第59話 修学旅行 3日目 後編

駅から出るとそこには紅葉で赤く染まった嵐山があった。


「すごい」


「ああ」


「こっち渡月橋だって!」


花音が看板を見つけてらしく、渡月橋へと向かって歩き出す。


「これだね」


でかい川をでっかい橋が跨いでいる。


「こーゆー橋好きだわ」


「わかる。装飾しっかりしてていいよね」


渡月橋の橋の横は、いわゆる昔の橋の横の部分みたいになっててなんかいい。


橋の上からも嵐山が見える。


渡月橋、川、嵐山。


おー京都だ!


「めっちゃ綺麗だね」


「ん。マッチしてていい」


しばらく、橋の上から紅葉眺めていた。


「お団子食べたいー!」


大自然の中に溺れる中。

花音の食欲の声に我に戻った。


また唐突だな。


「団子屋なんてあんのか?」


「わかんない。調べよー!」


「あるよ、ほれ」


優の指差す先には、『団子』と書かれた。

どう見ても団子屋があった。


「あそこいこー!」


「はいはい」


「でも、あれだよね。せっかくの渡月橋なんだから月見たくない?」


それはわかる。


「でも、無理だろ。夜には帰らなきゃいけないし」


「帰ったらいってもいいか聞いてみよー!」


いくらうちの修学旅行の自由度が高いからといって夜に生徒を出歩かせるのは無理だろ。


「さあ、来たぞ!団子屋!」


早速なんの団子を頼むか吟味する。

と、言っても俺は決まってる。


「花音見たらし団子!大盛り!」


「俺あんこので」


「んーみたらしにする」


「三色団子で」


三色団子は春だって?美味けりゃいいんだよ。


三色団子最高!


「少々お待ちくださーい」


席について、団子が来るのを待つ。


「いやーいいねーここ」


席は全て屋外で、もみじが植えてあり、風情がある。

しかも座る席は、いわゆる団子屋のあれ、椅子に赤いのがかかってる。


「ザ、団子屋って感じだな」


「ん」


そんなことを話してたら、団子がきた。


「おーおいしそー!」


「「「いただきまーす!」」」


うお、うめぇ。安くない三色団子だ。しっかり三色してる。


あの、色だけ変えとけばいいだろ。みたいな安っぽいのでは断じてない。

これは美味しい。


みんなで回して、いろんな味を堪能する。


「おかわり!」


「俺もー!」


ええ。まじで?食べれんの?夕飯あるんだけど。



「やばい…気持ち悪い」


「うぅ…」


案の定優と花音はダウン。


「ほれ、帰るぞ。歩いてれば消化するって」


「お、おう…うぷ」


あんなに食べればそりゃこうなるわな。


「あー、歩いてたら治ってきた」


「うぷ」


花音はなんとか回復。

優は、まだダメそう


ここからはそこまで遠くもないのでさっさと宿舎に戻る。


「よし、もう大丈夫だ」


宿舎に着く頃には優も回復。

なんとか無事何事もなく帰ってこれた。


「あ、せんせーい!」


花音が先生の元へと走っていく。


どうしたんだ?


「渡月橋で月見たいので、夕飯のあと言ってもいいですか?」


まじで聞くのかよ!


「…」


ほら。何言ってんだこいつ、みたいな顔してるよ


「……いーよー!」


えええいいのかよ!おい教師!

行けるなら全然ありがたい限りなんだけどさ


「やったー!ありがと先生!」


なんでかわからないけど許可を得た俺らは、夕飯を食べてしばらくしたら渡月橋にいくことにした。


「じゃ、あとでねー」


「おーあとでなー」


2人と別れて夕飯まで時間を潰した。



夕飯を食べて終わって再度女子2人と合流する。


「ヤッホー」


「よ」


「ん」


「うぷ…」


優は、さっきの団子が残った状態で夕飯に挑み負けた。

それだけ…


「俺、宿舎で待って「よっし!いくぞー!」


花音に腕を組まれて強制的に連れて行かれる。


外はすでに日は落ちて真っ暗、月も見えてる。


「はあ、死ぬかと思ったぜ」


嵐山についた頃優は回復した。


「暗い」


「だな」


道には、少量の街頭しかなく、暗い。

渡月橋に向かって歩き出す。


渡月橋は、足元がライトによって照らされていら。


なんか飛行機みたい。


「あ!月見えた!」


ちょうど、綺麗な満月が見える。


「すご…」


「ん。キレイ」


「ああ」


なんかいい言葉が出てこない。

とにかくキレイだった。


「ねね。ここの近くに竹林の道があるらしいんだけど行かない?」


「いいね。いこーぜ」


「いいけど。さやは?」


「いく」


満場一致


ということで竹林にきた。


人全くいない…不気味。


ライトで照らされてるけどあくまで道から上に向かってのライト。林の奥は見えない。


「花音もしかして怖がってんのか?」


「えええ?ち、違うよ」


図星じゃん。


「ほれ、手」


優の手を速攻で握る。


さや…はすでに腕掴んできてる。


「怖い?」


「周が怖がってるから仕方なく」


たまにこの子強がりするよね


「まあ、いいけど」


かわいいし


「とりあえず進もっか」


「だな」


なんか、肝試しみたい


風で竹がザワザワする。おーめっちゃ不気味。


「ね、ねぇ。やっぱ帰ろ?」


「ん。それがいい」


優と顔を見合わせる。うん。


「「さて、続きいこーか」」


「ちょ、なんでよ!」


「ダメ、危ない」


いやー怖がる君らがかわいくて


ひゅぅ〜


抜けてくる、風がまたなんとも怖い。


「うぅー」


「周、怖い」


あ、素直になった。これはよほどかな


「そろそろ帰るか」


「まあ、十分堪能したろ」


カエッチャウノ?


「ん?」


「どした?」


「いや、今帰っちゃうの?って聞かなかった?」


「え?」


「え?」


…急いで帰ろう


「ヤダヤダヤダヤダヤダ」


花音メンタルブレイクのお知らせ。


「止まるなバカ」


優がおんぶする。


「大丈夫?」


「ん。離さないでね」


「もちろん」


走って、竹林を抜け出して駅まで直行する。


「はー怖かった」


「いやーほんと怖かったな」


「ん」


花音は、まだ優に抱きついて離さない。


「花音?もう大丈夫だよ」


「まだダメ」


どうやら落ち着くのにもう少し時間を要するっぽい。


「帰ろ」


「それがいいな」


「おう」


電車で宿舎へと戻る


「花音もう大丈夫?」


「うん。ごめんごめん」


花音もすっかり元どおりに戻った。


「じゃ、おやすみ」


「ん。おやすみ」


2人と別れて部屋に戻る。

すでにみんなお風呂には入ったらしい。

時間は10時過ぎ、それもそうか


「お風呂いこーぜ」


「そーしよー」


みんな入ったからお風呂には誰1人いなかった。


「おー貸切じゃん」


「ラッキーこれはいいね」


「飛び込めるぜ」


子供か!


体を洗って、お風呂に浸かる。


「これ、露天風呂から月見えるかな?」


「あー確かにいこーぜ」


しかし、露天風呂からは施設の屋根が邪魔して見えなかった。


「これさ、混浴からなら見えんじゃね?」


「そーかもな。いくか」


混浴風呂は、施設からさらに離れる位置にあるからもしかしたら見えるかもしれない。


「おー見えた!」


「いいねぇ。露天風呂で月見るってのは」


ごもっともだ。


いつもならみんなとおしゃべりでもするが、たまにはこうやってゆっくり入るのも悪くない。


疲れを癒していると、女子風呂の方から声が聞こえてきた。


「月見えるかも!しかもお肌ツルツルのおまけ付き!」


この声は…花音だな


「あれ?周と優?」


「「よー」」


「何?女の子くるの狙ってたわけ?」


怖!


「ちげーよ。お前らと同じだっての。月見にきただけ」


「ふーん。ならいいけどー」


花音の後ろにはもちろんさやがいた。


俺の隣に座る。


「月キレイ」


「だな。いい時にこれたよ」


「ん。周と一緒にお風呂入れて嬉しい」


「俺もだよ」


絶賛息子さんがハッスルしてます。

救いなのは、乳白色のお湯。


冷静なのは表面だけで、中身は超やばいってわけだ。


だってだよ!

濡れた髪に濡れた肌。タオルは巻いてるものの、体のラインはしっかり出てる。

見えてるのは上半身の半分くらいだけど、それでもなかなかの破壊力。

さやの胸はでかいわけではない。でも女の子の体だ。エロイ。


ああ!がんばれ息子よ!静まれ!


「そんなにジロジロみられると恥ずかしい」


頬を赤く染めて言ってくる。


「…っ、ごめんついキレイで」


うそ。エロくて


「むーえっちぃー」


あれ?心の声漏れてた?


しばらく一緒に月をみながらお湯に浸かっていた。


お!きた!息子さんが引き籠った!これはチャンス!


「俺そろそろ上がるよ」


立ち上がり男湯の方へと向かおうとすると

さやが後ろから抱きついてきた。


「もうちょっと。もうちょっとだけ」


ああああ!まずい!最高にいい。最高にいいんだけどまずい。

股間に血液が流れてく。


「後でじゃだめ?」


やばいやばい


「やだ」


ああ、この子今わがまま状態だ。


耐えろォオ!


羊が1匹羊が2匹。ふっくらとした柔らかいのが背中に2つ…ってああああああ


もう、やばいんです。

体が密着しすぎてる。今2人を隔ているのはタオルの一枚だけ。

さやが体を密着させてくるせいで、さやの感触が全て伝わってくる。


さやの吐息が背中にあたる。


押し付けてこないで…お願い。理性が…崩れる


「あの…そろそろ」


「ん。もう大丈夫ありがと」


後ろから伝わってきた感覚が離れていく。

ああ、今すぐ襲いたい。このまま押し倒したい…

そんな気持ちをなんとか抑制する。


「じゃ、おやすみ」


「ん。おやすみ」


「抱きつく時は、服着てくれ。これは頼む」


「ん。次からそーする」


後は振り返れなかった。理由はお察しの通り…


今さやがどんな顔をしてるのか気になっても見れない。

俺のプライドがそれを許さなかった。


男湯に戻ると頭から冷水を浴びる。


「冷てぇええ」


火照ったその体を冷やす。


「寒い」


今度はあったかいの


「はぁ…最高だった。俺死ぬかもしれん」


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