第35話 恩返し

朝目が覚めると目に前にさやの顔があった。

寝ている間に向き合う形になっていたらしい。


「あっ」


顔と顔の間に拳一個分しかない、驚いてついつい声が出てしまった。


その声で起こしてしまったのか、さやの目が開く。


少し距離を置く。


「おはよ」


「ん。おはよ」


すでにいい時間。起き上がり朝食を作りにリビングへ向かう。

さやはまた夢の世界に戻った。


朝食を作り終えコーヒーを入れていると、雫さんが入ってきた。

ざ、寝起きって感じで髪も寝癖でボサボサ、メガネをつけている。


「あれ?雫さんっていつもコンタクトなんですか?」


「ふえ?あーこれダテメガネ、オフって感じでよくない?」


たしかに美人の人が家だとメガネなのギャップがあっていいよね。

実際、雫さん似合ってるし。


「コーヒーはブラックでいいですか?」


「うん。ブラックー」


雫さんは基本ブラックの人なのだ。


「さやは?」


目を擦りながらリビングに出てきたさやにも聞く。


「ブラック」


さやは、その日の気分によって砂糖入れたり、ミルク入れたり

結構違う。

たまに甘いコーヒー飲みたくなるのはわかる。


全員分のコーヒーを用意し朝食を用意しおわる。

朝食は、ホットケーキとレタスのサラダ、特に特徴のない朝食を食べる。


食べ終わり、片付け終わると雫さんが立ち上がった。


「よし、私は帰るよー」


なんでも、仕事だとか、がんばです。

身支度をさやの家で整えてから帰っていった。


「周、今日予定ある?」


「んー仕事やろーかなーと」


何個かいい依頼を受けてある。

アプリのお手伝い。

基本を書くとこまでは終わらせたい。


「ん。わかった」


「さやは?」


「なんかしてる」


なんかってなんだよ。別にいいんだけど。


部屋に戻りpcの電源を入れる。

あーこの感じ久しぶりだー

なんかやりたくなくなってきたー!


ーsideさやー


周は今日お仕事するらしいので暇。

周の仕事は、よくわかんない。いっぱい変な文字が並んでる

周を邪魔するのも悪いし家ですることもない。花音のところに遊びにいくことにした。

花音はまだ優のところに住んでるらしい。



ピンポーン。優の家のチャイムを鳴らすと出てきたのは部屋着の花音だった。


「お、さやちゃんきたかー。入って入ってー」


「ん。優は?」


「今は、出かけてていないよー」


優は出かけてるらしい。花音1人家に残したらやばそう。


「それで今日はどうしたの?喧嘩した?」


「周仕事するから暇だった」


邪魔したら悪いもん。


「なるほどねーじゃあ、今日は花音がさやちゃん可愛がってあげるー」


な、なんか怖い。


特にすることもないので映画を見ることになった。

有名なアクション洋画。ポッシブルミッション。


花音の足の間に挟まれて後ろから抱きつかれてる。

うー背中にあたるおっきいおっぱいがうざい


「おっぱいうざい」


「えへへーおっきいだろー」


首に乗せられる。別に私もないわけじゃないもん。まだ発育途中だから…


映画を見ている間。後ろから抱きつかれたり、ほっぺをムニムニされたり、胸を触ってきた手を叩いたり、お腹さわさわされたり、頭に顔擦り付けられたり、髪の匂い嗅がれたり、


やりたい放題された。


「花音、きもい」


「こんなには周にもされないかー」


「ん」


「えへへ、さやちゃんの初めて奪っちゃった」


この人やだ。


ほっぺたにキスされた。


「んな?」


驚いて、花音と距離をとる。

ほっぺたにまだ感触がなんとなく残ってる。


「周にもされたことないでしょ?」


当たり前。


この女油断できない。


「つーかーまーえーたあ!」


捕まった、そのままソファに押し倒された。


映画はbgmのように流れてる。


「か、花音?」


「大丈夫、痛くしないからね」


な、何されるの?


首元に吸いつかれる。

そのまま少し噛まれながら吸われてる。


血吸われるのもこんな感じなのかな。


「あ、ん。や、やめ」


ぷはぁ


「えへへ、さやちゃんにキスマつけちゃったよー」


その後もいろんなところに付けられた。


「そろそろいい加減にして」


「えーダメー?」


「だめ」


お返しに花音にも噛み付いておく。


ガチャ、リビングのドアが開く。


「ただいまー」


優が帰ってきた。


私は花音に押し倒されていて、どちらも服がはだけて下着が見えている。


「あ、えっと、ごめん」


そう言って、ドアをそっと閉めた。


服をちゃんと着直して、花音が優を呼びにいく。


「えっと、さっきはごめん」


「ん、大丈夫。悪いのは花音」


「後で優のこと怒っとくよ」


「なんで!?」


花音と優のイチャコラを見せつけられる。





「周に恩返しがしたい」


花音達に相談してみることにした。


「んー恩返しかーなんだろ?」


「俺的には、成瀬が近くにいるだけであいつは幸せだと思うよ?」


んーそうなのかな。


「よくわかんない」


「それよりも、なんか残るものの方がいいんじゃない?」


「周は重く受け止めがちだから軽くでいんじゃない?ご飯作ってあげるとか、感謝の言葉だけでも十分だと思うよ?」


ご飯なら私もできるかな。


「ん。ご飯作る。一回作ったことある」


「そーなの。何作ったの?」


「ん、だいぶ前。オニギリ作った」


周が仕事してた時に作ったやつ。


「具は何にしたの?」


「いちご」


「「ん??」」


「な、なんでいちご?」


なんか、2人が驚いてる。


「だって、おにぎりの絵の中に赤いのが入ってたんだもん」


あれって、いちごだよね?


「え、えっとご飯作るのはやめた方が…」


「んーん。ご飯作る!」


早めに帰って作り始めないと。


「ご飯作るから帰る。じゃーね」


「う、うん。またね」


花音にお別れのキッスを頬にされる。


「むー」


「えへへ。またやろうね」


絶対やだ。


「え、えっとご飯作るときはレシピをよく見てな」


「ん。頑張る!」


材料を買いにスーパーに寄ってから家に帰る。


何作ろう。あ、カレー作ろ。

『簡単 晩ご飯』でググって一番上に出てきた。カレーを作ることにした。


家に帰り周の部屋を覗くと周は、まだ仕事に集中していた。


「早速作ろう」




-ide 周-


うーん。ツーカーレーター。

久しぶりにキーボード叩いてたら肩痛くなってきた。


「終わった」


やっと終わったよ。あさに初めてからすでに夕方だよ。我ながらすごいな。


「ヤッベ、夕飯作らないと」


昼は花音と食べるって連絡来てたけど、夕飯は家らしい。


リビングに出るとさやがキッチンに立っていた。


「あれ?さや?」


「ん。お疲れ様」


さやは、キッチンでお鍋をぐるぐる混ぜてる。匂い的にカレーかな?


お鍋を覗くとそこには…


普通のカレーだった。この人、前科持ちだからな。

忘れてないぞ。いちごインおにぎり。


「作ってくれたの?」


「ん。恩返し」


こっちが恩返ししたいくらいなんだけどな。


「ありがと」


カレーを盛り付ける。


「「いただきます」」


カレーを一口食べる。


あれ。普通にカレーだ。野菜硬いけど。


「美味しい」


「ん。よかった。でも周のご飯のほうが美味しい」


「経験の差じゃない?十分美味しいよ」


「ん」


中辛の普通に美味しいカレーを食べ終える。


「仕事は、もう終わった?」


「今日中に終わらせたいのは終わったよ」


「明日、クラスの友達と遊ぶ」


もう、夏休みも後半。最後に遊ぼうってやつかな。


「俺は明後日、男子で集まるかな」


その後も、お互いの予定が交互に入り。4日間くらい会わなくなるらしい。

ほとんどがさやの予定なんだけど。

女子に引っ張りだこだそうで。


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