第58話 修学旅行 3日目 前編

「おはよ」


「おはよーぷぷ」


優の顔を見るとつい笑えてくる。


「おい、お前ら人の顔見て笑うな」


「いや、悪い悪い。昨日の顔を思い出してさ」


「それな、あの嬉しそうな笑顔。キモかったなー」


「やめろ。まじで」


昨日、花音に会いに行って帰ってきた優は、すごく気持ちの悪い笑顔で帰ってきた。


何話したかは教えてくれなかったが、まあうまく行ったんだと思う。


「はぁ…朝食行くぞ」


「おー」


今日の予定は、嵐山方面を回る予定だ。


朝食を食べて服に着替えてさやと花音と合流する。


「おはよー!」


「おはよ、落ち着け」


抱きついてくる花音を止めてる


「おはよ」


「おはよ」


「最初って八ツ橋だよね?」


「そ、体験のやつね」


最初は、八つ橋作り体験。

電車でお店まで向かう。


「ここだね」


「お邪魔しまーす!」


花音が元気よく中に入る。

中は普通のお店。どーやら二階が、体験場になってるらしい。


渡された赤い制服に着替える。


「周、職人さんみたい」


「そーか?さやは、店員さんだな」


こんな可愛い店員さんいたら買い占めるわ


「優は…まあ。似合ってねーな」


「ウルセェ」


ちゃらすぎて、和な、制服があってない。


「花音も似合ってない」


「胸がきついー」


うん。キツそう。

それ以上のコメントはやめとく


まずは、お手本を見せてもらう。


「なんか流れ作業って感じだな」


「ん」


八ツ橋の生地を鉄板に置いて

木の重しのような物を上に置く。

そしたらすでに焼いていた隣の生地を上に乗せてた木を二つ使って裏っかえす。これが難しい。裏っ返したら隣にずらす。

そしたらまた新しいのを焼く。


このループで作っていく。

焼き終わったら丸い棒に当てて

あの瓦のようなフォルムにする。


「余程のことがない限り失敗しないから気軽にやってみてね!」


結構難しそうだけどな


「花音からやる!」


一番最初に挑戦するのは花音


「えっとーこーしてこーして」


おー結構できてる。意外と簡単なのか?


「おーうまいねー」


店員さんにも褒められてる。


「できた!」


焼き終わって形も作る。


「じゃあ、次俺で」


お次は優


「こっちが先で、次こっち?いや、こっちか」


うん。こいつ下手


「よし!ひっくり返すぞー」


案の定真っ二つに折れた。


「あ…」


焼き終わった、優の八ツ橋は細かったり逆に太かったり。

まるで子供の粘土みたいだった。


「次いく」


お次はさや


この子も心配だな。大丈夫かな?


「鉄板熱い」


そりゃそーだろ


パッパパッパと作っていく。


いや、すごいな


「あーちょっと早すぎて生焼けだね。これでよくひっくり返せたね」


「あらら」


逆にすごいな


もう一周やればちょうどいい感じになった。


「できた」


さやも結構キレイにできてる。


「おし、やるか」


まあ、言っても毎日ご飯作ってる身ですから。

任せなさい。


「…え?むずくない?」


なんか女子2人めっちゃ簡単そうにやってたじゃん。


「あーちょっと焼き過ぎちゃったかな」


裏っかえすのに時間かかりすぎた。


形を整える。


「周下手だったね…プププ」


うぜぇ


「男子にはできないのかね」


「かもな」(※そんなことないです)


まあお前ほどではないけど



次に向かうは地主神社。

言わずと知れた恋と縁結びで有名なところだ。


2人ほど、地主神社に向かうにつれて緊張してるやつがいる。


「縁結びー頼むー!」


「大丈夫…大丈夫…」


お前ら落ち着けよ


とりあえず、お参り。


「優と一緒にいられますように!」


声でかい。


「花音と結ばれますように!」


もう、結ばれてるじゃん


「子供に恵まれますように…」


さやはだいぶ遠い未来のお願い事をしてるらしい


えーっと。俺もお願い事しよーか


(…さやと幸せな家庭を気付けますように)


「よ、よし。おみくじやろう」


そんな鬼の形相で言われましても


「や、やろう」


「はいはい。2人とも落ち着け」


恋うらないおみくじを引く。


「さ、さあ。どどどどーだ?」


優顔青いよ


「あ、大吉だ」


お、いいんじゃね?


「なんて書いてある?恋愛のとこ」


「最上の恋である。1日でも早く結婚に踏む切れ」


わーお。これまた


「ムフフ〜いいねー」


花音は大満足らしい。

もっとも、優も満更じゃなさそうだが。


「じゃあ、花音次!これは流れがきてるはず!」


「あー吉だ…」


ほらーなんか空気重くなるじゃん。


「あーでも見て見て!相手の態度に不安を感じても愛は確かな物だって!」


なるほど。当たってるな。


「ムフフ縁談のとこ見てー結婚後まもなく妊娠するってさ!」


嬉しそうだねぇ。優もなんか赤くなってるし。

まあ、貴船のこともあったけど。今回ので吹っ飛んだかな。

何せめっちゃいいこと書いてあったし。


「さて、お次は俺らだな」


「ん。先いく」


さやが先に引く。


「ん。大吉。お互いに打ち解けあって思いやりのある恋できる。結婚に至る努力始めよ。だって、結婚しよ?」


実践するの早すぎません?


「俺も引くからとりあえず待って」


さて、大吉多いし俺も出るかな?


「…凶」


ヤベェ。めっちゃ見たくねぇ。これで別れた方がいいとか書かれたらどうしよ。

いや、おみくじだし気にしなくていいよな。うん。そうだ。


「愛情に溺れすぎる傾向にある。このままではダメ理性を保って依存しすぎないこと。」


…まあ、良かったけどよくねえええ


「もっと溺れてもいいよ」


「いや、遠慮しとく」


「溺れるプププ」


「間違ってねえかもな」


ウルセェ


こうして、無事地主神社を後にした。


「お昼ご飯どこいく?」


「どーしよっか?ここら辺でなんかないかな?」


「知らん」


まー色々あるでしょ


早速みんなで探し始める。

スマホって本当便利。


「うーんここ行きたいけどめっちゃ高いなー」


さやが見つけたのは高級すき焼き屋。うん。無理。


値段をよく考えて。


「ここは?オムライス」


あ、いいねーオムライス。


うん。写真のめっちゃうまそう。


「いーねー。こっから近いの?」


「ちょっと遠いな」


「まあ、いんじゃね?急いでもないし」


「ん。我慢する」


決まりだね。

今日のお昼ご飯はトロトロオムライスです。


お店は路地裏にあるこじんまりとしたお店だった。


「ここだよね?」


「そーだな」


お世辞にも広いとは言えないお店。


なんかこーゆーのいいよね。


カランカラン


ドアを開けて入り席に座る。


お店にはおじいいちゃんとおばあちゃんの2人しかいなかった。


「注文は何にするのじゃ?」


じゃ…?


「オムライス食べるのじゃ!」


「4人ともオムライスでお願いします」


「わかったのじゃ、少し待つのじゃ」


なんか変わったおばあちゃんだな


おじいちゃんはおばあちゃんから注文を聞くと無言で力強くうなずいた。


しばらくすると、4人分が一気に届いた。


「ゆっくり食べるのじゃ」


「「「いただきます!!」」」


うま!どーやったらこのトロトロ感出せるんだ?しかも中のご飯にもよく合う。

卵はボリュームもあって、卵を食べてる感があって、それでいてふわふわトロトロ何これ!?


しかも、全部冷めてない!

4人分同時に作ったとでも言うのか!?


弟子入りしよーかな?


「あーうますぎ」


「ここ選んだ優天才!」


「ん。間違えない」


すぐに食べ切ってしまった。


「はい、これおまけなのじゃ」


おばあちゃんが人数分のアイスをくれた。


「やったー!」


「ありがと」


アイスは口の中でさっぱりして、さっきまでの濃厚なケチャップライスが流される。


みんながデザートを食べてる間

俺はオムライスの極意を聞きにいく


「どうやって作るか教えてください!」


「ん、んーん。んんん」


フライパンをかちゃかちゃしながらこっちに見せてくる。

えっと。教えてくれてるのか?


とりあえずそれを見る。


「ん。んん。んんん」


いや、全然説明は分からねぇ


「じいじの技を盗むのは難しいのじゃ」


「そ、そーですね」


なんでかって、何言ってるかわかんないもん。


とにかく見る。自分のやり方と何が違うのか


「な、なんとなくわかったかも知れない」


あとは、家でやってみるしかないか


「んー」「頑張ってみるのじゃ」


「はい!」


お会計を済ませてお店を出る。


「「「ごちそうさまでしたー!」」」


「ん〜」「また来るのじゃー」


本当にいいお店だったな


「次どこだっけ?」


「北野天満宮」


「頭よくしに行こう!」


電車に乗って向かう。


「ここだね」


「牛いる」


牛の像を撫でると、その部位が良くなる?らしい


「めっちゃ撫でとこ」


「ん」


それ、撫でると言うか擦ってるよね。


「ふー疲れた」


あほくさ


参拝をする。


「意外とすることないね」


「…そーだな」


お参りして、あと何しよっか


「次…いくか」


「ん」


「いこー!」


北野天満宮を見終わった俺らは最後の目的地嵐山渡月橋へと向かう。


「んー!ついたー!」


駅から降りると目の前には紅葉で赤く染まった嵐山があった。


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