第79話 大掃除

旅行から帰ってきて数日。


今日も今日とてソファでグデェ。


こたつに入ればぬくぬくできるんだが、一つ問題がある。

さやとくっつけない。

これのせいで結局ソファにいることの方が多い。

後ろから抱くことはできるんだけど、足しか入らないからなんか寒いし。

結局こうしてソファでくっついてるのが色々と暖かい。


さやを股の間に座らせてぎゅーっとしながらスマホをいじる。

あと、寒いから上から極細繊維の毛布を羽織ってる。


「寒いね」


「暖房もうちょい強くするか」


エアコンのリモコンをいじり温度を上げる。


「あー。あー!大掃除しないと」


「大掃除?」


「そそ、年末だし実家の方帰るまでに掃除しとかないと」


ああ、めんどくせぇ


「手伝う」


「まじ?ありがと」


「ん。任せて」


念のために汚れてもいい服に着替えてから掃除を始める。


基本的な掃除はいつもやってるから大掃除とは言っても細かいところだけ。


「まずは、窓拭いていこう」


「おー!」


なんでも新聞を使うと綺麗にできるとか。


「と、届かない」


必死に背伸びしながら窓の上の方を拭こうとするも上の方が届いてない。


「上は俺がやるよ」


「低身長辛い」


どゆことだよ。


「かわいいからいいじゃん」


「かわいい?」


「ああ」


「ん。ならいい」


さやは、顔を赤くしながら答えた。


いいのかよ。



「よし、いい感じだね」


「ん。綺麗になった」


窓はいい感じだね。


「さて、お次は細かいところをやるぞ」


「おー」


右手を突き上げる。


家具をどかして、埃を取ったり雑巾で拭いたり。


「おー汚い」


「…だな」


ベットの下。


「なんかあった」


「あーなんだろうな」


放り込んだコンドームじゃん…


「あげる」


「あ、ありがと」


どーしたもんか。



「だいぶ綺麗になったな」


「ん。なんか広い」


放置してた紙ごみや、いらない物を片付けたり、した結果。

家が広くなったかもしれない。


「さやの家もやる?」


「ん。手伝って」


「もちろん」


久しぶりにさやの家に上がった気がする。


「きたねぇ」


「ちょっと汚いかも」


脱ぎ捨てられた服が何着もその辺に落ちてる。

食べ物系はないし、匂いを発するものもない。

ただ服が散らかってる。


「これ、なんなの?」


「んーわかない」


お前なぁ


「とりあえず、洗濯するか」


「ん」


そこらへんに落ちてる服を拾っては洗濯カゴに入れていく。


「あ?」


下着もか…


「あ、みちゃダメ」


首まで真っ赤に染めて俺の持ってた下着を奪い去った。


「あ、わりぃ」


「ちょっと外で待ってて」


「あ、はい」


やば、さっきのなかなかきわどかった。

さやってあんなのつけてんのか…って俺は何を考えてんだ!?


ドクンドクン


めっちゃ、心臓の音が聞こえる。

一旦落ち着こう。うん。


でも、黒のアレは…ってあああああ!


「ふーふーふーふー」


もう、俺はダメかもしれん。


「いいよ」


さやがドアを開けて体を出してきた。


「お、おう」


さっきまでこの部屋にいたはずなのに、なんか特別に感じる。


「え、えっとさっきみたいなのは隠したから」


「あ、ああ。そうか」


少し残念に思ってしまった俺がうざい。


「見たかったら言ってくれれば見せてもいい」


俺の感情を読み取ったのか、さやが着ていた長めのスカートをそっと太ももの際どい部分までたくし上げた。


「ねぇ、おそ…大丈夫だから。うん」


あっぶね。襲うところだった。


「ん」


そんなに顔真っ赤にするならやるな。

…にしても綺麗な太ももだったなぁ。


おっと、また邪心が。


頭を振って邪心を振り払う。


「大丈夫?」


「お、おう。そっちこそ」


「え、あ、うん。大丈夫」


ったく、かわいいなぁ。


さやの頭を少し強めに撫でて掃除の続きを始めた。


「ふーざっとこんなもんか」


服を洗い。さやの家の物干しじゃ足りないからうちのベランダまで使って服を乾かした。


「づがれだ」


「だな…」


プルルルル


さやの電話が鳴った。


「もしもし…ん。お久しぶりです。…ん…ん…ん。わかりました。ん!行く!今から行く。はい」


何話してたんだろ。


「誰?」


「美鈴さん」


ん?


「母さん?なんて?」


「早くこっち来いって。だから今から行きますって言っておいた」


えっと…


「…今から?」


「ん」


「まじ?」


「まじ」


明日にでも行こうかと思ってたんだけど、まさか今からか。

まだ、昼過ぎだし、真っ暗になる前には着くかな。


「よし、行くか」


「ん!」


「あーっと、バイク鬼寒いから厚着してこい」


「んー!」


荷物を取りにいったん家に帰り、服を用意して家を出る。


「バイク乗るの久しぶり」


「そういや、そうだな」


冬のバイクは何気に地獄。

冬は寒くて地獄。夏は暑くて地獄。


あれ?バイクのメリットって何?


かっこよければそれでいいじゃん。


さやのヘルメットをとめてやり、

荷物を乗せてバイクを跨ぐ。


「あ、これ渡しとく」


「手袋?」


「そ、しないと凍るぞ」


「!?ん。わかった」


いざ、出発。


「さ、寒い」


「ん。これはやばい」


これぞ、冬のバイク。寒さとの戦い。


途中、コンビニに寄ってカイロを買って身体中に貼りまくった。


「あと、ちょっとだから頑張って」


「ん」


大通りを抜けて脇道に入ると所々雪が残っていた。


気を付けねば…


転んだら笑えない。後ろにさやもいるし。



「ふー疲れたー」


「ついたー」


転ばないように気をつけるのにだいぶ精神力を持ってかれた。


「さっさと入ろ寒い」


「ん。寒いぃいぃい」


顎がガタガタしてる。


さやの肩を抱いて家に入る。


「ただいま」


「おじゃましまーす」


「あら、2人ともおかえりなさいって今にも死にそうな顔してるわね。こたつ入ってなさい」


母さんのありがたい申し出を受けてこたつで体をあっためる。


「あったけぇよぉ」


「うー溶けるぅー」


どたどたどた。


「溶けちゃダメなのー!」


「冷え冷えぇー?」


来てたのか。2人とも。


「久しぶり2人とも」


「春は元気だったの」「雪もぉー」


春は大きく胸を張って、雪はこたつから頭だけを出して答えた。


「さやお姉ちゃんなの!寒そうなのー」「あっためるー」


2人がさやに抱きつくとさやもさっきまで上がっていた肩がやっと落ちたように見えた。


「2人とも久しぶり」


「さやお姉ちゃんに会えて嬉しいの!」「うれしー!」


3人がジャレあう姿はこっちの顔も壊しにきてる。


「はい、どうぞ」


さっきまで消えていた母さんがあったかいココアを持ってきてくれた。


「ありがと」


「ん。ありがと」


「バイクできたんじゃ仕方ないわ。早く体あっためちゃいなさい」


おかげさまで、だいぶあったまってきたよ。


「さあ、2人ともあったまったら来なさい。みんなが待ってるわ」


「おばあちゃんが待ってるの!」「おじさんもー」


2人に引っ張られて、こたつを出る。


「いこーか」


「ん」


さやの手をとり、みんなの集まる今へと向かった。


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