第95話 爆発

強めの足音と共にドアをバンッ!と開いた。


「花音?」


いつもとは雰囲気が全く違った花音。


「優、ちょっといい?周は出てって」


なんだろ。


「りょーかい」


周は花音の雰囲気から感じ取ったのか椅子から立ち上がり部屋を出て行った。


「んで?どーした?」


なんかあったんだろうか。


「こいつ誰?」


口悪いな。


花音がスマホを見せてくる。俺と女子が遊んだ時の写真。


「…隣のクラスの女子だな」


なーんで写真持ってんだよ。


「なんで!?優は花音の彼氏でしょ?花音じゃ不満なの!??」


花音は今までにないほど怒りの感情を昂らせて悲痛な声で言った。


「んなことはねーよ。俺の人生、惚れた女は花音だけだぜ?」


驚くほど俺の心は落ち着いている。こんなくだらない事を言えるくらい。


「じゃあ、なんで他の子と遊ぶの!?」


「前から仲良かったからなぁ。それこそ花音と付き合う前から」


まるで相手を煽るかのような口調。。


「花音のことはほっといて他の子と遊ぶんだ」


さっきとは違って下を向いて呟いた。


「別にほっといてはねーだろ」


「ほっといてはねーだろ」


「ほっといてたじゃん…」


耳で聞き取れないくらいの小さな声。


「じゃあ、なんだ?今度俺らも遊びいくか?」


これで良いんじゃねーか?


「そうじゃない…」


わかんねぇ。


「代わりが欲しいって言ってるんじゃないの!」


「じゃあ、何が良いんだよ」


「…」


だまんなよ。


「はぁ、てかなんでそんなに怒ってんの?」


頭の中がこんがらがってついそんなことを聞いてしまう。


「なんで?なんでわからないの?」


怒られてると段々こっちまでイライラしてくる。


「いや、わかったら聞かねーよ」


ついつい強めに言ってしまう。


花音の目から大粒の涙がこぼれ落ちる。


「もういいよ…」


「は?」


「もおいい!!」


パァン!


「最低…」


花音は部屋から出て行った。


えっと…何がどーなった。


怒りも酔いも冷めた。


「お困りのようだね」


ドアを開いて周が入ってきた。


「帰ってなかったのか」


「信頼ってのはどーしたんだよ」


ベットに座る俺の前にあぐらをかいて手を後ろについて座る。


ウッ…


「どうやらなかったらしい」


「なかったんじゃなくて、お前が裏切ったんじゃねーのか?」


「…そうだな」


「アホだねぇ」


全くだ。


「ちょっと花音に電話する」


「そーしろそーしろ」


スマホで花音に電話をかける。


「…つながらない」


「俺からかけようか?」


「まじ?ありがと」


携帯からかけてもらうことにした。


花音だいぶ怒ってんなぁ。


「あ、もしもし花音?いた、優がね。あーえ、まじ?あーはいはい了解っす」


俺と電話を変わることもなく通話は終了した。


「花音なんて?」


「ブロックしたってさ」


「へーブロックね…え?ブロック!?」


まじか、今まで色々と喧嘩はしてきたけどブロックされたことはねーぞ。


「とりあえず、土下座した写真でも送るか」


周がそう言ってくる。


「そうだな」


「あ、やるんだ」


引くな。お前の提案だろ。


土下座してる俺を周が写真をとって花音に送る。


花音から帰ってきた返信は一言。


『キモ』


「どんまい」


「…はぁ」


まあ、そりゃそうだわな。


「んで、なんで花音が怒ってるかわかってんのか?」


「あーそれが…いまいち」


「…はぁ」


めっちゃため息つくじゃん。


「まず一つはお前が他の女の子と遊んだことだろ?」


「いやそれなんだがな。前から結構遊んでたんだよ」


そのことも花音知ってたはずなんだけど。なんでこのタイミングで…?


「我慢の限界だったんじゃねーの?」


「本当は嫌だったってこと?」


「あの言葉聞いて嫌じゃないと思うか?」


「あーそっか」


よく考えればわかることだ。


「あとは、ほっといてたってとこじゃね?心当たりねーの?」


「それがねーんだよなぁ」


一応メッセージを見直す。


「あ…」


「どした?」


「いや、他の子と遊んだ時電話きてたっぽい」


「絶対それじゃん」


あーこれはやばいわ。

どんどんやばいのが出てくる。


「んで、今までのが爆発した感じだろうな」


「っぽいな…」


「さて、どうするんだい?」


「どーしよ」


…正直良い案が全く出てこない。


「良い案あるよ?」


「お、なんだ?」


「別れれば良い。そーしたら花音もこんなクソ野郎と付き合わなくて済むわけだし?」


ぐはっ…クソ野郎って。間違ってないのが悲しい。


「…そのほうがいいのかな」


もしかしたらその方が花音は良いのかもしれない。


「ハァァァアア。お前バカだろ。本当に嫌だったらお前今ごろ振られてるって」


初めてそんな大きいため息聞いたわ。


「あ、そっか」


周がいてまじ助かる。


「ま、反省してどーするか考えとけ」


ん?


「帰るのか?」


「なんで、お前と一緒にずっといるんだよ。さやがそろそろ帰ってくるんでな」


そりゃそうだ。


「お前らは喧嘩とかねーの?」


ふと気になって聞いてみる。


「んー今のところねーな」


確かに喧嘩してるのみたことねーしな。


「羨ましいなぁ」


そういうとギロっと睨まれた。


「原因になってるのお前だからな?


そうでした。


「すいません」


「俺に謝るな」


周が家を出ていくと一気に気が抜ける。


「はぁ…どんくらい時間かかるかな…」


結構時間かかりそう…


「ってこの考えがダメなんだよなぁ」


「まずは、話をしよう。お互い話し合わないとな。俺も思うことがあるし。謝るだけだとまた起こりそうだしな。明日空いてるか聞いてみるか…ブロックされてるんだった」


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