第97話 仲直り計画

優を周が誘って連れ出し

花音をさやが連れ出して偶然を装って出会う。

優帰るかのん帰る。



作戦その1 奇遇だなぁー


「優、出かけるぞ」


「ん?どこに」


「家引きこもってても仕方ねーだろ」


この前のことがあってから優もすっかり自信をなくして自分から動かなくなってしまった。


体の一部がどこかかけてしまったかのように。



「はぁ…わかった」


少し嫌そうにしながらもなんとか連れ出した。

ここまでは予定通り。

時間をこまめにチェックしながら駅の周りをぶらぶらする。


えっと。そろそろだな。


予定の場所に向かう。


「あれ?さや奇遇だな」


「ん。奇遇だね」


自然なやりとりをする。


「花音と一緒に出かけてたのか」


予定通り花音を連れ出してきてくれたか。


「ん。周は優と?」


アイコンタクトで作戦成功を伝える。


「そーそー。いやーこーゆーことあるんだな。せっかくだし一緒に行かねーか?」


なるべく自然に誘う。


「ん。良いよ」


よし、これで!


「花音帰るね」


えぇ…


「俺もパス」


えぇ…


2人とも帰ってしまった。


「だめか」


「ん。手強い」



作戦その2 お前もかー


授業が終わり昼休みになった。


「なあなあ、ジャンケンで負けた方がジュース買いに行かね?」


これをさやの方にもやってもらって自販機の前でばったり会っちゃう作戦だ。事前に時間も決めてある。


「はぁ?なんでだよ。めんどくせぇ」


「良いからやるぞ」


優の意見は無視してジャンケンを始める。


ジャンケンポン!


「お前もか」


「ん。負けた」


結局俺もさやもジャンケンに負けてしまった。


「まさか負けるとは」


「ん。強かった」


ガコン


ジュースを買って教室に戻った。


作戦その3 実は…


「なあ優。ちょっと大事な話があるんだ」


暇そうな優に声をかける。


「ん?どした?」


よし、相談には乗ってくれそうだ。


「実は俺…花音のことが好きかもしれない」


「ふーん」


えぇ…反応ゼロ。


「俺、花音のこと好き」


「ふーん」


…どーなってんだ!?


「いや、お前嘘なのバレバレだし」


「なんでわかるんだよ」


「それに、お前がどう思おうがどうでも良い」


…何それ



「どうだった?」


「ん。ダメだった」


そっちもか。


さやの方にも俺と同じように花音に『優のことが好きになっちゃった』と相談してもらったんだが…


「優に、『お前がどう思おうがどうでも良い』って言われたんだよなぁ。どゆことだと思う?」


少し引っかかった言葉の意味をさやに聞いてみることにした。


「あ、それ花音も言ってた」


「詳しく」


「さやちゃんが優のこと好きでも優には関係ないって」


…似てるけど違う言葉だな。


「待てよ?それってささやが優のこと好きでも優は私のこと好きだから関係ないってことじゃね?」


「…確かに」


「優のも、お前がどう思ってても花音は俺のこと好きだからどうでもいいってことじゃね?」


ちょっと拡大解釈な気はしなくはないが。

優が花音のことを好きなのは知ってる。

花音はちょっとわからないけどさやの聞いたセリフを聞いた限り嫌いってわけではなさそう。


「これは、いけるのでは?」


「ん」


結局。お互い好きってことだ。

んで、一回始まっちゃって終わるに終われない感じかな。


早速優を呼び出す。


「さて、いらっしゃい優」


「なんだよ」


「君は花音のことが好きだね?」


これから始めるのは尋問。


「なんであんなの」


「まあまあ素直になりたまえ。今日の学校で君ほとんどいてたよ?」


「ゲっ」


心あたりありだな。


「好きだね?花音のこと?」


「好きでしょ?」


さやも加わり2人で攻める。


「好きじゃない」


顔を合わせない。つまりそーゆーこと。


「つまり愛してると?」


「愛してる?」


「…まぁ」


よし最低限の言質はとった。


「なんてぇ?」


あとは、もっとしっかりと


「だから。そうだって」


「何がぁ?」


さあ、言え。言って楽になってしまえ


「黙っててもわからないぞぉ?」


「だから好きだって」


優の赤くなった顔とかみたくもないんだが…ここは耐える。


「好きではないんだろ?」


「うげっ」


自分で言ったからなぁ?


「あ、愛してる」


「誰おぉぉぉ?」


いやぁ。楽しいね。これ。


「俺は!花音のことを愛してる!」


「さや?」


「バッチグー」


スマホでの録音役をさやに頼んでいた。


「ありがと、それじゃあ作戦会議と行こう」


作戦会議を始めるとは言っても特に何も考えはない。


「まずは、話し合い」


「そーだな」


まあ、それができないわけなんだが。


「なんとか花音を言いくるめなきゃダメか」


「ん」


「お前らの問題なんだからなんか意見出せ」


優の肩を肘で突く。


「そう言われてもな。んあんも思いつかねぇ」


こいつ使えないな。

まあ優と花音で話してもらわないと何も進まないからな。


「俺らでなんとか花音にアプローチしなきゃかな」


それ以外の方法が思い浮かばない。


「ん」


「悪い」


いや、本当に。


プルルルル


優のスマホが鳴り響いた。


「もしもし?いませんよ?…本当ですか?はい。探してみます」


電話をしているうちに優の顔色が悪くなっていく。


「なんかあった?」


「…花音が帰ってこないらしい。連絡も」


…今9時過ぎ。連絡のまめな花音が遅くなる時に何も連絡しないのは考えづらい。


「ちょっと探してくる」


「待て、俺らもいく」


「ん。いく」


友としてほっとくわけにはいかない。


3人で一緒に探しても効率悪い。


「俺らは、バイクで大通り沿いを探すから優は近場頼めるか?」


「おう」


優は急いで家を出て行った。


「とりあえず、花音に電話」


「ん。任せて」


電話をさやに任せて俺は外に出る準備をする。


ヘルメットを持って家を出る。


「つながる?」


「んーん。ダメつながらない」


まあ、そーだよな。


ったくもっと奢らせてやる。働かせやがって。


バイクを出して大通りに出る。


結構人いるな。


「既読もつかない」


さやには引き続き連絡を定期的に頼んでいる。


「はぁ。ったく」


ーside優ー


はぁはぁ


最近走ってないせいで体力がなさすぎる。


「だーくっそ」


どこだ。どこにいる。


そこらじゅうを走り回っても花音の姿は見えない。

走り回ったせいで体がやばい。

近くの公園のベンチで呼吸を整える。


ん?公園?ベンチ…あそこか?

一つ思い当たる場所があった。

悲鳴を上げる体に鞭を打って入る。


何故だか確信があった。

いる。間違えなくあそこに…



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