第39話 本音

あれから数日がたった今もなおさやとうまく向き合えないでいる。

今も、さやは坂本と楽しそうに話してる。

それを見ていてもどうもできない。


昼休み俺は逃げるように教室から出て屋上へと向かう。


「まてって」


後ろから優がついてきていた。


「あれからどーなの?成瀬と」


「特に何も」


実際うちでご飯を食べるときに少し話すくらいで前とは距離感が全く変わってしまった。



「それでいーのかよ。前まであんなに仲良かったのに」


「いいんだよ。さやも楽しそうにしてるしそれなら俺は「はぁ?」


急に優の声が低くなり睨んでくる。


「なんだよ」


「それまじで言ってんのか?」


「まじですけど何か?」


目も合わせずに答える。


無言で優に胸ぐら掴まれる。


「ッ!何すんだよ」


優の手を無理やり払う。


「本気で今の成瀬が楽しそうに見えてんのか?目ん玉腐ってんのか?」


「楽しそうだろ、だからいいんだよ。どーせ俺はさやがいなかった頃の生活に戻るだけだし」


お腹を蹴られる。


グハ


「おい。お前は現実から目を背けてるだけなんだよ。わかってんだろ」


ッ!


「でも「でもじゃねーんだよ。逃げんな」


逃げない…か…


「失敗したらどーすれば…」


「別に失敗してもいいだろ。少なくとも今よりはマシになる」

(まぁ失敗するとは思わないけどな)


「そっか、そーだよな。ありがと」


「いいんだよ。こっちこそ悪いな手荒くて」


「それに関してはまじでふざけんな。めっちゃ痛い」


まじでお腹痛い


「あはは。悪い悪い」


それでも吹っ切れたせいか前よりずっと体が軽い。


ーsideー


[花音の家帰ってから帰る]


さやは、周にメッセージを送る。


「それで?相談したいってどしたの?」


「ん」


今日は花音に相談したいことがあってこうして花音の家まで来た。


「うーん。周と前みたいに仲良くできない。ねぇ」


花音も気がついていた。周とさやの間に大きな溝ができてしまっていることに。


「もう耐えられない。寂しい」


さやの目からは大粒の涙がこぼれ落ちた。


「厳しい言い方だけど。今回のはさやちゃんが悪いと思うよ?坂本の件で」


「ん。わかってる」


勢いに流されたまま、なかなか言い出せずにこうして関係が長引いてしまっていた。


「まずは、それを坂本に伝えなよ」


「さっきいった」


「そっか、じゃあこれからどうするかだね。周のこと好きなんだよね?」


花音は真面目な顔でさやに聞いた。


「ん。好き。大好き。だからもっと一緒に居たい。誰にもあげたくない」


さやの気持ちが爆発したことに花音は驚いた。


「そっか、そうだよね」


きっとこの前の女子たちと話した周の話が煽ってしまったんだろう。


ピロン


さやと花音のスマホに通知が来る。


[今日、家で話したいことがある]


さやには周から花音には優から


[周がやっと腹括ったよ]


「ちょうどいいじゃん。自分の思ってることお互いしっかり話し合ってみなよ」


花音はしっかりとさやを抱きしめる


「ん」


「がんばってね」


「ん…」


ーsideさやー


周の家へと向かう。


ドキドキしながらドアを開けて周の家に入る。


「おかえり」


「ただいま」


靴を脱いでリビングへと向かう。


「周」「さや」


声が被った


「えっと。先いいよ」


久しぶりに笑ってる周を見てこっちも口角が上がる。


「ん、周。私周のこと好き。大好きだから「ごめん。ちょ…



断られた、今ごめんって。あぁもう何も聞こえてこない

そーだよね。私が勝手にいけると思っただけ…


ドアの方へと向かって歩き出すと周に止められた。なんで…


ーside周ー


「私周のことが好き。大好き」


想定外だった。まさかさやに告白されるなんて思わなかった。


「ごめん。ちょっと待って」


一旦、頭の中整理させて?


一回止めてしまった。


さやは、ショックを受けた顔で帰ろうとする。


「待って。ちょっと待って」


やっとさやの目に光が戻ってきた。


「な、何?」


不安そうな顔でこっちを見てくる。

つい、さやを抱きしめてしまう。



「っえ?」


「俺もさやのこと好きだから。だから俺と一緒に居てくれ。頼む」


「ん。いる。ずっと一緒に居たい」


さやは、すぐに返事をしてくれた。



しばらくして頭冷めてきた。


「えっと本当に俺でいいのか?」


「ん?いい」


今は、前と同じように俺の足の間に座って俺にもたれかかってきている。


「ほら、坂本からアタックされてたじゃん。あいつイケメンだし」


さやは、不思議そうな顔をしながら答えた。


「大丈夫。前から周のこと好きだったから」


まじか、あんなに渋ってたのがバカバカしいな


「俺は、夏休みの頃から好きだったけどな」


「一学期から好きだった」


この子対抗してきた。


「まあ、本当は一目見た時に惚れてたけどな」


「むー」


まあ、さやは有名だけど俺のことは屋上で会うまで名前以外知らなかっただろうしね。


「明日はどーすんの?まだ坂本と行くのか?」


「んーん。断った」


なるほど


「じゃあ、一緒に行こっか」


「ん。行く」


てか、付き合ったけど行く時ちゃんとしたほうがいいかな?


「メガネ外したほうがいいかな」


「ダメ。それはダメ」


なんかめっちゃstopかけられてんだけど。


「な、なんで?」


そんなに変だった?


「バレる」


ん?何が?


「周がかっこいいのがバレる」


なんだそれ


「別にさやと付き合ってるから関係なくない?」


「むー今も危ないから」


どゆことだよ。


「まあ、ダメって言うならやめるけどさ」


さやが花音にビデオ通話をかける。


「もしもしー?」


「おーさやちゃん。どーだった?って見た感じ成功っぽいね」


「ん」


スマホに移る花音の隣にはゲームをしてる優がいた。


「お前ら学校ではどーすんだ?公表すんの?」


「あーそれどーすんの?」


「んーどしよ」


俺の方を見てくる。


なんも考えてねぇ


「周は、メガネ開放?」


「それはさやに待ったかけられてから予定はないよ」


「えーもったいなー。今のままだと男子たちに殺されるよ?」


何それ怖い


「まじ?」


「「まじまじ」」


優まで…


どしよ


「そーだ。文化祭のミスコン。ミスターコンあるからそれでなよ」


えぇ


「それは、ちょっと」


「それで優勝すれば誰も文句言えないって」


優勝できなかった時どーすればいいのよ


「まあ、考えておきなよ。面白いと思うよ」


おもしろければいいわけじゃないんだよな


「考えとくよ」


その後、4人で少し話してから通話を切った。


「夕飯どーする?食べ行く?」


「んーん。周の食べたい」


そう言ってもらえるとやる気が沸いて出てきます。


「はいよ。リクエストは?」


「レバニラ食べたい」


ある意味思い出の味だな。さやがうちに来て初めて食べたやつ


「りょーかい」



「「いただきます」」


普通にうまい。


「ん。美味しい」


「だな」


「あーん」


さやがこっちに口を開けてくる


「まだあるじゃん」


「いいから」


「へいへい」


あーん


「ん。ありがと」


少し照れくさそうに顔を赤くしている。


「周もあげる」


俺の方にもあーんしてくる


あむ


「ありがと」


確かに少し恥ずかしいかもしれない


ピンポーン


レバニラを食べ終わった頃チャイムがなった。


誰だろ?


宅配便?なんか頼んだかな?


送り主は雫さんからだった。

ちょうど、スマホの通知がなった。


[おめでと!ケーキは私からのプレゼント!]


どうやらケーキらしい


感謝のメッセージを送っておく


中には、ショートケーキとチョコレートケーキの二つが入っていた。


なんか、すんごく高そうです。


「ケーキ?」


「そ、雫さんからだって」


花音からでも聞いたんだろうな。


ピロン


またもスマホがなった。


[初夜だからってハメを外しすぎないように!]


うるっさい!でも、もしかしたら…いや、ない!。俺は何を考えてるんだ?


さやの方を見るとどっちのケーキを食べるか吟味していた。


うん。ないな。まあ求めてるわけでもないし


「チョコレートケーキにする!」


「ショートケーキも少しあげるよ」


「ん。もらう」


お皿にケーキを移して紅茶を入れる。


ショートケーキはスポンジがフワッフワでクリームもしっとり甘い。

うますぎる。いままで食べたケーキで一番うまいかも


さやは、一口食べてはほっぺたが落ちないように押さえている。

かわいい…


「周一口ちょーだい」


さやが口を開けてくる。


「はいよ」


ケーキを一口サイズに切ってフォークにさして

さやの口元に運ぶ


はむ!


「んーおいひい〜」


さやの顔が崩れてる。

やばい。まじでやばい。


「周もはい。あーん」


さやもチョコレートケーキをくれる。


うん。


うまいな。甘すぎずほんのり苦い、でも甘い。ウメェ

甘党には合わないかもしれないが、この絶妙な甘さとほろ苦さが見事にマッチしてて美味しい。


一瞬で食べ終わった。


少し気になってケーキ屋の名前をWebで調べてみる。


これかな?


ケーキの値段を見て口に含んだ紅茶を吹き出しそうになった。


何これ?あの値段で誰が買うんだよ。

確かにめちゃくちゃうまかったよ。いままで食べたケーキで一番くらいには。

それにしても、あの値段は手を出すのは迷う。


「大丈夫?」


「ああ、大丈夫大丈夫」


「ん。家帰る」


あ、もう帰っちゃうのか…


「お、おう」


「ふふ、大丈夫だよ。お風呂入ったらまた来る」


頭をポンポンと叩かれる。


笑われた。そんなにひどい顔してたかな。


「はいよ」


俺もお風呂入っちゃおうかな


さやを玄関まで送ってからお風呂に入る。


えっと何かあるかも知れないから念入りに体洗っとこ。



なんだかんだ期待してるのかもしれない。



お風呂から上がり髪を乾かし終わったとこにさやがきた。


「髪やって」「任せな」


まだ、少し濡れている髪をドライヤーで乾かす。


これやるのも久しぶりだなー


「気持ち〜ぃ」


こちらこそなんだよね


「ありがと」「好きでやってるからいいんだよ」


「今日、一緒に寝ていい?」


固まる。ん?これはそう言うことか?ま、まじ?


「おおおおお、おう。いいぞ」


「周どしたの?おかしい」


「ごめんごめん、なんでもない」


少し気持ちが昂ってしまった。

まだやるときまったわけじゃないからな。うん。


「ベット行こ。眠い」


「ワ、ワカッタ」


「本当に大丈夫?」


「アア、問題ナイ」


緊張で心臓がはちきれそうです。


「電気消す?」


「ん?消さないと寝れない」


そっか、そーだよね


ベットに座り一度深呼吸をして覚悟を決める。


「周」


さやが俺の手を引っ張る。


夜目になれて暗くてもさやの顔が見える。


さやは、俺の唇にそっと唇を押し当ててくる。


初めてのキスは、レモンの味でもなんでもなくただ恥ずかしいだけだった。


「ん。これは恥ずかしい」


さやは、唇にそっと指を当てて顔を赤くしている。


「…だな」


俺もいま顔赤くなってるんだろーな


「でも、いい」


さやが、目を瞑ってこっちを見上げてくる。

えっと、そう言うことだよね。


さやの唇を吸う。


「ん!?」


ちょっとびっくりしてる。

仕返しのようにさやが攻めてきた。


んぱっ


「寝よっか」


「ん。ギューってしてて」


さやに言われた通り、後ろから抱きしめながら眠りにつく。



あれ?そう言えばこれで終わり?あはは



童貞の周は期待してたらしい。

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