第28話 夏祭り
部屋でゴロゴロしていると。
俺らは母さんに呼ばれる。
すでに日も傾き始めている。
「そろそろ、お祭りいく時間だから浴衣の着付けやってあげようとおもってね」
なるほど。
「周は、おばあちゃんにやってもらって」
「りょーかい」
そう言って、おばあちゃんがいる隣の部屋に向かう。
「さて、さやちゃんもおめかししよーねー」
おばあちゃんの部屋に向かうと浴衣を用意していた。
「はい。できた」
背中をポンポンと叩かれる。
「ありがと」
おばあちゃんがお金を渡してくる。
「これで、さやのこと楽しませてあげなさい」
「こんなに使わないと思うんだけど」
「いいのよ、余ったら。他の時に使ってあげなさい」
おばあちゃん…
「ありがと」
「ちゃんとさやのこと大切にしなさいよ」
随分とさやのことを気に入ってるらしい。
「わかってるよ」
居間で待っていると。さやが出てきた。黒と緑の浴衣で、髪を上げている。
髪には、青い
「…ぁあ」
神々しいとはこう言うことだろうか。
後ろから後光が見える気がする。
「周かっこいい…」
「いえ、そちらこそ」
謎に他人行儀な敬語になってしまった。
くすくすと笑う母さん達。
「さて、いこーか」
少し照れ臭くさやの手を取る。
「ん。いく」
「「行ってきます」」
向かうは、近くの神社。
近くにつれて明るい雰囲気が漂う。
俺、小学生の頃はよくきてたなぁ。
「周は、いつもきてるの?」
「最近は来てないかな。小学校は、こっちだったからその時は結構来てたね」
神社の周りには多くの出店が並んでおり、多くの人で賑わっている。
「すごい」
「だろ?最初どこ行きたい?」
「んーあれやりたい」
射的か、このお祭りはめちゃくちゃ高級な商品はないもののちゃんと当たれば落ちてくれる。
「やってくかい?簡単じゃないぜ?」
射的屋の爺さんにお金を渡す。
「一回お願いするよ」
一通り銃の使い方をさやに伝える。
玉は3発。
狙いは、クマのぬいぐるみらしい。
1、2発めは外れ。3発目はクマの耳をかすめたが倒れなかった。
「むー難しい」
「クマのぬいぐるみが狙いだよな?」
「ん」
せっかくだから俺の実力をお披露目しよう。
「お。彼氏さんやるのかい?クマは一番遠いから難しいぞ?」
「落とすよ」
調子乗ってちょっとかっこつける。
「随分と強気だな彼氏さんよ。そういえば昔同じセリフを吐いたガキがいたな」
はーいそのガキです。
パン
クマのぬいぐるみの脳天にバシっと当たる。
「おいおい。まじかよ」
銃をくるくる回す。いやー久しぶりだね。
調子乗るだけの自信はある。
「あ、お前。高坂の家のお孫さんか!」
「どーもお久しぶりです」
にやっと笑う。
「落としたんだからさっさとどっか行ってくれ、お前相手じゃ赤字だよ」
「んーでもあと2発残ってるし」
「っち、気づかれた」
このおじさん相変わらずひどいな。
「そんなかわいい彼女連れてくるなんて随分と成長したな」
うわ。外れた。
「ヤッベ。あと彼女じゃない」
「動揺を隠せてないぜ?」
うぜえ
ラスト1発
「お前の彼女さんめっちゃかわいいよな」
この人めっちゃ精神攻撃してくる。
「いつ付き合うんだよ?結婚式は呼んでくれ」
あんたの名前も知らねーよ。
「周」
さやが俺の袖を引っ張ってくる。
「どした?」
「がんばって!」
ああ、外す気がしないなー
「えーっと彼女かわいいな!」
この人語彙力ないな。
パン
狙ったものはしっかり落ちた。
「くそーお前。もー来んなよ」
「はーい」
乱獲したらかわいそうだしね。
落としたのは、何気に値段がそこそこしそうな綺麗な簪。
彼岸花が先に突いている。
「それ高かったのに」
店主が愚痴ってる。やっぱこれ高かったんだ。作りしっかりしてるし。
「はい。これ」
さやに渡す。
「いいの?」
「俺は使わないからね。もらってもらわないと困るよ」
「ん。ありがと。挿して」
後ろを向くさやの髪に簪をさす。
「うん、似合ってるね」
さやの白い髪と彼岸花の濃い赤い色が映えていて綺麗。
「ん。ありがと」
また、俺らはお祭りをまわる。
「なんか食べるか?」
「ん。焼きそば食べたい」
いいね。夏祭りで食べる焼きそばってなんか美味しいんだよね。
「おじさん。焼きそば二つ頂戴」
「はいよ」
お金を払って作り立ての焼きそばを受け取る。
「さて、どっかに座って食べようか」
「ん」
神社は、階段の上にある。結構高い位置にあるので人はいない。
階段にタオルをひいて座って、焼きそばを食べる。
さやが、焼きそばに乗っている紅生姜を俺の焼きそばに乗せてくる。
「嫌いなの?」
「ん。いらない」
さやの紅生姜をありがたくいただく。
食べ終わった容器をゴミ箱に捨てる。
「さて、なんか行きたいか、食べたいものある?」
「りんご飴食べたい」
「いいね。いこーか」
夏祭り定番。夏祭りと浴衣とりんご飴と簪この組み合わせ最強じゃない?
「さっきから奢ってもらってるけどいいの?」
心配そうに聞いてくるさや。
「いいよ。おばあちゃんからお小遣いもらってるから」
懐はまだまだあたたかい。
「ありがと」
「りんご飴ひとつ」
さやが頼む。
「べっぴんなお姉さんにはでかいのあげちゃう!」
ここのおじさんもさやには甘い。
りんご飴を持つさやの後ろ姿をスマホで撮る。
おぉ、いい写真がとれた。
「む、写真とったでしょ」
「あれ、ばれた?」
「見して」
写真を見せるとさやに送ることで許してもらうことになった。
SNSにさやがあげたこの写真が少しバズったのはまた別の話。
さやは大きいりんご飴をどう攻略するか困っている。
「食べれない」
「貸してみ」
さやから、りんご飴を受け取り一口かじる。
「はい」
「ん、ありがと。食べやすい」
お互い顔が少し赤くなる。
間接キスなのはわかってるがお互い何も言わない。
「さてとそろそろ花火の時間だから移動しよっか」
「ん」
移動するついでに綿飴を買っていく。
綿飴って利益凄そうだよね。まぁらうまいからいいんだけど。
意外に人の少ない。神社の前にくる。ただ階段登るだけなのに、なぜか、1人もいない。
「誰もいないね」
「そ、そーだな。ここ絶好の場所だと思うんだけどな」
花火が上がる。
「綺麗」
「だな」
その後も神社の階段に座りながら花火を眺める。
田舎の花火だから花火の数は多くはない5分足らずで終わる。
「喉渇いた」
「なんか、飲み物買おうか」
「んーん。いい」
どーゆこと?
「血ぃー」
あ、なるほど
「えっと、外だよ?」
「大丈夫。人いないし」
そーゆー問題?
「むーはーやーくー」
「はいはい。わかったわかった」
「えらい」
頭を撫でられる
はぁ
浴衣を少し緩める
「はい」
「ありがと」
カプッ
チュー
「ん。美味しかった」
「そっすか」
浴衣を直しながらさやの頭をポンポンと叩く
「夏祭り楽しめたか?」
「ん。また来たい」
どうやら十分楽しめたらしい
「今度は優と花音も誘ってみるか?」
「ん。それも楽しそう」
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