第29話 春の無双とさやの嫉妬

お墓参りに行くことになった。


全くと言っていいほど関係のないさやも連れていくことに…


うちのお墓はそこまで遠くない。ここから車で30分くらい。


「車全員乗れんの?」


「紅葉が乗ってきた車の方にも乗れば大丈夫よ」


二つの車に分けて、お墓に向かう。紅葉さんは途中で海斗さんを拾っていくらしい。


紅葉さん達に遅れて俺らも家を出る。


お墓の手前でお花を買ってから向かう。


紅葉さん達は先に着いていた。


「お、周くん。久しぶり」


「海斗さん久しぶりです」


海斗さんがさやの方を見る。


「そっちの子は?」


「成瀬さやです。よろしくお願いします」


さやが、海斗さんに挨拶する。


「彼女さんかー周くんもやるねえー」


「まだ、彼女じゃないです」


否定しておく。


「まだ。ね」


「ッツ」


気を取り直してお墓の手入れをする。


雑草を抜いたり、花を添えたり墓石を拭いたり。


掃除を終わったら、線香に火をつける。


みんな手を合わせる。


「周が彼女を連れてきました。そろそろひ孫の顔が見れそうです」


おばあちゃん?それは色々おかしくない?


しばらくみんなで手を合わせてから、帰る準備をする。


「付き合わせて悪いな」


「大丈夫。その代わり…」


何か、言いたげにしている。


「ん?」


「マンション帰ったらお母さんのお墓参り一緒にいこ」


なるほど。


「そんくらいならいつでも行くよ」


「ん。ありがと」


家に帰る。マンションに帰るのは、まだもう少し先。


今は、2人家でダラダラしている。


ダラダラいいわー。


「周ひまなのー!」「ひま〜」


残念ダラダラは終わりそう。


「俺もひまー」


「お姉ちゃん、ひまなの周が遊んでくれないの」「なのなの〜」


2人は、てきとうに流したせいかさやの方へ行く。

随分と懐いたものだ。


「一緒に頼も」


「わかったの」「わかったー」


「「「周一緒に遊ぼ!」」」わん!


どこからかレオも同じ部屋に入ってきた。


「わーったよ。何する?」


「カルタを持ってきたの!」


カルタか久しぶりだな。まあ、俺は読む側やるけどね。


「わかった。俺がふだ読むから3人は取る人な」


そうだ。


「普通にやるだけじゃ面白くないし、勝った人にはなんかご褒美を与えようか」


「ご褒美?」「なにくれるのー?」


「なんか欲しいものある?」


「んーわかんないの」「むずかし〜」


「あ、周に甘やかしてもらえる券」


ん?それ需要ある?


「それはなになの?」「アマアマ〜?」


「ん。周にナデナデとかギューっていっぱいしてもらえる」


「それがいいの!」「雪も〜」


なんでー?


「そ、そんなんでよければ」


てっきりお菓子とかかと思ってたんだけどな。

ま、いっか。


「春は、カルタサイキョーなの!」「雪もサイキョー」


随分と自信があるらしい。対するさやは、多分カルタとか苦手な人だと思う。


「それでは…」


カルタのふだを読み始めると全て読み切る前に春が取った。


パン!


えぇ。いい音だこと


さやもめっちゃ驚いてる。俺もびっくり。


「春。めっちゃ速いな」


「えへへ。サイキョーだからなの」「むー次は雪が取る」


「わ、私もがんばる」


さやも闘争心に火をつけられたのか気合が入ってる。


どっちもがんばれー



すでに15枚読み終えた。春は8枚雪が6枚さやは1枚。なんという強さ。


さやの表情は少し険しい。


いや、だって酷い時だと最初の2、3文字で取るから春と雪。


カルタだから文字見るけるだけだけどそれでも速い。


「むー取れない」


「がんばれ、あと35枚あるから…」


「ん」


「春も負けないの!」「雪もー」



結果は春の圧勝。

春が30枚。雪が19枚。さやが1枚。


いくらなんでもこれはやばい。


「春。すごいな」


「春はサイキョーなの!」


俺に抱きついてくる。まあ、報酬ですから。


「負けた〜」「むぅー負けた」


あはは、それにしてもさやが一枚しか取れないとは。


「頭撫でて欲しいの」


春のお願いを聞く。


「春ずるい〜」「むーしゅぅー」


2人で上目遣いかよ。


「周、雪とおねーちゃんも撫でてあげて欲しいの」


「いいのか?」


「うん」


2人の頭も撫でる、てか頭撫でられるのそんなにいいのかね。


「あらあら、今日は春が周の上にいるのね」


母さんが部屋に入ってきた。


「春がカルタで勝ったからその報酬」


「なるほど…安心してさやちゃん!周はロリコンじゃないから!多分」


多分ってなんだよ。ロリコンじゃねーよ。


「子供は好きだけど恋愛的な感情は抱かないから」


「ほら。だから安心してね!」


そんなんで安心出来んのか?


「ん。安心」


うん。できたらしい。


「そんなことを言いきたんじゃなくて。夕飯食べるわよ」


どうやら本来の目的は、夕飯に呼びにきたらしい。


「そんじゃ、いこっか」


「周だっこ」


グイグイくるね。


春を抱き上げて、連れて行く。


「あれ、周くん。春がごめんね」


料理を運んでいた紅葉さんが声をかけてくる。


「大丈夫ですよ。ご褒美ですから」


「そーなのね。よかったね。春」


「はいなの!」


嬉しそうに春は返事をした。


ご飯の時は、隣に座り食べさせてあげたり。もう至れり尽くせり状態にしてあげた。


「美味しい?」


「美味しいの!次は、あれ食べたいの」


「はいよ」


ご飯を食べ終えた俺とさやは、部屋へと戻った。


部屋に戻るとさやは俺を背もたれに深めに座ってくる。


「どしたの?」


「別になんでもない」


これは、あれだな。さっき春甘やかしすぎたかな。


「春に嫉妬でもしたか?」


「してない。こうしてたいだけ」


どーだかな。


さやをぎゅーっと抱きしめておく。


「ん。周、血飲む」


「はいよ」


ちょっと甘やかしてもいいっか。


チュー


チュパッ


「ん。美味しい」


「はいよ」


離してくれないので抱き合ってる。


「やっぱ嫉妬してただろ」


なーんか爪立ってるんだもん。


「別に…してない」


はぐらかすか。


「ごめんね」


「別にいい。こうしてくれれば」


あーこの子かわいい。


「はいはい」

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