第80話 実家

「ただいま」


ドアを開けて中に入るとさっき走って行った春と雪それから父さんとおばあちゃんと紅葉さんが、座っていた。


「「「おかえり」」」


「お邪魔してます」


さやも俺に連れて挨拶をする。


「あら、さやちゃんもただいまでいいのよ」


母さんはがさやにそう伝えると少し恥ずかしそうにもう一度挨拶をした。


「た、ただいま」


「「「お帰りなさい」」」


父さんも母さんもおばあちゃんも、嬉しそうに答えた。


「おかえりなのー!」「おかりー」


春と雪も嬉しそうにさやに飛びつく。


「ワウ!」


レオもいた。


「よお。久しぶりだなー」


レオの首をわしゃわしゃしてやる。


「クゥーン」


嬉しそうに尻尾をふった。


パン


母さんが手を叩きみんなの注目を集める。


「さて、ご飯にしましょ。今夜はカレーよ」


さっきからキッチンで煮込まれているカレーにいい匂いがここまでくる。


「カレーなの!」「うれスィー」


顔には出てないものの、さやに尻尾があったら激しく振っていただろう。


お皿にカレーを盛り付けて机に乗せていく。


「それじゃ、食べよっか」


「「「いただきます」」」


久しぶりに母の味のカレー。こうして食べるとやっぱ俺のと似てるな。そりゃそうだろうけど。


「周のより美味しい」


…グハァ。初めて負けたかもしれない。


「…そっか」


「あ、でも周のも美味しいよ」


「…おう」


クスクス


周りから笑い声が聞こえてる。


「まだまだ、周には負けてられないわ」


く、くそぉ。


俺も特訓しよ…


「明日からおせちづくり手伝ってもらうわよ」


「まかせろ」


「おいしーのー!」「おいしー」


まあ、実際うまい。この味を覚えるのだ。


「おかわり」


「はーい」


母さんにお皿を渡す。


「多くね?」


「残さないでね?」


お皿に 大量に盛られたカレーを食べていく。


うぷ


「大丈夫?」


「お、おう」


「がんばれなの」「ガンバー」


やってやろうじゃねーかー。


「死ぬ」


「お疲れ様」


さやにもらった水を飲み干す。


あーもう食えない。


「あら、まだケーキがあるわよ?」


くっそ、食いてぇ!


「どうする?」


さやは心配そうにこっちをみてくる。


「俺は明日食べるよ」


「ん。私もそうする」


「さやは別に食べてもいいんだぞ?」


「いい、周と一緒に食べたい」


何この子いい子すぎない?


「わかったわ。冷蔵庫に入れとくわね」


「はいよ、ちょっと横になる」


「牛になるわよ」


ならんわ。


少し移動して、横になる。


「膝枕してあげる」


「ありがと」


ありがたく、さやの膝に頭を下ろす。


「ふう、こりゃいい」


さやの膝をナデナデする。


「くすぐったい」


クスクス


あ?


「見るな」


「あちゃーバレたー」


襖の間から母さん達が覗き込んでいた。


「春もしたいの」「雪もぉー」


「片方は俺の膝だな」


俺も体を起こしてあぐらをかく。


「春はさやお姉ちゃんなの」「雪もさやお姉ちゃんがいいー」


…泣いてもいいか?


「ワウワウ」


レオがそっと自分の頭を膝に乗せてきた。


「俺にはお前しかいねーよ」


「じゃあ、私も」


「さやは、2人がいるだろ?」


「むー」


いじけるなよ。


「さやお姉ちゃんの膝やらかい」「気持ちー」


しばらくレオとイチャイチャしてると、レオが寝てしまった。


「あれま、寝ちゃったか」


「春と雪お風呂入っちゃいなさーい」


「んーわかったの」「ウィー」


「さやも一緒に入ってきたら?」


「周と入る」


…は?


「それはない」


「じゃあ、入ってくるもん」


さやを見送り、コーヒーを入れて飲む。


「一緒にお風呂入ったのかい?」


お、おばあちゃん?


「え、えっとー、まあ」


「ふーん。早くひ孫の顔が見たいわ」


あんたもそっち側だったわ。


「私も、孫みたいわね」


うるっせ。


「俺もみたいなぁ」


父さんもかよ


「あーうるせー」


3人の言葉を適当に流す。


「寒いのー!」「さみぃー」


裸のまま、凸ってきた。


「落ち着け」


バスタオルを受け取ると2人を拭いてあげる。


「2人とも待ってー」


さやがバスタオルを巻いただけで、出てきた。


「あ、あ、あ、あ」


「戻れ」


「ん」


急いで、戻っていった。


ったく、何やってんだか


「周もさっさと入っちゃいなさい」


「そーする」


さやが出てきたのを確認してから、お風呂に入る。


「プハー疲れたー」


身体的にというより、精神的な疲労です。


疲れを落とすべぐ、しばらく湯船につかってから頭と体を洗ってお風呂をでた。


「上がったよー」


みんなに声をかける。


春と雪はもう寝るらしい。

みんなにおやすみの挨拶をして回ってる。


「周おやすみなの」「おやーみー」


春は眠たそうに目を擦りながら、雪はすでにフラフラしてる。


「おやすみ」


2人とおやすみのハグをして、送り出す。


2人は紅葉さんに連れられて寝室へと向かった。


「俺は、自分の部屋いくよ」


「私も行く」


「「「おやすみ」」」


「「おやすみなさい」」


さやと共に部屋に戻るとすでに布団が二つ敷いてあった。


「ふーなんか疲れたなー」


「そう?」


さやは、そう言いながら少し離れて敷いてあった布団をくっつけた。


はーねむ。


布団をいじいじしていたさやを抱きしめて布団に座る。


「どしたの?」


「なんとなくこーしたかっただけ」


「ん。いいよ」


さやの肩に頭を乗せるとさやは、優しく俺の頭を撫でてきた。


「お疲れ様」


別に何かしたわけでもないんだけどな。


「ありがと」


腕もさやのお腹に回して引き寄せる。


「あ、そーいや、雫さんっていつ来るの?」


「えっとね」


スマホを取り出して、確認する。


「明日には来るみたい」


「りょーかい」


雫さんもきて、明日からは余計にうるさくなりそうだな。


「周は明日何するの?」


「えーっと、基本的には母さん達と一緒におせち作りかな」


「手伝う?」


手伝いか…母さんと俺と紅葉さん。十分すぎる戦力だな。


「大丈夫そう。それよりは、春と雪の面倒みてあげて」


「ん。任せて」


「頼りにしてるよ」


さやの頭に手を乗せる。


「あとは…雫さんがはっちゃけないように」


「…ん。頑張る」


あの人何するかわかんないからな。

さやが否定しないところを見ても事実だろう。

仕事モードの時はそうでもないんだけどね。

ギャップがすごいんだよ。


「さてと、そろそろ寝るか」


「ん。ちょっと待って」


ん?どしたんだろ。


こっちをさやが見てくる。


「何?」


「血。吸いたい」


なるほど。


「いいよ。存分に吸ってくれたまえ」


「ん。いっぱい吸う」



「嘘。程々でお願いします」


「善処しゅる」


カプ


あ、いって。


チュゥー


「程々だよ?」


「んー」


チュゥー


「あ、ちょっと待って、そろそろまずいから」


血が足りなくなってきてる。あーフラフラしてきてる。


「あと、ちょっと」


え?俺死なない?大丈夫?


ぷはぁ


「ちょっと吸いすぎちゃった」


テヘペロじゃねーんだよ。

もう、視界がぼやけてきたっての


「飲み過ぎ。寝る」


重たくなった体に抵抗せず、そのまま布団に倒れる。


すかさず、さやが俺に布団をかけてくれた。

どうやら、ちょっとじゃないことは自覚してるらしい。


そのまま、さや自身も布団に入り、こっちの布団に浸食してくる。


「ごめん」


謝るなら最初からすんなって話なんだが。


「別にいいよ。さやが喜んでくれるならこんくらいどうってことない」


「ん。ありがと」


そういうと俺の手を握って目を閉じた。


あはー手がめっちゃ冷たい。



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