第91話 催眠

ーsideさやー


学校が終わって家に帰ると周のお母さんがいた。


「あら、2人ともおかえり」


「どしたの?」


「レオのお迎えに来たわ」


「あーなるほどな」


あ、レオ帰っちゃうんだ。

少し悲しい。


近寄ってくるレオの頭を撫で撫でする。


「また、機会があったらよろしくね」


「はいはい」


「ん。やる」


レオもふもふしたい。


周もレオとのお別れを終わらせると周のお母さんの車に乗せられて帰っていった。


レオもいなくなって暇になったので

周の膝の上でTVを見ながら時間を潰す。


周は、なんか疲れたらしく。

さっきから口数が少なくてつまんない。


「ねね」


「んー?」


「催眠ってできると思う?」


TVで芸能人が洗脳されてるのを見て聞いてみる。


「無理だろ。見るからに演技じゃん」


「やってみていい?」


「んー勝手にどーぞー」


テレビでやっていたように5円玉に紐をつけて鞘の目の前でゆらゆら揺らす。


「えーっと。周は私のことが好きになるー」


「いや、それもうかかってるから」


「あ、そうだった」


催眠ではないけど。


「じゃあ、周は私の執事になーる」


ゆーらゆーら


だんだん周の目から色が抜けていく。


「周?」


「どうかなさりましたか?お嬢様」


…え?


「何かご用があればお申し付けください」


ほ、本当に成功しちゃった?


「演技はいい」


「演技?なんのことでしょうか?」


本当に困った様子で聞いてくる。


「本当に、いつもの周に戻って」


「私はいつも通りだと思うのですが…」


…ど、どうしよう。


『この催眠はどうやったら治るんですか?先生』


さっきからつけっぱだったTVで知りたいことを話していた。


『安心してください。2、3時間したら元に戻りますよ。まあ今日はもう戻してしまうんですが』


そう言って催眠を受けていた芸能人にデコピンをした。


『え?何があったんだ?』


デコピンしたら治るのかな?


「周」


「はい。どうなさりましたか。お嬢様」


こっちを向いて膝をつく周のおでこにデコピンをする。


「どうなさりました?」


な、なおってない…


でも、なんでもいうこと聞いてくれるんだよね…

少し悪いことが思いつく。


「ぎゅーってして」


「しかし、お嬢様。私は…「命令」


「はい」


そういうと周はぎゅーっと抱きしめてくれる。

ん。やっぱりいうこと聞いてくれる。


「んふふ」


「どうかなさりましたか?」


「んーん。なんでもない」


催眠が溶けるまでの2、3時間たのしんじゃお。


「周。頭ナデナデ」


「はい。お嬢様」


さっきまで、あんなにだるそうだったのに。

今じゃこれ。

催眠偉大。


「あっちいこ」


周の服を引っ張る。ソファは狭いからベットのほうがいい。


「はい。お嬢様」


「…えっと」


「お嬢様?」


「…お姫様抱っこできる?」


「もちろんです。執事ですから」


執事すごい。

周に持ち上げられ。落ちないように周の首に手を回す。


「今日のお嬢様は甘えん坊さんですね」


ニコッと笑って言ってくる。


「主人に向かって失礼」


顔が熱い。


「これは失礼いたしました」


「わかったらいい」


ベットに周を座らせて後ろから抱きしめる。


「いつもは周が後ろだから。今日は私が後ろ」


「後ろがいいなら言ってくだされば…」


「んーん。今日だから、いつもは前がいいの」


なんで今日は後ろなのか。

それは。


「周。いつもありがと。大好きだよ」


「お、お嬢様?」


顔が熱くなる。


「大好き。愛してる。本当に好き」


ギューっと抱きしめて首に歯を立てる。


ちゅぅー


「お、お嬢様?」


ぷはぁ


「絶対離さないから。絶対」


「ちょ、ちょっと強いです。お嬢様」


ついつい力が入りすぎちゃった。


「あ、ごめん」


いつもはこんなこと言えないから。


周を引っ張ってベットに倒す。


「お嬢様?」


「何も言わない」


これは、命令。


ちゅっ


「でも、やっぱいつもの周の方がいい」


仰向けの周の上にうつ向けに倒れて周の肩の上に頭を置く。


はぁ


「そー言ってもらえると嬉しいね」


「!!?周?」


「そうだよ?お嬢様?」


「も、もしかして」


「まあ、催眠なんてかからねーよ」


ってことは…


「全部覚えてる?」


声が震える。


「もちろん。俺も大好きだよ」


むー


顔が熱い。


「いやー彼女の愛が熱いねぇ」


嬉しそうに言ってくる。

うぅ…恥ずかしい。


「調子のらない」


周の頭をポカポカ叩く。


グーー


静かな空間にさやのお腹の音が響いた。


「お嬢様。夕飯は何が食べたいですか?」


「むー周が作ったのならなんでもいい」


「りょーかい」


頭ナデナデしてくる。

催眠…いらない。いつもどおりの周が一番好き。


「あ、言い忘れてた」


「ん?何?」


「日頃からもっと好きって言ってくれると俺は嬉しいよ」


カァア


周に背を向けて、枕に顔を埋める。


「前向きに検討します」


口調が変になった。


「ありがと」


顔の火照りが治るまで周の匂い成分を吸収する。


「できたよ」


「ん」


十分に成分が吸収できたのでベットから離れる。


「ご飯何?」


「親子丼。パパッと作れっから」


「ん。おいしそう」


席に座ってると周が丼に入った親子丼を持ってきてくれた。


「「いただきます」」


ん。美味しい。お肉がジュゥシィ〜


「あーん」


周の方に向かって口を開ける。


「これは命令」


「いや、もう執事じゃねーっての」


そう言いながらもスプーンにご飯と具を乗せてあーんしてくれた。


「こっちの方が美味しい」


「変わんないはずなんだけどなぁ」


「愛の調味料」


「なるほど。それは俺も料理を作る身として知りたい」


そう言ってこっちに口を開けて向けてくる。


「あーん」


「ふむふむ。なるほどこれが愛の力か」



愛の力は偉大。










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