第84話 お餅つき

「今日は、お餅つきするわよー」


朝ごはんを食べてると唐突に母さんにそう言われた。


「は?また唐突だな」


「河井家は明日の朝から河井家に行くんだらしいから」


「そーなんだよね」


なるほどな。


「だから、火起こしといてね」


「あ、俺?」


「そりゃそうでしょ」


「…はーい」



なんか、視線に謎の強制力があった。


「なんで火?」


さやが聞いてくる。


「餅米炊くため。毎年こーやってるんだよね」


「お餅つき初めてやる」


なるほど。


「楽しんでってくれ」


「ん。楽しみ」


「つきたての餅はまじでうめえぞ」


「ん」


厚着して、外に出る。


倉庫から薪ストーブを持ってきて火を起こし蒸すために釜に水をを入れて、温める。


「ふぅ、ひとまず火は安定」


「あったかい」


今日寒いからな。この火はありがたい。


「はーいお米取りに来てー」


「はーい」


「じゃあ、火見ててくれ」


「ん」


「あと、春と雪が火傷しないように見といて」


「ん、わかった」


「大丈夫なの」「ダイジョビー」


お前らなぁ。そう言ってやけどするじゃん。


3人を置いておいて、お米をとりに行く。


「はいこれ」


「おっも」


お米が中に入った。蒸籠を窯の上に乗せて蒸してく。


「太い木ちょっと入れといて、気をつけてな」


「わかったの」「ういー」


「一緒にやる」


さやと共に、薪ストーブの中に木を入れる。


「おー燃えてるのー」「ボーボー」


「あつっ」


さやが、火傷したっぽい。


「ったく、だから気をつけろって言ったろ」


「油断した」


悔しそうな顔すんな。


「こい。冷やすぞ」


「んー血飲む。そっちのが早い」


「…はいはい。部屋いこな。2人とも絶対さわんなよ?」


「了解なの!」「らじゃぁ」


そう言って敬礼する。


さやの手を引いて、部屋にまで戻ってきた。


「はい、どーぞ」


「ん。いただきます」


カプ


俺の首元に吸い付いてくる。


「このあと餅食べるんだから程々にしとけよ?」


「別腹だから大丈夫」


別腹、便利な言葉だなぁ。


ぷはぁ


「美味しかった」


「そりゃどーも」


服を着直して、立ち上がる。


「おっとと」


「大丈夫?」


「血が回ってねぇ」


「頑張って、回して」


…犯人お前だからな。


体を動かして身体中に血を回す。


「ふぅ。ボチボチだな」


外では、母さんたちが臼と杵を出してる。


雫さんは、軽そうに臼を持ち上げている。


バケモンだな。


「いやー、恥ずかしながらお餅つきするのは何十年ぶりでテンションが上がってるんだよねー」


だそうだ。


「しゅうーお米のいい匂いしてきたのー」「お米の匂いー」


どうやら、炊けたっぽい。


「母さん。お米そろそろ」


「今、見にいくわね」


ここまで、炊き上がった餅米のいい匂いがする。


「できてるわね。早速つきましょ」


「へーい」


「よろしくね。主戦力さん」


「へいへい」


杵をとって臼の方に向かう。


臼を温めていた、お湯を出して餅米をいれる。


「はーい、こねてー」


杵を持って、餅米をこねていく


「早く早くーお餅が冷えないうちにー」


「わかってるって」


餅米のつぶつぶが見えなくなるまで、しっかりと潰す。


「早くペッタンしたいのー」「ペッタンペッタン」


「大変そう」


「ちょっと、待ってな」


潰し終わり、一度杵を濡らして、お餅をついていく。


「「ペッタンペッタン」」


「頑張って」


3人に応援されながら、お餅をついていく。


ちなみに、返しは母さんがやってる。


そこそこうまい。


「そろそろ変わっていいわよ」


「はいよ」


杵を下ろして、お湯につけておく。


「最初誰やる?」


「春やるの!」


「雪は次やるー」


春に子供用の小さめの杵を持たせる。


「お、重たいの」


春の後ろから、杵を一緒に持って、お餅をついていく。


「ペッタンペッタンなの」


一生懸命お餅をついていく。


「そろそろ変わるの」


「雪のばーん」


雪に杵をわたす。


「お、重いぃ」


「手伝うよ」


春と同じように、杵を振るのを手伝う。


「ペッタンペッタン」


「さやもやる?」


「次でいい」


「はいよ」


お餅をあげて、ボウルに入れる。


「さてと、やるか」


お餅を一口サイズにしていく。


一口サイズにした、お餅をいろんな具の中に入れていく。

大根おろし。これはうまい。

あんこ。王道

きなこ。これも王道。

納豆。普通にあう。

キムチ。いいねぇ。


こんな感じでいろんな具の中に入れて行く。


「二つ目やるわよ」


「はいよ」


「ねね、周」


「どした?」


後ろから、さやに服を引っ張られる。


「返すのやてみたい」


「あれ結構難しいぞ?ワンチャン手潰されるし」


「潰れても吸血鬼だから大丈夫」


絶対そーゆー問題ではない。それに手は大丈夫でも餅が血塗れだよ。


「いいじゃない。やり方教えてあげるわ」


母さんが話を聞いていたらしく、さやを連れて行く。


「あーらら。大丈夫かな」


少し心配になりながら杵を取りに行く。


返しやくのさやを隣に、お米をこねていく。


春と雪は、お餅を食べるのに忙しいらしく、結局俺が1人でつくことに。


「行くよ?」


「ん」


米、をつぶし終わったので、お餅をついていく。


「ん、ん、ん…」


意外とできてるな。


母さんとタイミングとスピードに大差ないからめっちゃやりやすい。


「できた」


「はいよっと」


杵を下ろす。


ボウルに入れて、家に持って入る。


さっきから出てこないけど、雫さんはどうしたかって?

あそこで、父さんと酒呑みまくってる。


うちの酒蔵にあった酒をすごい勢いで消費してる。

なんでも、日本酒もワインもお餅に合うそうで。


ワインがお持ちに合うのは意外だったけど、チーズと一緒に焼いてあげると合うとか醤油も意外と合うらしい。知らなかった。


「あーお餅きたぁ?」


うわ、酒クセェ


「あはは、周くんがついてくれたんだね。お姉さんがお礼にキスしてあげる」


「ムーだめ」


さやが割って入ってきた。


「ちぇーけちー」


何やってんだか、


「あんたたちも、おもち食べなさい」


「そーする」


ちなみに、俺は大根おろしが一番好き。


「きなこ美味しい」


「王道だよな」


「ん」


お餅を食べたあとは、さっきついていたお餅をあんころ餅にする。


お持ちの中にあんこを入れていくだけなんだが、


「春も手伝うの」「雪もー」


あんころ餅は、凍らせれば保存が聞くからね。いいよね。


「明日からは、毎朝お餅かな」


「やったの!お餅好きなの」「雪もー」


「ん。美味しい」


「ま、まあな」


でも、毎日は結構飽きてくるんだよなぁ






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