第62話 うちの彼女が神すぎる件

side優





毎週土日、お互いの予定がなければ花音は朝からうちにやってくる。

土日の昼食は基本うちで食べるものだから花音の家から食費をもらってるほど。


花音がうちにくるからと言って特別何かあるわけではない。

ただ、隣にいるだけで、喋りながらだらだら過ごしたりゲームしたり当たり前のように花音は俺の隣にいてくれた。


ただそれが、俺の中で当たり前になっていた。


心境の変化があったのは修学旅行でのこと。貴船神社で引いたおみくじでの時。たしかに最近は少しマンネリ化していた。


何をするでもなくただ一緒にいること。

幸せであるはずのその環境に特に何も感じていなかった。


自分で言うのもアレだが、俺は愛情表現が苦手だ。


恥ずかしいし


それに対して花音は愛情表現が激しい。

俺はそれに対して一方的に安心感を抱いていた。


俺は何もしてない。


花音がどう思っていたかはわからない。

今考えれば俺は花音に不安を感じさせていただろう。



めっちゃ反省した。



俺は花音が好きだ。



周の後押しもあって修学旅行中に自分の気持ちを素直に伝えられた。


花音は喜んでくれた。


俺は決めた。変わると。少なくとも花音の前では…


トントン


「入るよー」


「どーぞー」


今日も今日とて花音はうちにきた。


今日はいつものように部屋着ではなくちゃんとした服装。


なぜって?


「今日は出かける」


「お?めずらしいねー?」


「嫌か?」


そう聞くと花音はすぐに首を横にふった。


「そんなことないよー!いこいこ!」


乗り気でよかった。


「それでどこいくの?」


「花音どっか行きたいところあるか?」


「んー服買いに行きたいかなー冬服」


「じゃあ、そーしよ」


「ありがと!」


花音の行きたがっていたお店へと向かった。


「んーこれとーこれとー」


今は試着する服を選んでいる。


女物の服屋。


俺は花音の後ろをついていくだけ。


あーめんどくせー…あっぶねえ!変わるんだろ!小西優!


「試着してくるねー!」


「おう。いってらー」


どこで待とうかなー


「ちーがーうー優も来るの!どれがいいか選んでもらうから」


あ、そなのか。


そこそこな量の服を持って試着室に入り唸りながら品定めをしている。


「んーよし!」


中から何かを決めた声が聞こえた。


「第一弾!チェックのロングスカート。どお?」


「普通に似合ってるな。もうちょい花音の身長があればなもっとよかったんだけどな」


「言ってくれるなー!これ着るときはハイヒール履くから大丈夫!」


まあ、それならいいかもな。


感想を聞くとまた試着室に戻りゴソゴソと着替え始めた。


「第二弾!ちょっとセクシーなオープンショルダー!」


「すごくいいんだが、良すぎて困る」


「んふふーこれは買いだねー」


嬉しそうに戻っていく。


いや、ほんとに破壊力がすごかった。他の人の視線集まりそうで嫌なんだけどな。


「第三弾!セーター!」


これまた、核爆弾ですか?


「それはやめとけ。やばいから」


セーターっていいんだけど。その…胸のラインが結構出ると思いません?


そんで花音ってまあ…でかいじゃないですか。


そゆこと。


「その顔はー。買い!」


「おい」


「優とのお家デートで着る〜」


それならいいんだけど


さっきのもそれで頼む。


しばらくすると元の服装で花音が悲しそうに試着室から出てきた。


「どした?」


「このセーター高い…」


あーそゆこと


「いいよ。俺買ってあげるから」


「いいよーまたお金の余裕ある時買うし」


「いいって、日頃の感謝だから」


「…ねー優。今日ちょっと無理してるでしょ」


ギクッ…


「イヤソンナコトナイヨ」


「最初からわかってるよ。いつもと違ったし。どんだけ一緒にいると思ってる


の?」


「バレバレでした?」


「もう、別人くらいには」


前の俺どんだけだよ


「今までは、出かけようなんて言わないし。服買いにいくの嫌がるし。試着しても似合ってるしか言わないしー」


あれ?俺飛んだクソ野郎じゃないか?


「…まじ?」


「まじまじ」


「よく今まで俺のこと振らなかったな」


いや、ほんとに


「だって好きだもん」


「お前将来悪い男にでも捕まりそうだな」


「今捕まってるからねー」


うっ!


「いや、それはすまん」


「いーの。わかってるからデートとかだと死ぬほどつまんない奴だけど花音のこと何よりも大切にしてくれてるのはわかってるから」


「お、おう」


なんか、恥ずかしい。


「顔赤いねー」


「うっせ。お前もだ」


「あはは。自分で言ってて恥ずかしくなっちゃった」


「まあ、今日は奢らせてくれ。今までのお詫びだ。ほんとに」


「そんなに言うなら仕方ないなー割り勘にしよ。お詫びはこれからの態度で返してくれたまえー!」


「はいよ」


うちの彼女が神すぎる件ってラノベ一作品書ける気がする。

ほんとに、俺ってどんだけ恵まれてんだよ。


昼食を食べにお洒落なカフェにきた。


「2人でこーゆーとこ来るの久しぶりだねー」


うっ


「なんかすまん」


「別に攻めてないよ」


メニューを見て品定めする。


「花音はサンドウィッチーにするー」


「俺はBLTで」


店員さんに注文を伝える。


「こちらコーヒーとココアです」


俺がコーヒー花音はココア


「貴船神社のこと気にしてる?」


「まあな、気にしないわけにはいかないだろ」


「花音が浮気すると思う?」


「思わないけどさ」


いかんせん俺がクソ野郎だから愛想尽かされそうで…


俺が信じてないのを悟ったのか、少し昔の話を始めた。


「付き合ってから一週間くらい経った時公園に呼び出したの覚えてる?」


「もちろん」


初めてキスした時だし。


「あの日、本当は優のこと振ろうと思ってたんだー」


「ブフォッ!?は?」


あぶね。口からコーヒー出かけた。


「だって優かっこいいけど付き合ってから死ぬほどつまんなかったもん」


うっ…死ぬほどって…イタタタタ


「でもね、別れようって決めたのに、実際に会ったらやっぱ好きだなーって思っちゃっのー」



「いや、どゆこと?」


「わかんないけど、別れよって言う前にキスしちゃった感じ」


いや、全然わかんないんだけど


「まあ、そんだけ好きってことー」


「わかりづらい説明ありがとー」


本当によくわからん。俺がディスられただけじゃん。


「まあ、その後くっそつまんないない彼氏だなーって思いながらも付き合ってたけどしばらくしてからわかったんだよ。この人ただめっちゃ不器用なだけなんだなって」


あーそゆこと。なんか付き合ってから一ヶ月くらいから妙に元気になってベタベタしてくるようになったのはそれでか


「なんかほんとにごめんさい」


「いいよ、もうわかってるから。優の全部」


それは怖いんだけど


会計を済ませてからお店を出る。


「いこ」


花音の手を握る。


「お、優から手を繋いでくるなんて奇跡かな?」


「うーそのネタでいじるな」


「悪いのは優でしょー」


「はいはい。ごめんさい」


俺って自分で思ってたよりヘタレだったらしい。

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