第96話 はぁ
優と別れて家に帰ると家にはすでに人が2人ほどいた。
「ただいま」
「おかえり」
家にはすでに帰ってきていたさやと花音がなぜかいた。
「なんで花音?」
「公園で泣いてたから拾ってきた」
捨て猫か?捨て猫なのか?
「さっきぶり」
「…」
お前本当に花音か?あのうるさい花音なのか?
「まあ、良い」
深く関わる必要もないだろう。
明日優も話すって言ってたし余計なこと言ってもしょうがないしな。
「優に何されたの?」
あれー?さやさん?聞いちゃうの?
「…浮気」
まあ、浮気みたいなものか。
「前から…ずっと我慢してたのに…待ってたのに…」
あ、前からたまに遊んでるの知ってたんだ。
なるほどね。それで優も良いと思ったのかもな。
だけど、本当はやめて欲しかったってわけか。
「別にあの子とたまに遊ぶくらいなら良いけど…」
あ、良いの?え?良いの?
「せめて、言ってよ…」
あーなるほどな…確かに、了解を得るくらいは必要かもな。
女心ってのは難しい。
「飯食ってく?」
そろそろご飯を作り始めないとだからな。
「んーん。いらない。帰る」
「送ってくる」
「頼んだ」
さやに花音を送ってきてもらう。
今の花音は不安定だから付き添いがあったほうがいいだろう。
しばらくするとさやが帰ってきた。
「おかえり」
「ん。ただいま」
花音が落ち込んでいたせいかさやまで少し暗い。
「大丈夫か?」
「ん。周は浮気してる?」
また、唐突だな。
「するわけねーだろ」
「なんで優は浮気したのかな?」
さやが不思議そうに聞いてくる。
夕飯を作り上げてテーブルに運ぶ。
「本人はしたつもりはないってさ」
「どゆこと?」
「花音が言ってた浮気相手ってのが、優と結構前から仲良いらしくてな。定期的に遊んでたらしいんだ」
「ん。なるほど」
「んで、花音が何も言ってこないし。良いのかなーって思ってたらしいよ」
「んー。難しい」
「だな」
どちらが悪いかと言えば優が悪いような気もするが、花音が何も言わなかったことがお互いで食い違ってたってわけだ。
「さやだったらどーする?」
「なんも言わないと思う」
まあ、さやの性格的にはそーなるだろうけど…
「できれば、言って欲しいなぁ」
「なんで?」
「今のあいつらみたいに考えが食い違ってたみたいなことが起きるかもしれないし。どこまでが嫌なんて俺の基準とさやの基準が同じとは限らないだろ?」
「あ、そっか」
どうやら理解してくれたらしい。
「だから、なんか嫌なことあったら言ってな?」
「ん。善処する」
まあ、正直言ってくれなさそうだけど…
「今、なんかある?」
今までのことを聞いておく。
「もっと…もっと甘やかして欲しい」
キラキラの視線を向けてくる。
「いや、十分甘やかしてると思うよ?まじで」
うん。本当に。
「もっとが良い」
この子、いつの間にこんな甘えん坊になっちゃったの?
これ以上甘やかすって何すれば良いの…
「ご要望とあれば…」
「ん!」
嬉しそうにうなずいた。
〜次の日〜
学校では昨日の件があったので優と花音は一緒に来ておらず、優だけが先に来ていた。
「おはよ。調子はどうだい?」
「おはよ。緊張で腹いたい」
だいぶ重症のようだ。
「花音はまだきてないんだよな?」
「そ。まさか休んだりしないだろうな…」
登校時間まであと5分か…
「はーいみんな席ついてー」
先生がやってきてHRが始まる。案の定まだ花音はまだ来てない。
「あれ?河井さんまだ来てないのね。小西くんなんか聞いてない?」
先生も2人の関係は知ってるからこそ聞いたんだろう。
「特に何も」
少し気まずそうに優は答えた。
クラスが少しざわつく。
何せ、毎日イチャイチャしながら2人で学校に来てるのだ。
その優が一緒に来ないどころかなんでこないかも知らないなんて事情を知らない人なら驚くだろう。
「すいませーん。遅れましたー」
全く気持ちのこもっていない『すいません』を言って花音が教室に入ってきた。
「河井さんどーしたの?」
「寝坊しました。起こしてくれなくて」
あ、そういえば優が花音の家に行ってから起きるって言ってたな。そのせいか。
「ちゃんと自分で起きなきゃダメですよ?」
「すいませーん。以後気をつけます」
いつもと変わらぬ明るい雰囲気で自分の席に座った。
「それじゃあ、HR終わり!授業頑張ってねー」
HRが終わり先生は教室から出て行った。
「おい、優さっさと話に行けよ」
「いや、自分のタイミングで行くから」
あーこいつチキってんなー!
結局。もう昼休みである。
「おい」
「わかってるいくいくから」
廊下で向かいから歩いてくる花音の方に優は体を向ける。
「か、花音ちょ…」
完全無視。
まるで何もなかったかのように花音は女子と話しながら優を通り過ぎて行った。
「ちょ、花音小西話しかけてたよ?」
「ん?ほんと?ま、いんじゃない?」
「えー?どしたの花音?」
「いいから、早くご飯食べ行こー!」
隣にいた女子たちも驚いていた。
隣、いや周りにいる。優と花音のいつもの仲の良さを知ってる人は誰も唖然としてた。
空気が完全に凍りつき、時間が止まったように思えた。
優にかける声も見つからず、動くことさえできなかった。
「え、っと優?」
やっとのことで口を動かす。
「わり、ちょっと1人にしてくれ」
優は俯いたまま小さな声で答えた。
俺も優もこれは完全に予想外だった。
まさか完全に無視されるとは思ってなかったし、なんなら話し合えばすぐ終わるかな。なんて気軽に考えていた。
「ちょ、あの2人何があったの?」
クラスの女子が聞いてきた。
「わり」
答えるわけにもいかないので一言残してその場を離れる。
「さーってどーすっか」
このまま、ほっといても改善される見込みはゼロ。
俺も動くか。
とりあえず、女子と昼食を食べていたさやを引っこ抜いてきた。
「…ってわけだ」
「…ん」
人気のない場所に連れてきてからさっき起こったことのありのままの話をした。
「…どーすれば良いと思う」
「…わからない。けどこのままだと…」
「わかってる。このままの状態が一番良くないのは」
現状必要なのは2人で腹割って話すこと。
これがどうしても必要だ。
話さなきゃ伝わらないし、理解もできない。
「はーなんで俺らがこんな面倒な役回りを…」
「ん。終わったら奢らせる」
そーだな。それが良い。
「奢らせるためにさっさと仲直りしてもらわねーとな」
「ん」
こうして優と花音の仲直り大作戦(仮)を練り始めた。
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