第60話 修学旅行 4日目

4日目、今日はラストの日。

ちなみに帰るのは明日。


クラス単位で座禅体験、清水寺を回る。


朝食を食べて着替えてから外に出る。


「おはよ」


「あ、おはよ」


さやの顔を見ると昨日のことが頭に浮かぶ。


あーやべ


「なんで目逸らすの」


「いや、ちょっと昨日のが蘇ってきた」


「…あんま思い出さないで」


「お、おう」


顔が赤くなった。


「い、いこーか」


「ん」


最初に向かうのは座禅体験。


叩かれそうでめっちゃ怖いんだが…


お寺に着くとちょうど前のクラスの体験が終わったらしい。


「はーい。じゃあいくよー」


お寺に入って座る。あぐらでいいらしい。

女子は正座でもいい。


なかなか優しいじゃない。


お坊さんの説明を聞き終わると奥から偉そうなお爺ちゃんお坊さんが出てきた。


お坊さんがお経を読む中、偉そうなお坊さんが俺らの周りを叩くやつ持ってゆっくりと徘徊してる。


すごく怖いんだが、足音でどこら変いるかわかるし。


グーグー


優ねてるだろ!おい!


優の近くで足音が止まった。


あーこれはくるな


べし!


「あ、いった!」


ウルセェ


「寝るではない。心を無にするのだ」


「お、おう」


お坊さんのありがたい言葉を受けると優は静かになった。


俺も叩かれないように心を無にしよう。


・・・


「ムームームームームームー」


え?無ってそういうことじゃなくない?


べし!


「いてえんだよ!このやろう!」


「うるさいわい」


まあ、確かに


優は痛そうに肩を摩っていた。


どんまい。


「心を無にするのだ」


そういうとまた、歩き始めた。


一周してまた、こっちきたー

ん、待って待って止まったんだけどなに?

叩かれるの?


べし!


「いてええええ」


またも、優が叩かれた。


「昼食のことを考えるでない」


「なんでわかんだよ!」


あってんのかよ


その後も優は叩かれ続けた。


「彼女のことを考えるでない」


べし!


「わしのことを愚痴るでない」


べし!


「修学旅行終わったらゲームしよーとか考えるでない」


べし!


なんでこのお坊さんそんなにわかんだよ。怖すぎだろ


もう、何回叩かれたかわからなくなった頃

体験は終了した。


「なんか、肩こりがほぐれたわ」


座禅体験でその感想はないだろ


「優邪心多すぎなんだよー」


「いや、無になるとか無理だから」


まあ、わからなくもないけどさ


「ボーッとしてればいいんだよ」


「いや、むずいんだよ」


こいつは、馬鹿だから仕方ないか


「優は、馬鹿だから仕方ない」


さやさん。直でいうのね


「そーそー優は馬鹿だから」


「ウルセェー」


いじける優を連れてバスに乗って清水寺に向かう。


「すごく高い」


「おちんなよ」


清水寺のベランダみたいなところから街を見渡す。


「大丈夫。落ちても死なないらしい」


「今は、コンクリートだから死ぬと思うぞ」


地面が土でそれがクッションになったとか聞いた気がする。


「ん。きおつける」


それにしても、今日は晴天めっちゃ景色がキレイなんだよ


「周、写真とろ」


さやが俺の裾を引っ張ってくる


「ん?いいよ」


「花音とってー」


花音にスマホを渡して写真を撮ってもらう。


「オッケー!いくよー。ハイ・チーズ!」


若干顔が引きつった。


なぜって周りの生徒がこっちをめちゃくちゃ見てくるから。


「周がブスだからもう一回!」


いや、仕方ないだろこれは


「はーい、もっと寄ってー。なんだったらギューってしちゃってー」


いや、するわけないだろこんなに人から見られてるのに。


さやが俺の手をとってお腹に回す。


「さやさん?」


「ギューってしてて」


まじで?


あーもうわかったよ。そんな顔すんな


「ん。OK」


「いいねーいいねーハイ・チーズ!」


はあ…人前で写真撮られるの本当にやだ。


「今度花音たちとってー優ぅー!」


花音たちのことも撮って清水寺から出る。


「よっし!お土産買いに行くぞー!」


4人でまわろうと提案しようと思った矢先、花音と優は一瞬にして、どこかに消えた。


「足はえーなー」


「2人でまわろ」


「そだな」


これはこれでいいし。


清水坂沿いのお店をまわる。


「なんか買うものある?」


「雫さんにお土産。八ツ橋買ってく」


「そーだった。俺も母さんたちになんか買ってくか」


八ツ橋を売ってるお店もしっかりとあった。


買うものは決まっていたのでさっさと会計する。


「周もそれ買うの?」


八ツ橋がいっぱい入った。お土産用のやつ


「そ、母さんたちにね。んでこっちが俺らよう」


お徳用版。形歪だったりするけどその分安いやつ。

これいいよね


「ん。食べたい」


会計を済ませて、お店をひやかしてまわる


「アイス食べたい」


「アイスって時期でもないけど、まあいっか」


「ん。抹茶一つ」


抹茶味が一番人気らしい。


「俺は、バニラ」


めっちゃ看板が抹茶味を押してくるのをグッと耐える。


「はいどーぞー」


キレイに盛られたアイスクリームを受け取りベンチに座る。


「ん。美味しい」


「バニラも普通に濃厚で美味しい」


値段が高い理由もわかる。


「食べる?」


「ん。食べたい」


さやにバニラをあげて俺は抹茶をもらう。


ほう。なかなかうまい。抹茶の苦味がしっかりとあるもののしつこくなくてアイス特有のさっぱりした味。それでいて甘くて美味しい。


「ん。こっちも美味しい」


お互い分け合いながら食べてると、どこからか2人が出てきた。


「イチャイチャ食べさせあってるところ失礼しまーす」


「よー楽しそうなことしてるじゃん」


いつの間にか消えてた、花音と優


「どこ行ってたの?」


「これこれ」


両手には結構な量のお土産達。


「そんなにいるのか」


「ほとんどは自分で食べる用だからな」


なるほど


「でねでね。一緒にお揃いのキーホルダー買わない?」


それに誘いに来たのか


「俺はいいよ」


「ん。行く」


小物を売ってるお店に行きキーホルダーを物色する。


「んーいいのあるー?」


「わからん。これどうだ?金の剣」


「男子ってなんでそういうの欲しがるの?」


「俺にもわからん」


優は、さっきまで木刀を買うかどうかで迷ってたらしい。

絶対いらない。


「これは?」


さやが見せてきたのは、京都名産の紐を結んだようなもの。


「おーかわいい!」


「まあ、それなら俺らも付けれるか」


そういうことでそれに決定。

色は、俺とさやは紫。花音と優は赤と青で壮絶な戦いを繰り広げた末。

さやの青は紫に似てるという理由から赤に決定した。


「ん。キレイ」


「そういえば、付き合ってからこーゆーのなかったもんな」


「んーん。指輪ある」


胸元から服の中に隠れてるネックレスを取り出す


「指輪以外はこれが初めてだろ?」


「ん。嬉しい」


「そだな」


しばらく、近くのお店をまわってから宿舎へと帰ってきた。


こっからは自由時間。夕飯まで、ざっと3時間。


新幹線乗れば帰れる。


お風呂に入り、明日の帰りの準備をしておく。


夕飯を食べて、特にすることもなく、またお風呂に入り。

修学旅行でこんなにぐーたらするとは思わなかった。


とは、言っても時間はあっという間にすぎてすでに夜。


「寝よっか」


「おーおやすみー」


あんまり眠くないけど、目を瞑る。いつか寝れるだろ。


もぞもぞ。


しばらく寝ただろうか。なんか俺の近くでなんか動いた。

あ、また。


もぞもぞ


誰か俺の布団入ってきたのか?


目を開けて周りを見るが、隣の優はしっかりと自分の布団で寝てる。

隣は壁。


それでもぞもぞしてるのは壁側と…謎は深まるばかり


「ぷは」


動く物体の正体はさやだった


「おま!「しー。起きちゃうから静かに」


俺の口に手を当ててくる。


うなずく


「それで?どしたの?」


「シュウニウムが足りない」


はい?


「いや、わからなくもないけどさ、なんで今きたんだよ」


「だっていつも周りの人、気にして甘やかしてくれないんだもん」


恥ずかしいじゃん…


「明日帰りだからさ、もうちょっと頑張って?」


「やだ。一緒に寝る」


「いや、バレたらやばいから」


「やーだー」


あーヤダヤダ期きてる


「むー周が悪い。ギューってしてくれないし」


いつも一緒に寝過ぎたな。これは


「はいはい」


さやを思いっきり抱きしめる


「い、いきなりはよくない」


「まあまあ」


赤くなってるであろうさやを撫でる。


「周。ずるい」


「やめる?」


「やだ。もっとやって」


「はいよ」


全く困った子だ。





可愛すぎて仕方ない。



「周。おはよー?」


「おは…よ」


俺に朝の挨拶を投げかけてきたの隣で眠るさやではなく。

隣で寝てた優だった。


「随分とお楽しみだったな」


「知ってたのか?」


「今気づいた」


さやは、まだ隣で幸せそうに寝てる。


「まだ、他の奴ら起きてないから今のうちに返してこい」


「ああ、そうする。ありがとな」


「貸しだかんなー」


けちだな


一向に起きそうもないさやをお姫様抱っこして、部屋に連れて行くと

さやがいないことにみんな困惑してた。


「ったく、迷惑かけんなよ」


さやを布団に下ろし頬を突く


「やだ」


自室に戻ろうとするとさやに両手で引っ張られて体勢崩してさやの隣に寝っ転がった。


結局戻るにはだいぶ時間がかかってしまった。


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