第76話 温泉旅行

雫さんからもらったチケットの出発日が今日。

昨日のうちに荷物をまとめて、今日から行く。


高速バスに乗って向かうので、新宿へと電車に乗って向かう予定だ。


「おはよ」


さやが、キャリーケースを持ってきた。


「もう準備できてる?」


「ん。大丈夫」


よし。行くか。

俺もキャリーケースを出して家を出る。


「よし!いこーか」


「ん!いこ!」


だいぶテンション上がってんな。


電車で新宿へと向かい。バス乗り場へと向かう。


「どのバス?」


「えーっと。あれかな?」


すでにバスがたくさん並んでいる。


係の人に聞いてみる。


「あ、はい。このバスですね」


荷物を預けて、バスに乗り込む。


「どっち座る?」


「どっちでもいい」


「んじゃ、俺。通路側で」


2席が2列のスタンダートのバスで俺が通路側、さやが窓側に座ることにした。


「楽しみ」


だろうな。クマ出てるもん。


「バスの中で寝とけよ」


「ん。頑張る」


寝るのに頑張るとは…


バスには俺ら以外にも何組か、大学生くらいの人たちと社会人らしき人。比較的若い人が多くて、大人数で来ていた。


しばらくするとバスが動き出した。


「寝る」


「はいよ」


肩にもたれかかってくるさやの頭を撫でながら俺も目を閉じる。


「ねね。起きて」


さやに起こされる。


「どした?」


「みてみて」


テンションの高いさやを宥めながらさやの指差す窓の外を見る。


「雪か」


いちめん雪景色。


「もう、だいぶ時間経ってんな」


「ん。すごい」


「寝れた?」


「ん。さっき起きたばっか」


まあ、それならいっか。


目的地まではあと少しなようだ。

日も傾いてきてるのでついたら軽く周り回ったら終わりかな。


「到着でーす」


バスガイドの人の合図で荷物を持って、バスを降りてキャリーケースを受け取る。


うわ、寒い。

厚着持ってきててよかった。


「よし、いこっか」


「ん。いこいこ」


さやに手を引かれて、旅館へと向かう。


おーすごいな。和風建築の高級そうな旅館。


チェックインを済ませて、部屋に向かう。


「そういや、一部屋だな」


「ん?問題ある?」



「ないな」


「ん」


愚問だった。


「ここすごい」


部屋は大部屋一部屋。

真ん中には机と椅子があり、机にはお菓子が置かれている。


「食べていい?」


「いいよ」


いちいち、俺の許可取らなくてもいいんだけどな。


「あ、俺のは残しといてよ」


「むーバレた」


やっぱ俺のも食べる気だったのかよ!


ちなみに置いてあったのは干し梅。美味しかったです。


部屋の窓からは雪の積もった林が見える。


「幻想的な景色だこと」


雪が積もった木ってめっちゃ好きなんだよね。

風情がある。


「ん。いい」


「夕飯まで時間あるし、ちょっと外行かない?」


「ん。見に行きたい」


旅館を出て見て回ることにした。


防寒対策をして外に出る。

旅館の周りには川があり川沿いにはお店が。

さらに進むと小さい湖があるらしい。


「寒い」


さやが俺の手を握ってきた。


「手袋あったろ?」


「周の手の方があったかいからいい」


なんか照れ臭い。


「ねね。川氷張ってる」


「ほんとだ」


女将さんに聞いたところ湖は凍って上を歩くことができるらしい。


ちょっと楽しみ。


「湖行かない?」


「ん。行く」


さらに先へと進み湖が見えてきた。


「おお!すげー」


「んすごい」


湖が完全に氷ついてる。


初めて見た完全に凍ってる湖。


「入ってみよ」


「ん」


おお!湖の上立ってる!

氷が透明なところからは、水が見える。


「さやこないの?」


さやはまだ、湖の手前で渋ってる。


「わ、割れない?」


「大丈夫だって。ほら」


氷の上でジャンプする。


ソローっと氷の上に足を伸ばす。


「ね?大丈夫でしょ?」


「た、多分」


もう少し奥まで進んでみる。


「しゅ、周。これ以上先は危ない」


「ん?なんで?」


「割れたら死ぬ」


「割れないっての」


みた感じ氷も薄くなってないし。


「きゃっ」


さやが体勢を崩す。


「気を付けろ」


さやが倒れる前に手を掴み持ち上げる。


「あ、ありがと」


「どした?顔赤いけど」


「周の顔がかっこよかったから…」


どゆことだよ。


「大丈夫か?」


「ん。もう大丈夫」


太陽が沈み始めだんだんと寒くなってきた。


「帰ろっか」


「ん」


旅館に帰り夕食を持ってきてもらうことにした。


夕食は、お鍋。


コンロが設置されて、お鍋を置き。野菜や、お肉を入れてコトコト。


「美味しそう」


「食べよっか」


小皿に分けて、入れる。


「「いただきます」」


見た目どうりのさっぱりとした。しつこくない味。

それでいて、お肉はジューシーさがあり野菜は出汁が効いてて美味しい。


寒い日にこうしてお鍋を食べるのは至福だなー。


「「ご馳走様でした」」


ご飯を食べおわり着替えとかを持って温泉に行く。


「それじゃ、後でね」


「ん」


男湯と女湯で別れているので、ここで別れる。


お風呂には人はおらず俺だけの貸切状態。


「やったぜ」


頭と体を洗って温泉に浸かる。


「おー極楽極楽」


シンプルに屋内大浴場と、外には露天風呂に二つがある。


しばらく、中のお風呂に浸かった後露天風呂にも行ってみる。


露天風呂って、不思議な魅力があるよね。

別に露天風呂だといいことあるってわけじゃないけど、いかずにはいられない。

実際星空も見えるから、いいとこあるんだけど。


「うぅ、さむ」


急いで温泉に浸かる。


「ふへー」


きもちいー。


露天風呂入るならやっぱ冬の方が好きだなー。

外とお湯のと温度差がいい味を出してる気がする。


「…っとそろそろ出るか」


だいぶぼーっとしてた。


危ない危ない。危うく溺れるところだったぜ。


シャワーで体を流してから体を拭いて脱衣所に入る。


「…何!?」


なんとすでにお風呂に来てから1時間ちょい経ってる。


「これは…さやに心配かけさせたな」


はぁ…まさかこんなに時間経ってるとは思わなかった。


着替えは旅館で貸し出してる浴衣。


浴衣着ると旅行感が増すんだよなー


「うんうんちゃんと着れてる」


鏡で確認する。


「おっと、時間が押してるんだった」


急いで荷物をまとめて脱衣所から出て部屋に戻ろうとするとさやが走ってこっちにきた。


俺を見るとダイブしてきた。


「おっと。どした?」


ダイブしてきたさやを受け止める。


「全然帰ってこないから心配した」


さやは、涙目でそう答えた。


「それは、まじでごめん。ついついぼーっとしてた」


「ん。気をつけて」


「はいよ。それより、浴衣ちゃんと着直せ」


焦り走ってきたせいもあってか。浴衣が着崩れて方も下着も見えてる。


「あ、ん」


顔を赤らめて頷くとイソイソと着直した。


「さて、戻ろっか」


「ん」


さやの手を取って部屋へと戻る。


部屋にはすでに布団が敷かれていていつでも寝れる状態だった。


「そういえば、ここの旅館家族風呂あるって言ってた」


「ん?そーなのか?」


「ん。明日はいろ?」


「…ダメだろ」


流石に、家族風呂は無理だろ。家族ではないし。


「んーん」


「予約しなきゃ行けないんだろ?多分断られるぞ」


「もうしてある」


「…まじ?」


「まじ」



「んーあー…オッケー」


「やった!」


俺に抱きついてくる。


「じゃあ、早く寝よ」


べしべしと布団を叩く。


「はいはい。嬉しいのはわかったから落ち着け」


二つの布団をくっつけて布団に入る。


「明日は何するの?」


電気を消すとさやが聞いてきた。


「明日はスノーボードだ」


「ん。楽しみ」


「なら寝ろ」


枕と枕もくっつけて、それもう一つの布団でもよくね?と言わんばかりの密着度で寝る。


「ん。おやすみ」


「おやすみ」


さやの顔についた髪を取ってあげた時のくすぐったそうな嬉しそうな顔はめちゃくちゃ可愛かった。


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