第83話 元旦

朝早めに目が覚める。


隣でいい顔で寝ているさやを起こさないようにそっと布団から出る。


「おはよっとあけましておめでと」


すでに起きておせちの準備をしていた大人たちに挨拶をする。


「「「おはよう、あけましておめでとー」」」


「お雑煮作るのよろしく頼むわね」


「へーい」


これは、ここ数年毎年まかされてる。

お雑煮作りは俺の仕事と化した。


「だしとかはやってあるから」


「はーい」


うちのお雑煮の具は、お餅、ちょっとした野菜、牡蠣、魚。

こんなもん。


こいつがぁうまいんだ。


時間をかけて具材を煮込んでいく。


お雑煮が出来上がった頃みんな起きてた。


「おはよなのー」「おはー」


まだ、眠たそうに春と雪の2人が起きてきた。


それに続いてさやも


「おはよ」


「「「おはよう、あけましておめでとう」」」


3人に挨拶をする。


「あけましておめでとうなの」「あけおめー」


「あけましておめでとうございます」


そう言ってさやは綺麗にお辞儀をした。


お雑煮を作る俺の横に、さやがきた。


「初夢何みた?」


「初夢?」


一富士二鷹三茄子ってやつね。


「元旦にみた夢なんだった?」


「周と子供のお世話してた」


「ごほっ。え?それまじ?」


「ん。まじ」


またまた〜


「周は何見たの?」


「俺は、秘密」


「なんで?」


「夢は人に言わないと叶うみたいなの聞いたことあるから」


「じゃあ、私も言わなきゃよかった」


みるからに、しょんぼりとする。


「まあ、なんだ。言ったら叶わない訳じゃないから」


「ん」


まさか、同じ夢見てたとは言えないだろう。


お節を机へと運び、みな席につく。


「「「「いただきます」」」」


いろんなお節の他に刺身がある。


「んーやっぱお雑煮うまぁ」


「今年もいいできね」


「ん。美味しい」


我ながら自信作ですから…


他のおせちを食べつつ。

団欒を楽しむ。


「さて、お年玉でもあげちゃおうかしらね」


待ってましたー


「やったの!」「うれしー」


ありがたい袋をまず、母さんからもらう。


「さて、中身はー」


んーぼちぼち


「私も…いいの?」


さやももらう。


「あ、ありがと」


そのほかにも、おばあちゃん、紅葉さん、雫さんからもらう。


雫さんは太っ腹だった。


「結婚式のたしにでもしてね?」


…お、重い。


「あ、はい」


しばらくすると、獅子舞の音が聞こえてきた。


「お、きたな」


「う、うぅ。きちゃったのぉ」「と、トイレェー」


「逃さんよ」


春と雪の手をとる。


「嫌なのー怖いのー!」「お、お腹がぁ」


「2人ともどーしたの?」


まだ、状況を把握できていないさやが聞いてきた。


「獅子舞がきたんだよ」


「獅子舞?」


「そそ、頭噛んでもらうの」


ジェスチャーで噛むのを表現する。


「あ、頭!!??なんで?」


めっちゃ驚いてる。


「まあ、やって貰えばわかる」


「う、ん」


緊張して肩上がってんぞ。


「きたよ」


玄関まできた、獅子舞にまず、俺から頭を噛んでもらう。


噛むと言っても、カプカプ頭をマッサージしてもらうような物。


「ああ、周が食べられちゃったの!」「周返してー」


そう言って雪が服を引っ張ってくる。


「次、春だよ?」


「い、嫌なの!」


逃げようとする。


「はい、つーかまーえた」


春を後ろから抱っこして、獅子舞の方へと連れていく。


「うー嫌なの!周のこと嫌いなの」


「それは、悲しいなぁ」


カプカプ


「うぅー」


「終わったよ」


何が怖いんだか…


「次雪どこ行くの?」


こっそり逃げようとする雪を捕まえる


「やーだやーだ」


カプカプ


「はい終わり」


「食べられなかった」


「だろ?」


そういうと雪はいい顔で俺の腕から降りた。


「次、さや」


「う、ん」


俺の手をとり、そっと前に出る。


カプカプ


「うっ?大丈夫だった」


「だから食べられねーっての」


「ん。ちょっと可愛い」


そう言って獅子舞の頭を撫でた。


「ありがとうございましたー」


獅子舞の中からお兄さんが出てきた。


「び、びっくりした」


ああ、そういえば中の人こと言ってなかったな。


「さて初詣にでも行きましょうか」


女子組は着替えるらしい。


「周も、着物着るか?」


父さんにそう言われた。


「えー寒いからいい」


服を着替えて、上着に、コートを着る。


「どう?」


後ろからツンツンされて振り返るとそこには、着物を着たさやが立っていた。


「あらら、着替えるって着物着てたんだ」


「ん。どう?」


「似合ってる。というかすごく…綺麗」


「ん。ありがと」


化粧でおめかしもして、赤い着物を綺麗に着こなしている。


「行くわよー」


母さんに呼ばれて車に乗る。


さやだけでなく、春は桃色を主体とした着物、雪は、白を主体とした着物を着ている。


「2人とも、似合ってる」


「ありがとうなの」「んふふー」


神社に着くと車を降りて初詣の列に並ぶ。


「人多いな」


「ん。寒い」


ホッカイロを寒そうに、触っている。


「そりゃそうだろうな」


上着を脱いで、さやのにかける。


「いいの?」


「あー思ったより寒いかも。まあ大丈夫だと思う」


「んーん。だめ。風邪ひく」


そう言って、コートの中に俺を入れる。


「さすがに狭くない?」


「ん。身長差つらい」


俺は少ししゃがんでる状態。さやは、爪先立ち、そりゃ辛いわな。


「じゃあ、周がきてて」


「ん?いいけど?」


コートをきるとさやが俺の中に入ってきた。


「これならいい」


「まあ、確かに体制的には問題ないけど」


めっちゃ周りの人に見られてるんだよな。


「春も入るの」「雪もー」


そう言って俺のコートの中に入ってくる。


「完全に定員オーバーなんだが」


「んーん大丈夫」


俺は、大丈夫じゃないんだよなぁ


「おっと、次俺らだ」


お賽銭を投げ込みお願い事をする。


「何お願いした?」


「秘密。周は?」


「今年も、さやと一緒にいれるようにってね」


「ん、一緒にいる」


満面の笑みで答えた。


「夢が叶うようにってお願いした」


「いっていいのか?」


「ん。もう、叶うのは確定事項」


なんじゃそりゃ。


「…そうだな」


さやの頭をそっと撫でる。


「2人ともイチャイチャしてないで帰るわよー」


母さん呼ばれて、車へと足を進める。




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