしい。
スイスイと滑っている。
「ちょ、ちょっと待ってよー!」
花音、優に置いていかれる。
「ど、どうやって滑るの?」
「んーっとね。後ろに蹴る時に斜めにけってあげる感じで。こうやって」
実演してみせる。
「ふみふむ」
俺のを見て真似してやってみる。
「うおっとっとっと」
蹴るまでは良かったんだけど、蹴った後片足で滑ってる。
「ほい」
なぜか蹴った足をつけないさやを受け止める。
「滑るときは基本両足だからね?」
「ん」
さやの手を取り、後ろ向きに滑っていく。
「そーそ」
筋はいいので、リードしてあげれば上手に滑っている。
「何で人避けられるの?」
不思議そうに見てくる。
何だそんなことか。
「音と気配?」
床と刃が当たる音とか、喋り声とか。それが聞こえれば何となくで人の位置ってわかるじゃん?
あとは、何となくの気配。ここ居そうだなーって言う奴。
説明してもさやは不思議そうな顔をしていた。
「んーやっぱわかんない」
しばらく目を瞑っていたが、わからなかったらしい。
「そっか」
「お、優と花音じゃん」
「ほんとだ」
最初はやる気満々で、教えようとしてた花音は今では、優に手を引かれ、へっぴり腰で滑っている。
あの自信はどこ言ったんだか。
「よ。調子はどう?」
優と花音の横を滑る。
「ふ、ふふ。余裕よ」
強がってんなぁ。
ツン
さやが花音の背中を突いた。
「あぅ」
体勢が悪かったのもあり、花音が崩れ落ちた。
「おっと」
ギリギリの所で優が受け止めた。
「大丈夫?」
「う、うん」
わお、イケメン。
「なんかあそこだけ空間がピンク」
「だな。いこ」
ときめいている2人をほっぽって滑る。
「いくか」
結局花音は最後までうまく滑れず、さやは、俺の手を持たなくても多少は滑れるように、優はスピード勝負できるくらいには上手くなった。
「うー何で花音が一番下手なんだよぉ」
一番自信ありだったせいか、落ち込み具合もすごい。
「まあまあ、昼飯食べいこーぜ。周の奢りだからさ」
「うん。いく」
なんか、さやみたいになってるよ。
「何食べたい?」
「決めていいの?」
「どーぞ」
もう、涙目だもん。
「ん」
「ラーメン!」
「はいよ」
何でも近くに美味しいラーメン屋があるらしい。
こじんまりとしたお店に入りカウンターに座る。
「味噌ラーメン特盛り!海苔、卵、もやし、チャーシュー、味玉トッピング追加!」
…払うの俺なんだけど?
「おいおい、嬢ちゃん。そんなに食べれんのか?」
「食べるもん!」
なんか幼児退行してるよね。君。
「俺は、味噌ラーメン」
「何だ、にいちゃん彼女に負けてるじゃねーか」
「どーせ食べきれないからな」
「食べれるもん」
俺は、味噌の大盛り。
さやは、味噌に味玉トッピング。
「「「いただきまーす」」」
花音の特盛り大量のトッピング合わせはめちゃくちゃ量があった。
「…頑張る」
うまい。スープにコクがあって俺の好みの味だ。
麺は特段言うことはないが、スープの引き立て役には完璧な仕事をしている。
チャーシューも他のお店のように薄っぺらい入れてるだけのチャーシューではなく、肉厚な。中まで味の染みた。食べ応えのあるお肉。
うまい
「「ご馳走様でした」」
俺とさやが食べ終わった頃、いまだに花音はまだ戦っていた。
ズルズルズル
さっきまですんごいいい顔で食べていたのに、今は少し顔に影りが出てきた。
まあ、あれでもよく食べたと思うよ。
「手伝う?」
「んーん。まだ、食べる」
食べても食べても減らない、ラーメンを無心に食べる。
ついに、花音の手が止まった。
「俺が食べようか?」
「まだ、食べれる」
「だめ?お腹減ったからちょうだい?」
「じゃあ、あげる」
優の花音の扱いが、子供相手のなんだよなぁ。
「ありがとね」
「なんか、花音が子供」
「だね」
「ちょっと散歩しに行こーか」
「ん」
「金」
んーちゃんと覚えてやがった。
ちゃっかり、俺らの分も払わせよーかなーなんて思ってたのに。
樋口を一枚渡す。
「お釣りは返せよ」
「んー」
ラーメンを食べながら答えた。
結構コッテリ系だったので、歩いてカロリーを消費する。
「お腹いっぱい」
「だね。美味しかったー」
しばらく歩いてから戻とお店の前にグロッキーになり優にお腹をさすられてる優も結構苦しそう。
「よ。食べ切った?」
「ああ、何とか」
やるじゃん。結構な量あったけど。
「帰ろ」
「はーいよ」
優もぐったりである。
「優おんぶ」
なお、花音の幼児化は治ってない模様。
「はいはい」
優も甘いねぇ。
「周、手」
さやが手を差し出してくる。
「はいはい」
さやの手をギュッと握る。
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