第22話 最終日

朝起きるとさやはすぐそばで寝ていた。

こいつの寝顔まじかわいいな。


ほっぺたを突くと絶妙な弾力で押し返してくる。


「んーん」


さやは俺の指を捕まえるとパクッと食べた。


えぇー?食べられた。


特に血を吸うわけでもなく、吸われてる。


何も出ないよ?


少しの間俺の指を吸ってるとさやの目がわずかに開いた。


「起きた?」


「ん。おはよ」


言ったと同時に指が口から離れる。


「俺の指の味はどーだった?」


「無味」


だろうね。


「そろそろ、下降りようか。みんな起きてるだろうし」


スマホで時間を確認し、目をこする。


「ん。そーする」


ベットから起きて、リビングに向かう。


「お!お二人さん起きてきたかー!」


雫さんは、エプロン姿で朝食の用意をしていた。


「おはようございます」


「おはよ」


リビングのソファでは、優の膝に花音が対面に座りイチャイチャしている。


「あ、周とさやちゃんおはよー」


優に抱き着きながら手をヒラヒラと降ってくる花音。


「お!おはー」


その言葉で気付いた優も首をねじってこっちを向いた。


態勢つらそうだな。にしてもいい笑顔だな


「はい、みんなー準備できたよー」


エプロンしてる割に簡単な朝食。コーンフレークと各種果物。


なんで、雫さんエプロンしてんだろ。


「「「「「いただきまーーす」」」」」


久しぶりにコーンフレーク食べたな。


何これ、うまい。


朝食の後は荷物をまとめる。


「この後どーする?新幹線までまだ時間あるけど」


「花音。成瀬どっか行きたいとこある?」


優が2人に聞く。


「花音に任せる」


さやはどこでもいいらしい。


「んー。あ!水族館行こーよ。この近くに有名なのなかったっけ」


花音の指がスマホ上で高速に動く。


「お、それいいな」


優は花音の意見にはいつも賛成だからどーでもいい。


「いいね。下田水族館いこー」


どこからか出てきた雫さんも乗り気なご様子。


「さやもそれでいい?」


「ん」


帰り道ついでに水族館に寄っていくことになった。


荷物は先に郵送で。雫さんにはツテがあるらしい。

底が知れない。


忘れ物チェックをして家を出る。


「みんな、忘れ物はないねー?」


「「「「はーい」」」」


電車に乗ってる間どう回るか、どれが見たい。などの話をして盛り上がった。


「私、水族館初めて」


さやの発言にみんなびっくりしている。まあ、確かに高校生なら1回は行った事ありそうだよね。


「成瀬まじ?」


「まじまじ」


「あー私も水族館は連れてってなかったなー。動物園は行ったよねー覚えてる?」


雫さんが、語り出す。


「ん。覚えてる」


ふと、思い出しあることを雫さんに聞く。


「雫さん」


「ん?何かな?」


「さやって、俺と会うまでご飯食べてなかったんですけど一緒に住んでた時ご飯食べてなかったんですか?」


「え、さやちゃんってご飯食べてなかったの?」


てっきり血だけでいい派の人なのかと思ったら違った。


「ん、必要ないから」


「ちょっと、さや。私ちゃんと食べろって言ったよね?」


なんなら初耳だったらしい。


「必要ないし、作れない」


「どんくらいの間食べてなかったの?」


雫さんの尋問が始まった。


「一年間くらい?」


「はあ!?よく生きてたわね。で、今は?」


さすがの雫さんもご立腹。


「周が作ってくれてる食べてる」


正直なことで、1年もなんも食べずにあの体型保てる吸血鬼すごいな。


「送られてきた。血飲んでたからそれ飲んでた」


「ああ、なるほどね」


いわく、吸血鬼が人を襲わないように政府が血を売ってるらしい。

それを買って飲んでたらしい


「あそこの血まずくない?生気が感じられないのよね」


「ん。周の方が美味しい」


「そりゃ、周くんは格別だよー」


俺たち人間3人組はその会話にはついていけなかった。


その後もご飯の話をしながら暇を潰していると、水族館についた。


「おーリア充がいっぱいだねー」


「うわ、まじで多いな。帰りたくなってきた」


リア充がほざいております。


チケットを買って入る。水族館の中は薄暗い。


「ざ、デートスポットて感じだな」


「おー魚が泳いでる」


それが、水族館です。


小さい魚から、大きい魚までいっぱいいる。


「この魚かわいい」


「これもかわいいよー」


花音とさやはいろんな魚を見ながらはしゃいでいる。


「なんか、子供できたらこんな感じかな?」


「かもな」


優のいう通りデートというより子供の面倒見てるみたいな感じだ。


「イルカショーの時間そろそろだからいこ!」


「いく!」


さやが俺の手を引っ張る。


「わかったって、引っ張るなよ」


「はやくはやく」


珍しく、テンション高いな。


イルカショーの場所へと移動し、時間を待つ。


「さやちゃん楽しみだね!」


なんか、花音もさっきから幼児化してる気がする。


席はさやと花音を真ん中にそれを優と俺が挟むように座り、俺の隣に雫さんがいる。


「水族館って、すごいねー数十年も来てなかったからなー」


さすが雫さん一桁違う。


イルカショーが始まると、花音とさやはいっそうテンションが上がった。


イルカが飛んだりすると、さやと花音から感嘆の声が聞こえてくる。


「イルカすごい」


「そーだな」


さやの感想が幼稚園児並みなのは置いておいて、次に行く。


巨大水槽。いわゆるいろんな種類の魚が一つの大きな水槽にいる。めっちゃでかいやつ。


「すごい…」


「キレイだな」


「ん。キレイ」


しばらく、大水槽を見てから離れる。


「満足できたか?」


「ん。満足」


他の3人は先にお土産売り場に移動していた。


「やっと来たか」


「さやちゃんおそーい」


魚のぬいぐるみを抱えた花音。


「どうせ周くんとイチャコラしてたんでしょ?」


雫さんもニヤニヤしながら言ってくる。


「してません」


「まあ、いいや。お土産見よー!」


花音がさやの手を引いていく。


「ん」


俺たちは4人でお店の中を見回り各自欲しいものをとる。


俺は、家族用にお菓子を一箱いや、二箱。

花音は自分用にお菓子、さやとペアになってるキーホルダー。

優は家族用にお菓子を買っていくらしい。

さやはというと花音とペアのキーホルダーそれと、イルカのぬいぐるみ。


「本当にそれ買うの?」


「ん。買う」


可愛らしい、イルカのぬいぐるみ。大きさは結構デカくて、さやの半分…いや2/3の大きさがある。抱き枕にもなるらしい。


「私も欲しいけどお金がなー」


確かに、このぬいぐるみ大きいからかそこそこ値段がする。


「手触りは最高だよな。これ」


優が商品のイルカを撫でている。触ってみると確かに気持ちい。

欲しいかも…まあ、買わないけど。


会計に並ぶと後ろにきたのは雫さんだった。雫さんもさやと同じイルカのぬいぐるみを持っている。


「雫さんもこれ買うんですか?」


「いやー!一目惚れしちゃってね!」


他にも、お菓子を複数個買うらしい。


爆買いしてる中国人みたい。


この人お金遣い荒いなー。



「うー花音お腹すいたよー」


スマホの時間をみるとすでに3時を回っていた。


「うわ、もう3時だわ」


「まじか、よく今まで耐えれたな」


言われてみると確かにおなかすいた。


「ん。お腹すいたー」


「じゃあ!食べにいこー!」


きたのは、海鮮丼屋さん。


さっきまで魚見てたんだよなー。


どうやら俺以外の人たちはあんま気にしてないらしい。


5人分の海鮮丼を頼み席につく。


無言で海鮮丼を待つ俺たちからは謎の圧が出ていた。

多分。アドレナリン出ててお腹すいてんの忘れてたんだと思う。


腹へった…


「お、お待たせしましたー海鮮丼でーす」


俺らの威圧に怯みながら海鮮丼を運んでくる。


「「「「き、きたー」」」」」


さっきまで威圧感のあった空間が一気にゆるなった。


海鮮丼には、いろんな魚がのっている。うわ、何これうまい。


みんな、無言で海鮮丼を食べる。静かなお店の中に一切の人の声は聞こえず。

ただ、お皿の洗う音と箸でご飯を食べる音だけが聞こえる。


「「「「「ご馳走様」」」」」


一瞬で食べ終わった。


「めっちゃうまいな」


「それな」


なかなか、ボリューミーでお腹は膨れた。


少し休んでからお会計をする。海鮮丼は一つ2,300円。そこそこな値段をしているが

その分、美味しかったからね。


「さて、帰ろっか」


すでに、太陽は傾き始めている。


新幹線に乗るとすっかり疲れた俺らは、すぐに眠ってしまった。


俺らは、雫さんに起こされ起きるとすでにあと少しで東京駅だった。


隣に座るさやを起こして、降りる準備をする。


雫さんとは、東京駅で別れる。


「雫さん。今回はありがとうございました。何かれら何まで」


「「「ありがとうございました!」」」


遠足かな?


「いーのいーの。私も楽しかったからね。またいこーね!」


「「「「はい!」」」」


「じゃーね」


手を振ってくる雫さんに振り返す。


「あ、また周くんの家行くからー」


雫さんはそのまま歩いていくのかと思ったら振り返った。


「あ、はーい」


俺ら4人は最寄りへの電車に乗る。


最寄りについた俺たちは電車を降りる。


家の方向が違う花音と優と別れる。


「じゃーな」


「ん。じゃーな」


さやも同じように二人に言う。


「おう、また遊ぼーな」


「うん。さやちゃんまた一緒にお出かけしようね!」


手を振って別れる。


「さて、家帰ろーか」


「ん」



こうして、俺らの夏休みお出かけ計画は終了した。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る