第26話 実家での夜

「はぁ、疲れた」


さやと言う生贄を残してあの空間から脱してきた。


疲れた俺は縁側に座りぼーっと夜空を眺める。


「周見つけた」


あの空間から同じく逃げ出してきたであろうさやが隣に座った。


「抜け出せたか」


「ん。楽しいけど、周がいないと流石にきつい」


まあ、そりゃそうだわ。


「ここ月綺麗だろ?」


縁側からは月が綺麗に見える。


いわゆる日本庭園みたいなうちの庭と月のマッチがして絵になる。


「ん。綺麗」


2人縁側に座りながら月を眺める。昔の人みたいだね。


大河ドラマとかならお酒もってくる雰囲気。


酒飲みてぇ!


「2人ともここにいたのかい」


邪なこと考えていたらおばあちゃんが廊下を歩いてきた。


「うわ!びっくりしたぁ」


なんでか知らないけど、おばあちゃんは歩いてる音が聞こえない。


まるで忍者。もしくは幽霊?


「さやは吸血鬼よね」


俺らの横に座るとつぶやいた。


「なんで知って、母さんk…「別に美鈴に聞いたんじゃないのよ。昔あった人に似てたのよ」


「吸血鬼の知り合いいるの?」


「そぉよ。小さい頃だけどね。一時期近くに住んでたのよ」


昔を思い出すようにに空を見上げる。


「へえ、その人は?今はどこいんの?」


「死んだ。化物って言われて殺されたわね」


死んだ?


「簡単に吸血鬼死なないはずじゃ」


さやの方を見るとコクコクと頷いた。


「そりゃ、簡単には死ななかったさ。ひどかったね」


吸血鬼を殺す。普通の人間のように簡単には死なない。いったい何をしたのか、考えたくもなかった。


「それで、さやは吸血鬼なのでしょう」


「ん、そです」


「やっぱそうなのね。今の生活は楽しい?」


少し悲しそうに聞く。


おばあちゃんの目にはうっすら涙がたまっていた。


「ん。楽しいです」


「そう、よかったわ」


おばあちゃんは、安心したように息をつく。


「私たちはあなたの味方。決してあなたを見捨てない。もし何か困ったらなんでもいいなさい」


そう言うおばあちゃんには何やら覇気のようなものを感じた。


「周もちゃんとさやのこと守ってあげなさいよ」


「お、おう」


「あんまり、2人の時間を邪魔しちゃ悪いわね」


そう言い残すと、歩いてどこかへ行ってしまった。


なんとも言えない重たい空気になってしまった。


「あーっと。まぁ、おばあちゃんが言ってた通り。なんか困ったことあったら言えよ?」


「ん。わかってる。おばあちゃんいい人」


その後も、縁側でさやとお喋りしながら時間を潰した。



「2人ともお風呂入っちゃなさいよー」


「なんで2人で入るんだよ」


何を言ってるんだ?


「あら、周。私は一緒になんて言ってないわよ」


ニヤニヤしながらこっちを見てくる。


あはー余計なこと言った。


「まあ、一緒に入りたいならご自由に〜」


「周一緒に入る?」


さやはバスタオルをもって迫ってくる。


「入らないよ」


入るわけないでしょ?


「先入っていいよ。説明するからさ」


「ん」


さやを連れてお風呂へと向かう。


「ここ、なんでも自由に使っていいから、温度調整はここでやって」


「大きい」


前に行った雫さんの家のお風呂ほどは、広くないがそこそこでかい。

雫さんの別荘のお風呂は大理石だったが、うちのは木でできている。そのくせ温度調整の機能もちゃんとついてる。


浴槽からは、外を眺められるように二階に作られている。外からは見えないようになっている。


「一緒に入らない?」


「え…入らないよ?そりゃそうだろ」


「一緒に入ろ」


「入りませんよ」


「ムーケチィ」


はい?


「ごゆっくりどーぞー」


あまり長居すると負ける気がするので早めに離れることに。


さやを残して、脱衣所から出る。


と母さんが待っていた。


「仕方ないわね。水着ならあるわよ〜」


「入らないっての」


本当お節介。


お風呂からさやが上がってくるまではレオといちゃつく。


「あ、明日にでもレオをお風呂に入れてあげてくれない?外でもいいから」


「はーいよ了解」


レオをのお腹を撫でると嬉しそうに鳴く。


くぅ〜ん


うーかわいい。この子欲しい


その後もレオと戯れているとさやが上がってきた。寝巻きはうちにあった浴衣。着付け方はお母さんに教えてもらったらしい。


くそ似合ってるな。おい。


「髪やって」


いつものようにドライヤーをもってきた。


「へいへい。ここ座って」


俺の前に座らせるとさやの膝の上にレオが座る。さやがレオを撫でている間に髪を乾かす。


誰かに見られてる気がする。


いた。


「だから撮るな」


ふすまを開けると案の定みなさんお揃いで。


「いやー、周がさやちゃんとイチャコラしてるからでしょー」


いいわけをしながらスマホを隠そうとする母。


「なんだか兄弟見たいね」


紅葉さんまで何やってんの。


「おねーちゃん髪サラサラなの」「おねーちゃん髪きれ〜」


襖を開けた時に入っていった2人はさやの髪を触っていた。


「2人とも、もう寝なさーい」


紅葉さんが2人を呼ぶ。


「はーいなの」「ん〜」


目を擦りながら返事をする。


もう目が閉じかけている。


「おねーちゃんも一緒にねよ?」「ねる〜」


「えっと…」


さやは、困ったように紅葉さんの方を見る


「2人が寝るまででも一緒にいてあげてくれないかな」


「ん。わかった。そーする」


「やったのーお姉ちゃんと寝るのー」「寝み〜」


髪を乾かし終わると、さやは2人に連れられていく。


その間に俺もお風呂に入っちゃおーか。




お風呂から上がる、俺も部屋着は浴衣。


部屋に戻るとさやが布団の上に座っていた。


「もう、戻ってたのか」


「2人ともすぐに寝ちゃった」


「そっか」


俺の部屋には布団が二つ隣に並べてある。


「なんで、布団二つあんの?」


「お義母さんが部屋他空いてないって」


そんなわけがない。部屋だけは無駄に余ってる。


「えっと、一緒に寝るのか?」


「違うの?」


まあ、そうですよね。


「布団移動させよっか」


こんな真隣はまずい。


「やだ」


なんだか最近さやがわがままになってきてる気がする。


「いいじゃない、初めてうち来て緊張もあるだろうし一緒に寝てあげなさいよ」


お母さんがどこからか湧いてきた。


それとこれとは話が違う。


「はいこれ。お父さんから」


母さんが何か渡してくる。


避妊具。


父さん…あんたはなんなんだ。


「責任取れるまでは…しっかりね。じゃ、ごゆっくりー」


障子をススススと閉め出て行く。


「…そこで聞き耳立てるのやめてくれない?」


障子に影が写ってる。


「あ、バレた?はいはいごめんなさい。帰りまーす」


「はぁ。いちよう聞くけど、一緒でいい?」


「ん、大丈夫」


まぁいいか…


「さっき、何もらったの?」


「うぇ??え、えっとなんのことかな?」


箱を後ろに隠す。


「さっきから、お義母さんからなんか渡されてたの見た」


なんで見られちゃったかなー。


「見せて?」


致し方なく。見せる。


「何これ…ゴム?ッツ!」


言ってからこれが何か気づいたらしく、赤くなっている。


「これは没収します」


なんか、没収された。使わないからいいけど。


「いいの?」


「え、使わないからいいけど?」


「使わないでやるの?」


箱で口元を隠しながらさやが言う。


「ッツ!っんなわけないだろ。そもそもやらないから!」


やばい顔が熱くなる。


「あ、ん。なんでもない」


さやも顔を赤く染める。


しばらく無言の時間がすぎた。


「えっともう寝る?」


お互い自分の布団の上に座る。


「まだ、眠くない」


そういうと俺の前に座る。


「どしたの?」


「だめ?」


背中を俺に預け後頭部をグリグリ押しつけてくる。


「別にいいけど」


さやのお腹の前で手を組み、さやを引き寄せる


「何か今日周甘えてくる」


あれ。そうかな。あんま自覚ないんだけど。


「そう?」


「ん」


しばらくくっついたままじーっとしてると。前から寝息が聞こえる。


あれ?


「さやー?」


返事がない。ただのしかばねのようだ。


寝ているみたい。


寝ているさやを持ち上げて。布団へと運んでいく。


「ふぁーあ」


俺も寝るか。


電気を消して布団に入る。


おやすみ

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